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96.皇帝さんはライオンさんでした

空間転移した先は、大量の書類が乱雑に積み重ねられた、いかにも仕事部屋ってな感じのお部屋。

わぁお、壁一面に難しそうな本がぎっしり詰まった本棚がが置かれているし。

ところどころ附箋がしているし、相当読み込んでそうな本がいっぱい。

このお部屋の持ち主、というか皇帝さんは、かなりの勉強熱心な人みたいだね。

そんな人が、本当に邪心の復活に賛同しているのかなぁ……?

……とにかく、このまま不可視遮音の結界の中で様子を見ていたらいいか。



「うにゅ?」

「リーン、一応静かにね」



見たことがないお部屋に、リーンが不思議そうに首を傾げて本棚のところにまでトコトコ歩く。

結界を張っているけど、あんまりウロウロしたら感のいい人なら気づかれそうだから気を付けないといけないから、リーンは抱っこしておこうかな。

さっき歩いたのでだいぶ疲れも出ているだろうし。

大きな本が入っている本棚の下から3段目に手をつきながら立っていたリーンの両脇に手を入れて、強制抱っこ。

しぃちゃんはもとから私の足元でお座り体制で静かにしているから、これで大丈夫かな?

そう思ったのと同時に、静かに開かれた扉。



「……誰かいるのか?」



……あれ?

何か、部屋に入ってきたライオンの鬣っぽい茶髪青目のオジサマが、こっちを見ながら言いましたけど?

さっそく気づかれました!?

私結構結界張るのには自信があったと思うんですが!?

じー、と私たちがいる方に顔を向けるオジサマ。

いやいや、無表情でみられるのって怖い。

ただでさえ怖い顔したオジサマなのに。

しかも、完全にバレてっぽい。

どうしようかなぁ……と悩んでたところで、部屋の外から慌ただしい足音が聞こえてきた。



「陛下、失礼します」

「……入れ」



オジサマは一度だけ私たちがいる方向に視線を向けてから許可を出すと、書類が積み重なっている机の前に座った。

というか、このオジサマが皇帝さんなのね。

存在感というか、威圧感が半端ない。

さっきの豚皇子様と親子ってのが信じられないです。

どうやってライオンから豚が産まれたんですか。

すっごく気になります。

そして部屋の中に入ってきたのは、いかにも小物って感じのおじさん。

というか、豚。

あれ、この人が豚皇子様の父親じゃないのってくらい似てるんですけど。



「陛下。邪神の封印場所なのですが……」



何やら無駄に興奮して汗をかいている豚親父。

何だろう。

さっきの豚皇子様を思い出して、見てるだけで殴りたくなる。

あと、そんだけ汗を垂れ流しているならせめてハンカチを携帯してください。

というか、汗を拭いてください。

はっきり言うと、目の毒です。



「……お前、そんなものをまだ探していたのか」



そしてライオン皇帝さんのドライっぷり。

というか、興味なさそう。

むしろ呆れてる?

……なんか、この国が邪神復活させようとしてるのとか、あまり心配しなくてもよさそうな気がしてきた。



「は?……へ、陛下!邪神を復活させれば、この世界の統一も可能となるのですぞ!?」



皇帝さんのドライっぷりに、豚親父さんが焦った様子で声を大きくするんですが……はっきり言います。

私のお兄ちゃんズがいるから、世界統一とか征服とか絶対無理です。

不可能です。



「それに、魔王に対抗することも可能となります!魔物の動きが活発になってきている今、それに対抗するための力が必要ですぞ!」



魔王は単なるロリコン堕天使だから、魔物の動きとは関係ないです。

それにお金をつぎ込むのは無駄ですよー。



「そうか」



そして皇帝さん、本当に興味がなさそう。

何なんだろうね、この温度差。

見ていて面白いんだけどね?

豚親父さんが、がっくりと項垂れているから。

もう全身で『私、頑張ったんですよ?聞きたくないですか?頑張ったんだから聞いてください』って訴えています。



「はぁ……それで?何か成果があったのか?」



しょうがないから聞いてやる感が半端なくあるけど、一応聞いてあげてる皇帝さんが優しいと思う。



「はい!あります!」



そして豚親父さん!

あんたは犬かって思うぐらいテンションあげないの!

もう豚犬さんに改名したほうがいいよ!



「邪神の封印場所はこの国にはないようです!」



自信たっぷりに胸を張って答える豚犬さん。

……はい?



「……それだけか?」



鋭い眼光で豚犬さんを睨む皇帝さんの言葉に、全力で同意します。

なんでそれだけなのに、豚犬さんは『褒めて褒めてー!』と言わんばかりに目を輝かせてんですか。



「はい!それで、他国への調査をしたいのです!」

「却下だ。以上。下がれ」



皇帝さん、一刀両断。

豚犬の項垂れ方がすごい。

まさかの皇帝さんの前で手まで地面につけるとは予想しなかったです。



「聞こえなかったか?下がれ」



元からなかった興味がマイナスまで行った様子の皇帝さん。

豚犬は項垂れたまま扉から出て行った。

……四つん這いのままで。

マジで豚犬化しちゃってますよー!?

ちゃんと立たないと人間とみれなくなっちゃうから立って!

立つんだ、豚犬!!

というか、こんなのが部下でいいの皇帝さん!!

この国、大丈夫なの!?



「さて……。そこに隠れている奴。今すぐに出てこい」



豚犬がいなくなったのと同時に、机に立てかけていた剣を手に取る皇帝さん。

はい、めっちゃこっちに視線を投げられました。

もう隠れてても意味ないよね。



「どもー!気づかれてると思わなくてちょびっとビビってる愛良ちゃんでっす!!」

「わうわう!わーう!!」



こういう時は、怖い皇帝さんが怒る前に無駄にテンションを上げてさっさと出るに限る!

な・の・に!



「…………」



相も変わらず無表情にこっちに視線を投げる皇帝さん。

こっちが一生懸命テンション上げたのに!

何この人。

マジで怖い。



「……で?」

「はい、もうテンションあげても無駄そうなんで、普通に行きます。この子に見覚えないですか?」



涙目で隠れるようにして私の首にしがみついていたリーンを前に出しながら質問。



「あう……マーマぁ」

「はいはい、怖くない怖くない」



嘘です!

怖くないとか言ったけど、私も怖いです!

皇帝さんの見た目がマジで怖いから、そのビビり具合はママ十分分かるよ、リーン!

力敵には私の方が強くても、存在感がすごいですから!

威圧感がすごい人と同じ空間にいるだけでも息がつまりそうです!

そんな威圧感バリバリの皇帝さんだけども、リーンを見た瞬間、目が一瞬だけ見開かれた。



「……知っている」

「あ、やっぱり?」



私の感は的中ですね!

だけど、すぐに元のドライ無表情に戻っちゃった皇帝さん。

それでもリーンから目は離す様子がない。



「どこで見つけた?」

「盗賊しかいない森の中です」

「……」



あ、ライオン皇帝さんの片眉がピクリって動いた。



「そこで盗賊に捕まって縛り上げられてましたー」

「…………」



おお、今度は両眉動いた!



「ついでに、この子縛った盗賊たちはお仕置き済みでーす」

「よくやった」



わーお。

ライオン皇帝さんが悪魔みたいにニヤリと笑って褒めてくれたよ。

喜んでいいのか怖がったらいいのか微妙……。



「それで、皇帝さんはこの子の知り合いですか?」



最初よりだいぶ皇帝さんの警戒心が解けたから、今度ははっきり答えてくれそうです。

本当にリーンから視線を外さないけど。



「息子……と思われる」



んん?

何で断言しないわけ?

はっきり息子だって言えばいいのに。



「マーマ、ぎゅーしてー」

「ん。ぎゅー」

「きゃー!」



そしてまだ小さくて空気を読めないリーンは、存在感圧倒的な皇帝さんをマル無視状態で私の首にしがみついてきた。

まぁ別にいいんだけどね。

可愛いから。

だけども皇帝さんが無視しているリーンを見て、微妙に暗いオーラを背負ってる気がしないこともない。

さっきからリーンをずっと見ていることといい、この人、親馬鹿スキルを持っている気がします。



「それで?この子を息子って断言しない理由は?」

「……髪の色が、私とも死んだ妻とも似ていないからな。一族の中でも銀髪を持つ者はいない」

「髪の色ねぇ……」



そういやリーンと同じく魔盲だったカインも、ダーク家なのに髪は銀色だよね。

んー……聞いたらいいか。

ホントは電話したくないけど。

めんどくさいことになりそうだけど。

可愛いリーンのためだから、我慢しよう。

スマホを取り出して電話。

もちろん電話の相手は、



『愛良ちゃぁぁぁあああああん!!!!ようやくパパに電話してくれたねっ!!!』



お父さん(変態)です。

ちなみに第一声を聞いた瞬間に電話を切ろうかと思いました。



「お父さん、煩い。普通に話してくれる?じゃなきゃ切るから」

『はい、普通の声で話します』



私の言葉に反応して、即座にテンションを落とすお父さん。

ちっ。

マジで切ろうかと思ったのに。



「質問なんだけどね、魔力が封印された子達が銀髪なのって、封印と関係あるの?」

『うん、あるよー。たくさんある魔力を自分の体の中に閉じ込めちゃうと、髪の毛が銀髪になるように僕が設定してるもん。だって、目印って必要でしょ?魔盲の子たちは、それぞれ役割を持って生まれてくる運命だから』



カインは邪神と戦う運命でしょ?

私と契約した影響でその役目はカインから龍雅に移っちゃったみたいだけど。

リーンも何かあるわけ?

……まぁ、今は深く考えなくていいか。

どうせこの子が大きくなるまで関係ないだろうし。



「じゃあ、銀色に設定した理由は?」

『僕の趣味!愛良ちゃんは黒髪もいいけど、銀髪も似合うね!というか、愛良ちゃんならどんな色でも似あうよ!パパ、嬉しいn……ブチッ』



はい、パパの大暴走が始まったので電話を強制終了しました。

私が今銀髪にしていることを知っているってことは、また人のことを覗いているわけね……。

ミカエルさんにチクってお仕置きしてもらおう。

駄神「ちょ、愛良ちゃんー!?なんで急に電話切っちゃうのー!?パパ、愛良ちゃんともっといっぱいお話したいのに!!」

ミカ「……神様?目の前で積み重なっている仕事を放りだして、いったい何をしていらっしゃるんですか?」

駄神「ひっ!?ミカエルさん!?」

ミカ「お嬢様から神様が仕事をさぼっているからお仕置きお願いしますと言われているので、お仕置きと行きましょうか」

駄神「!?絶対やだ!」

ミカ「自業自得です。では、神様?こちらに神様がお作りになられたお嬢様の成長記録(0歳~1歳)があります」

駄神「ひっ!?それは僕の大事な愛良ちゃんメモリー!?返して!?」

バリンっ!!

ミカ「あ、すみません。落として割ってしまいました」

駄神「ぎゃぁああああっ!!?」

ミカ「掃除をしないといけませんね」ブミブミ

駄神「それ以上踏まないでぇええええっ!!?」

ミカ「ああ、神様は気にせずにお仕事の続きをされたらよいので」

駄神「無理!!仕事なんかやってられないぃいいい!!僕の愛娘の思い出がぁ……」

ミカ「まぁ偽物なんですけどね」

駄神「はあっ!?」

ミカ「本物はこちらです。お仕事をしなければ……」

駄神「やります!お仕事やります!!だから大事に保管しておいて!!」

ミカ「はい、では大事に保管させていただきます」にっこり


……愛良のお願いを聞いたミカエルさんは、精神的お仕置きを行ったとさ。


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