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110.可愛いは正義!

◇◇◇◇


……いや、マジでこのカオス、なんなんだよ。

カインは鬱帝を発揮しまくって、落とし穴の中をキノコで埋め尽くしているし。

そんなカインをすっかり忘れた様子でリーンはプリンに夢中。

お嬢はとろけるような満面の笑みでリーンにプリンを食べさせてる。

お犬様は次男とガチでバトり中。

え、こんなカオス、どうやって収めるの?

俺様には絶対無理っすよ?


「マーマ。しーたんはー?」


プリンを食べきってご満悦の顔になって自分の周りを見回すリーン。

お犬様は本気だから、リーンの目じゃ早すぎて追いつけてない様子だ。

そんなリーンの口元をハンカチで拭きながら、お嬢はにっこりと笑みを浮かべた。


「伯父ちゃんと遊んでいるよー」

「リーンもあしょぶの!」

「遊びたいの?よし、遊ぼうか!」


リーンのご要望に、あっさり頷くお嬢だが……いやいや、あんな中に入っていったら即死ぬって!

俺様でもきっと命をかけなきゃいけないであろう戦いの中にただの人間であるリーンが入ったりしたら、確実に命を落とすって!

人間の一生はただでさえ短いのに、さらに縮めてどうする、お嬢!


「リーンはお犬様たちのマネしちゃダメだからな!」

「う?リーン……あしょぶの、ダメ?」

「ぐっ……」


小首を傾げて上目遣いで見てくるリーン。

マネしたら死ぬからダメって言ったのに、すでにリーンは涙目だ……。

破壊力抜群過ぎだろ、この可愛さは!!

いやいや、その可愛さで負けたらリーンが死ぬ。

こんなに幼い魂を冥界に連れて行くなんて、俺様嫌だぞ!

俺様、可愛さになんか負けない!


……と思っている俺様の隣で、あっさり可愛さに陥落したお嬢がいらっしゃいました。


「しぃちゃーん!!お兄ちゃーん!!リーンが遊んでほしいってー!」


お嬢ぉおお!?

あちらの状況はちゃんと理解できていますかぁああ!?

めっさ死闘を繰り広げていますよねぇええ!!?

そんな中にリーンを放り込もうなんて、なんて鬼畜な考えをもっているんだ!!

やっぱりお嬢は色んな意味で恐ろしい子……!!


「がうっ!!」

「いいよ」


……リーンの可愛さは、俺様が考えている以上に色んな意味で最強だったらしい。

お犬様と次男が、あっさり帰ってきた。

それも、さっきまで死闘していたとは思えない程嬉しそうに尻尾をブンブン振り回しながら小型犬サイズに戻ったお犬様と、そのお犬様を腕に抱いて穏やかな表情を浮かべた次男が!!

はえーよっ!?

さっきまで殺し合いしてたの誰だよってくらいの速さだぞ!?

可愛さってどんだけすげーの!?

お犬様は次男の頭の上に乗って、リーンは次男に高い高いされながらキャッキャッと喜んでいる状態だぞ!?

30秒前までお前ら死闘してたんじゃねぇの!?

いっくらお犬様はリーンと仲良しで、次男は子ども好きだからって早すぎじゃねっ!?


「リーン、よかったね~」

「あいっ!パーパもあしょぼっ!!」

「だってー。カインー!リーンがパパに遊んでもらいたいってー!!」

「よし!!」

「お前もかっ!?」


お前もはえーよ!!

つーか、お前が一番速いよ!!

あのキノコづくしの穴の中から出てきて爽やかな笑みでリーンを抱っこするのとかすげーよ!!

それをジャスト1秒でやるとか、すご過ぎだよ!!

つーか、親馬鹿が多すぎだろ、この世界!!

やっぱ親馬鹿神が作った世界の住人は、親馬鹿が多いのか!?

絶対にそうに違いない!!






リーンの気が済むまで遊んだ数時間後。


「よし、そろそろ次行こう」


はい、飽きっぽいお嬢がきました。

ちなみに、リーンは遊び疲れてカインに抱っこされた状態で眠ってる。

寝顔も天使!


「愛良、もう行くの?お兄ちゃん寂しいなぁ」


寝汗をかいているリーンの首元を拭いているお嬢の頭の上に手を置いて切なそうに撫でる次男。

あの天界一腹黒で有名な次男も、お嬢の前だと甘々だな。

気持ち悪ぃ……。


「だめ。早く残りを見つけて帰らないと、宿題がまだ終わってないもん」


切実と訴えるお嬢。

あー……そりゃ、お嬢は突然長男に飛ばされたから、宿題とかも全部置いてきちまってるもんなぁ。

カインみたいに荷物は全部ボックスに入れっぱなしだったら問題ないだろうが、お嬢はボックスに入れっぱなしにするとかせずに、きちんと部屋に置いておく性格だし。

その性格が、今回は仇となったわけだが。

まぁ、なんだかんだで夏休みも残り一月切ってるから、お嬢も焦るんだろうなぁ。


「ああ……宿題を忘れたなら、しょうがないね。まぁ、どうせすぐに会えるからいっか」


宿題の一言で、苦笑を浮かべてあっさり引き下がる次男だが……何やら物騒な台詞が聞こえたぞ?

どうせすぐに会える?

それはカインにも言えたことだったらしい。

冷や汗を浮かべている。


「……嫌な予感が果てしなくするな」

「俺様も」


つーか、すでに予感じゃなくなってる感じだよな。

次男がすぐ会えるって言うのなら、もう決定事項なんだろうな!

こいつ、有言実行だもん!(泣)


「まぁ、そこは気にしなくていいよ。それより愛良。次はフィルス公国の『オーロラ』見に行くんでしょ?」

「うん、そのつもりー」

「じゃあ、オーロラみた後に海に行っておいで。面白いイベントがあるから、参加したらいいよ。景品もすばらしい物だからさ」


いやいや。

次男が喜ぶすばらしい商品って何だよ。

恐怖しか感じないって。


「お兄ちゃん、景品って何ー?」

「ん?神様秘伝のステータスブック」

「よし待て、次男」


俺様の聞き間違いだよな?

神様秘伝のステータスブックって、世界神しか所有できない、本のことだよな?

その世界すべての人間の個人情報から能力まで書かれているという、ステータスブックだよな?

ついでに直接ソレに書き込んじまえば、その通りになっちまう物騒なもんだよな?


「まさか、あんなものを人間界のイベントの景品なんかにするわけないよな?」

「残念。父さんが愛良の様子を盗み見るついでにカイン君を呪おうとした時に、人間界に落としたんだってー。んで、それをそのイベントの主催者が拾ったってわけ。馬鹿だよねー」


何やってんだよ、馬鹿世界神!!!

そんなの人間に拾われる馬鹿がいるか!!


「お父さん、またストーカーしてたんだ。死んじゃえ!」

「というか、俺を呪おうとしたのかよ。マジで消滅しちまえ」

「わうわう!」


いや待て。

そこも気になるのは分かるが、とりあえず世界神しか持てないマル秘ブックを人間が拾っちまったことを気にしようぜ!!

あれがあれば人間の人生を変えることすら可能なんだぜ!?


「あ、ついでに言うとね。愛良とカイン君も、まだ神族見習いだからその中に乗ってるからねー」


うえっ!?

なんだと!?


「だって、あれって直接書き換えることで人生変えてしまえる、ある意味、神特有の設定能力以上のものだぞ!?」


直接目で見て設定を考える設定能力とは別で、あれは適当に書き込んでしまえば何でもありなんだからな!?

そんなのを人間が手に入れたら大変だろ!

……それなのに!


「「……?」」


不思議そうにお互い顔を見合わせて首を傾げるカインとお嬢。

だー!!

この二人は分かってないし!!


「カイン!!つまり、お嬢との契約相手はカインから他の奴に変えることすら簡単にできてしまうんだぞ!?」


契約相手の交換なんて、設定能力じゃ無理な力なんだぞ!

それを簡単にできてしまうブックなんだぞ!

俺様超必死に説明すると、それまで理解できていない様子だったカインの目つきが一気に鋭くなった。


「よし、絶対に優勝する」


切り替えもはぇな!!?

どんだけお嬢が好きなんだよっ!?


「愛良。今すぐにオーロラの所に行って、そのイベントがやっている所に行くぞ」

「……コス王。カインがやけに殺気だってんだけど」


不思議そうに首を傾げているお嬢。

うん……おにーさん切なくなっちゃうから、お願いだから気づいてあげて?

というか……そのステータスブックを見れば、お嬢の激ニブの理由も分かるんじゃね?


「よっしゃ、やる気になってきたー!!カイン、絶対に優勝しろ!!」

「当たり前だ」


カインも本気だす気満々だな!

優勝はもらったぜ!!




愛良「……ねぇ、お兄ちゃん。それってさ、結局優勝したところで、お父さんが回収するんでしょ?」

次男「そうだよ。だけど、直接神様が人間に手を出すわけにもいかないからね。いい駒がいてよかったよ」

愛良「……腹黒」

次男「ありがとう。愛良に褒めてもらえるなんて、お兄ちゃん嬉しいなぁ」

愛良「褒めたつもり、ないんだけどなぁ」

次男「そっか。愛良はそんなに青虫さんと仲良くなりたいんだね?」

愛良「すっごくお兄ちゃんを褒めました!超ダークでカッコいいです!!」

次男「よろしい。じゃあ、愛良。頑張って優勝するんだよ。そうしたら、少しぐらいはステータスブックを弄ってもいいから」

愛良「特に興味ないんだけどなぁ……」

次男「人間が手に入れるとまずいから、優勝だけしてくれたらいいからね」

愛良「はーい」

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