105.放置プレイからの……?
お久しぶりです!
先月からネット環境が整わないまま親元から独立をしたので、思う様に更新ができないです……申し訳ないです!
◇◇◇◇
ここはツヴァイス皇国の人里離れた山の中。
俺たちは皇帝と分かれた後、そのままこの場所に直接空間転移をしたのだ。
そんな中、リーンとシリウスが楽しそうにはしゃいでいた。
「マーマ!!!しゅごーい!!!」
「わ~う~!!」
ぴょんぴょんと音を立てるように飛び跳ねながら手を叩くリーンと、そのリーンの回りを同じように飛び跳ねながらぐるぐる回るシリウス。
確かにすごい。
転移してすぐにグレイプニールで人間と小さなコウモリを縛り上げて、なおかつ傍にあった大木に一瞬で吊り下げるとか、すごいと思う。
……吊り下げられている当事者でさえなければ。
「……は?」
「えーと、お嬢?」
あまりにも早業過ぎて、避けることさえできなかったんだが。
俺とコス王が顔を引きつらせながら吊り下げた本人に目をやれば、ニコニコと笑顔が恐ろしい愛良の姿。
「失礼なことを言っちゃう人はお仕置きするって、言ったでしょ?言ったことは、きちんと実行しないとねー?」
「わ~ふ~」
ちょ、シリウスが楽しそうに気に括り付けられていたグレイプニールに跳びかかるから、そのたびに締まるんだが!?
あの危犬、絶対にワザとだよな!?
そうに決まっている!
「愛良!?悪かったから、とりあえず下ろしてくれ!」
「おじょぉぉおおお!!俺様、悪気はなかったんだってばぁあああ!!!」
なんとかグレイプニールから脱出しようともがく俺の横で、号泣しながら揺れるコス王。
おい、やめろ。
たかがコウモリ一匹とはいえ、そんなに揺らしたら俺まで揺れるだろうが!
「きっこえない~、きっかないよ~、さ~あ、いっくぞ~♪」
歌らしきものを歌っている愛良は、俺たちの抗議等まったく聞くつもりがないようだ。
そんな愛良の足元で、リーンが不思議そうに俺たちを見上げてから愛良のスカートの裾を握った。
「マーマ!パーパ、おりゅしゅばん?」
「そうだよ~」
「おい!?」
今初めてリーンが俺のことをパパって呼んだんだが!?
感動して思わず頭を撫でてやりたいのに、それすらさせてもらえないって鬼畜じゃないか!!?
どこまで酷い性格をしているんだ、お前は!
「私を怒らせるからだもーん。私、しぃちゃんとリーンつれて霊峰ジュレイス山にぱぱっと行ってくるから、それまで反省しててね~。(忘れてなかったら)ちゃんと戻ってくる(と思う)から~」
ぷいっと頬を膨らませて顔を横にやった愛良は、そのまま足元にいたリーンを抱き上げる。
やばい……こいつ、本気でこのまま俺たちを放置する気満々だ!
「ちょいと待ってお嬢!!?」
「今、色々含まれていたよな!?」
今離れたら、絶対にまた探すハメになる!
な の に!!
「じゃあ行ってくるねー」
「パーパ、いっりぇくりゅねー!」
「わうわうわーう!」
元気に手を振って目の前からあっさり消えた超自由人な二人と一匹。
……あいつらを止めれると思った俺が、馬鹿だった……。
とりあえず、グレイプニールをどうにかしないとだよな。
何度かグレイプニールの拘束から逃れようとしたが抜け出せず。
無駄に時間ばかり費やしてしまう。
俺よりも先に脱出を諦めていたコス王が、未だになんとか抜け出そうとしていた俺の方を見ながらため息をついた。
「あの鬼畜長男じゃあるまいし、絶対捕縛の神器から抜け出すことなんて無理だって」
「……そういえば、あの長男はあっさり拘束から抜け出ていたな」
本気であっさりと。
なんでだ?
俺、あの時は色々ショックなことがあり過ぎて、あんまりしっかりと見ていなかったんだよな。
「いや、カイン?あいつらをお手本にしても多分抜け出せないぞ?あいつらの滅茶苦茶さは、誰にも真似できねぇよ。お嬢以外は」
「……愛良があそこまで鬼畜じゃないのが唯一の救いだな」
愛良があの鬼畜太子にそっくりな正確だったら、俺は確実に鬱って自殺しているな。
うん、間違いない。
「いやいや。お前そこまであの長男が嫌なの?」
「嫌だ。奴は恐怖の対象だ」
奴にされそうになったことは、思い出したくもない。
できれば2度と会いたくないと思うほどだ。
「それこそ無理じゃね?お嬢溺愛の兄貴だぜ?嫌でも会うって」
ぐ……。
コス王の正論に、言い返せない。
やっぱり娘至上主義変態神の息子だな。
少しは妹離れをしてもいいんじゃないのか?
「まぁどうしても嫌ってんなら、お嬢に言えばいいぞ」
「は?」
愛良に言ったところで、あの長男が大人しくなるか?
……いや、無理だろ。
愛良だって怒っているのを目にした瞬間、逃げるぐらいなんだぞ。
思わず眉間に皺を寄せてしまった俺に、コス王は唯一自由な片羽をひらひらと振った。
「いや、そうじゃなくてな。お前との契約はいつでも破棄できるってお嬢が言ってたから、あいつらに関わりたくないなら、契約を切ってお嬢に関わらないようにすれば済むだけの話だぞ」
「……は?」
俺が愛良との契約を切る?
……なんだ、それ。
◇◇◇◇
んん?
俺様が親切心で懇切丁寧に教えてやった事実を聞くなり、無表情になって固まったカイン。
カインの奴、お嬢との契約解除なんて考えたことがなかったって顔だな。
そういや、お嬢も別に設定能力でできるとかの説明って、してなさそうだもんな。
めんどくさいとか言って。
「一応お前はただの人間だったんだし、いつでも人間の枠に戻してもいいって言ってたし。まぁその場合、俺様との契約もなかったことになるけどな」
俺様との契約効果は不老不死だし、当然だよな。
あ、でもあの転生者も不老不死だったけど、まだ人間の枠にいたな。
てことは、カインが人外になった影響はやっぱりお嬢との契約効果か。
うん、人間の枠に戻すなら、お嬢との契約破棄は絶対だな。
「………」
お、カインの眉間に皺が寄った。
つか、目つきも変わってんぞ。
冷え冷え~とした感じの目つきだ。
けど、教えるなら全部教えといたほうがカインのためだ。
まぁ、鬼畜長男に会いたくないなら、お嬢との契約を解除した方が断然いいと思うし。
似たようなのが、あと2人いるんだし。
鬼畜長男ほどでないにしても、残り2人の性格もヤバいからな。
「ついでに、お嬢はいつでもお前と契約を解除してもいい的なことを言ってたから、無理だと思ったら早めにお嬢に言えよ」
「……………あ?」
おおっと?
さっきから俯いていたカインさん、めちゃくちゃ声が低くなりました。
ちょいとカイン。
おにーさんビビっちまうから、普通にしてくんないかな。
「愛良が、いつでも俺との契約を解除してもいいって言ったのか?俺には何も言わずに?」
「ま、まあ……世間話の延長みたいな流れで言ってた……かな?」
「………」
ブチッ
……ぶち?
ちょっと恐ろしくて目を逸らしていたけど、妙な音を聞いたと思って視線を戻せば隣で吊り下げられていたはずなのに地面に立っているカインさん。
その周りには、さっきまでカインを縛り上げていたグレイプニールと思われる残骸。
「……へ?カインさん?グレイプニールが千切れましたけど?」
え、これって神ですら動けなくする神器ですよ?
あの三つ子と変態にはきっと効かないだろうけど、お前は元人間の、現ただの人外だぜ?
というか、あの鬼畜長男でさえ抜け出していたんだろ?
それを千切るとかどうなってんの?
え、お嬢の馬鹿力って人に移るもんなの!?
……という意味を込めた目で見ていると。
「………」ギロッ
感情が見えない無表情な目つきで睨まれました。
……すいません。
おにーさん、何も見てません。
……マジで今ビビったんですけど!?
ちびるところだったぞ!?
「………」シュッ
……そして何も言わずに一睨みだけして転移するとか、こえぇよ。
無表情が余計にこえぇよ。
契約だから仕方がないって思っていたのが、実は契約はいつでも解除できるって知った途端、静かに焦んなよ……。
てか、そんなにお嬢と契約解除すんのが嫌なら、はっきりそう言っておけよなぁ……。
寿命が縮むかと思ったじゃねぇか。
いや、まぁ寿命は俺様にはないんだけど気分的に。
……けど、焚き付けるのは成功だよな!
鈍感な主を持つと苦労するぜ!
さっさと自覚しちまえ!
自覚してあの三つ子+変態神に立ち向かえ!
ただし、お嬢に恋愛感情があるのかは甚だ疑問だけどな!
やっべ、これからの展開が超楽しみだ!
とりあえずは、野次馬しに行くぜ!
「……あれ?俺様に巻き付いてるグレイプニール、そのまま?……カイン―――!!!かむばぁああああっく――――!!!置いて行っちゃいやぁあああああ!!!」