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101.理不尽さに心が折れそうです

ども、お久しぶりです!

更新遅くなってしまいました!

さてさて、コス王の行方は結局なんだったんでしょうか?

とりあえず、この世界は男性諸君の哀れさが半端ないそうです。

愛良が泊まった宿屋に来て一言。


「……お前、少しは考えたらどうなんだ?」


まさかの愛良がキャンセルした宿屋の3つ隣だった。

狙われている可能性があったなら、もう少し離れるべきだったんじゃないのか?

まぁ、これだけ近過ぎたら刺客も気づかないかもしれないが。

やっぱり愛良は変だ。


「……何か問題でもおあり?」

「……ありません」


俺の思考を感じ取ったのか、にっこりと笑みを浮かべて見上げてくる愛良。

その視線は、非常に冷やかだ。

ようやく再開したのに、さっそく笑顔で脅されるのって悲しいものがあるな……。

それが愛良なんだが。


「カイン、こっち。まだ寝ているみたいだから静かにね」


宿屋の主人に頭を下げるなり、すぐさま2階への階段を上って行く愛良。

……俺、何で気づかなかった。

愛良が立ち止まった部屋に、これでもかという程の結界が張られまくっている。

これだけ強力な結界が張られまくっていたら、気づけよ俺。

愛良が張っているから普通の人間には分からないにしても、一応仮にも契約しているんだから本気で気づけよ俺!!


「……カインさん。一人で壁に手をついて項垂れている反省ポーズに対して、私はツッコミを入れた方がいい?」

「……いや、いい」

「あ、そう」


生暖かい愛良の視線が痛かった……。

俺、なんでこいつを探そうと思ったんだろうか……。


「ただーいまー……」


小声で言いながら、静かに部屋の扉を開く愛良。

部屋のベッドでは、布団をかぶって寝息を立てている小さな姿が目に入った。

俺と同じ銀髪を持った幼児と、幼児のすぐそばで丸くなっているシリウス。

シリウスは愛良が扉を開けるのと同時に、片耳をぴくりと動かして目を開けた。


「うぅ……」


目を開いたシリウスが、俺を見るなり歯を剥き出しにしたんだが。

俺を見た途端に唸るとか、どんだけこいつは俺を嫌っているんだよ。

静かに睨み合う俺の横をすり抜けて、ベッドの枕元に歩み寄ってシリウスの頭を撫でる愛良。


「しぃちゃん、ただいま。リーンは起きなかった?」

「わう」


尻尾をぶんぶん振って小さくうなずくシリウス。

愛良を見た途端のこの変わりよう……。

もういい。

この危犬の態度には諦めてるから。


「わうわう。わーう」

「んー?咽乾いたのー?」

「わう」


ベッドから飛び降りて愛良の足元にまとわりつくシリウスのすぐ横に水入れを置いてやれば、すぐに呑み始めた。

ごくごくと勢いよく。


……気のせいか?

誰かが溺れているような声が聞こえるんだが……。

しかも、コス王っぽい奴の声が。


「……愛良?」

「なーに?」

「この宿屋の近くで、人が泳げるほどの水場はあるか?」

「ないねー。むしろ防音の結界を張っているから仮にあったとしても外の声は聞こえないよ?」

「だよな?じゃあ、なんで声が聞こえるんだよ……」

「何でだろうねー?しぃちゃん、レモン水飲む?」

「わう」

「あ、レモンそのまま齧っちゃうのね」


レモンを取り出して絞ろうとした愛良の手から、そのままシリウスがレモンに噛み付いた。



『あぎゃぁあああああああああああ!!!!浸みるぅううううううううううう!!!』



尻尾を振ってレモンに齧りついているシリウスの方から、やっぱり聞こえてくる絶叫。

間違いないよな?


「シリウスの腹の中から、コス王の声が聞こえた気がするんだが……」

「コス王、ただいましぃちゃんの胃袋の中で消化中」

「はぁっ!?」

「これでしぃちゃん、コス王の力も手に入れてレベルアップだね!」

「わう!」

「おい待てこら!!そういう問題じゃないだろうがぁああああっ!!」


なんつー物騒なレベルアップの仕方だこら!!

真っ当なレベルアップをしろよ、お前ら!!


そういう意味で怒鳴ってしまった俺。

今この場には、眠っている子どももいたというのに。


「うにゅ……マーマ……?」


しまっ……起こしてしまったか?

寝癖でぼさぼさの髪のまま、小さい手で目をこすっている。

髪が長いから、女の子か?

そんな子どもに向けて、愛良が優しげな笑みを浮かべた。

おい、誰だお前。


「おはよう、リーン」

「おあよー、じゃいましゅ……う?だりぇ?」


寝ぼけながらも手を差し伸べた愛良に抱きついた子どもが、俺を見て首を傾げた。

無垢な目が、俺を見上げている。


「わうわう!わーう!」

「うちゅてーしゃん?」

「………は?」


……今、なんて言った?

俺……この子どもに、何て言われた?

本気で何言われたんだ、俺!!?


「……おい。今、俺は『鬱帝さん』と言われたのか?」


思わず子どもが抱きついたままの愛良の肩に手を置けば、苦笑を浮かべながら乾いた声を上げる愛良。

……こんな無垢な幼い子どもに鬱帝とか言われるって、かなり精神的ダメージに来るんだが。


「あははー……この子、しぃちゃんの言いたいことが分かるみたいなんだよねー」

「てめぇが原因か、この野郎」

「がるるぅ……」


余計なことを無垢な子どもに吹き込みやがって……。

俺に対する嫌がらせか。

その毛皮剥いてマフラーにすんぞ。

そう思いながらクソ危犬の首根っこを掴みあげた……が。


「しーたんいじめる、めーっ!」


子どもが愛良から離れて俺の足をポカポカと効果音がするんじゃないか、という様子で叩いてきた。

別に痛くはないんだが、理不尽さで心が折れそうだ……。


「愛良……」

「はいはい。しぃちゃん、カインに付き合ってあげるのもいいけど、リーンが心配するから遊んでないで降りておいで」

「わう」

「……おい」


この危犬の首根っこを簡単に掴めたのは変だと思っていたが、これがシリウスの遊びなのか?

じゃれていたのか?


「ぐるぅ……」


……いや、完璧に嫌っているな。

愛良の気のせいだ。


「リーン。しぃちゃんは戻ったんだから、いい加減叩くのはやめてあげてね。この人、メンタル弱いんだから」


……どうせ俺は鬱帝さ。

すぐに鬱る弱い奴さ。

むしろ、鬱って何が悪い。


「う?」

「ね?弱いでしょ?弱い人には優しくしてあげようね」

「俺は現在進行形でお前から苛められているんだが?」

「気のせいです」

「でしゅ!マーマ、やしゃしーの!」


こんな小さな子どもにも味方してもらえない俺。

……俺、何でこいつ探しに来たんだっけ?

はい、正解はしぃちゃんの胃袋の中で消化中でしたー!

しぃちゃん、強い神族を食べることで自分の力に取り込んじゃうので、これでさらにレベルアップ!

普通に修行して強くなれよというツッコミ、しぃちゃんは受付しません!


しぃ「わうわうわうー♪(プリン好きだけど、たまにはゲテモノも悪くないのー♪)」


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