9.文字読めました
◇◇◇◇
カイン払いで大量の買い物を済ませた翌日。
ギルドの隣にあるカインの家……というかギルドマスターの家で部屋を用意してもらったから宿の心配はなくなりました。
今はくぅくぅ寝息をたてながら寝ているしぃちゃんの隣に寝そべりながら、昨日買ってもらった召喚についての本を読んでいます。
文字が読めるか心配していたけど、問題なしでした。
日本語ではないんだけど、書いてあることは読めるし理解できる。
試に日本語で書いたつもりでも、こちらの言葉で書かれているという不思議感には慣れないけど。
とりあえずは、日常生活に不便さは感じられないから上々です。
「おい愛良!」
「ん~?」
軽くノックされた扉に向かって適当に返事をすると、遠慮なく扉を開け放ったのは全帝ことカイン。
今、すっごい音を立てて扉が開きましたけど。
勢い良すぎてそのうち壊れるよ、絶対。
本に集中していたのに、一気に現実に引き戻されちゃったじゃないですか。
「びっくりした……どうしたの?」
「お前のことを純白の奴らが捜しに来た」
何か、だいぶイラついてない?
カルシウムが足りてないね。
今夜のごはんはお魚尽くしにしよう。
というよりも、純白って何だったっけ……。
……ああ、国営のギルドのことか。
「……え。何で私?」
国営のギルド員の人に追いかけられるようなこと、してないですよ?
たぶん。
それに対して、カインはイライラした様子で舌打ちする。
「依頼と言っていた。大方、お前の幼馴染が捜しているんじゃないのか?」
「あ~……あの他力本願ヘタレならあり得るかも。まぁ、知らない人に着いていく気さらさらないから、黙っといてよ。んで?なんでそんなに苛立っているわけ?」
「純白の奴らは気に食わない。いちいち俺のギルドの仲間を馬鹿にするからな」
「ふぅん?」
昨日の話を聞いてたら、どうもエリート気質が多そうですしねー。
からかいがいがありそうだな~。
「ま、お楽しみは後に残しておきますか……。」
「なんか言ったか?」
「いーえ?なーんにも?」
「……嫌な予感がするんだが」
「気のせい気のせい」
「はぁ……もういい。とりあえず、ギルドに行くぞ。学園の編入書類にはお前の魔力値と属性を記入しなきゃならないんだ。魔力計測器はギルドの地下にあるから測定しに行くぞ」
測定?
属性!?
気になる気になる!
カインにもらった魔導書読んだけど、なかなか面白そうだし!
やっぱり魔法とかって一回は使ってみたい!
「測定しに行くしに行く!どんな魔法が使えるか知りたい!」
「属性は知らんが、魔力は俺より少し低いぐらいだろうな。お前と契約するのに、俺の全魔力を持ってかれた。契約は対象者より魔力が強くないとできないからな」
「普通の人ってどのくらい?」
「ギルドメンバーの平均はランクによるが、まあ70万から120万ぐらいか。帝クラスは最低300万は必要になるな」
ほー。
やっぱり帝の人たちって能力的にも他の人より強いんだねー。
「ちなみに、カインはどのくらい?」
「1200万。ちなみに、属性は自然、特殊全部と空間だな」
……んん?
えーと。
たしか魔導書では属性は一人につき1つ、多くても3つって書いてあったような?
「多っ!?」
何その主人公補正。
カインも絶対主人公の位置でしょ。
え、龍雅って必要?
いらないような気がしてきた。
「ちなみに、帝経由で得た情報だと、お前の幼馴染は2000万測れる計測器を振り切ったらしい。ちなみに属性は自然、特殊計全部と破壊、創造らしい」
「え、なにその規定外」
あのヘタレ、どれだけ主人公補正受けたんですか。
ヘタレ屑勇者のくせに。
「さっそくSSランクに飛び級だ。恐らく、すぐに俺と同じZランクに上がってくる。二つ名は検討中らしいぞ」
「二つ名、『ヘタレ屑勇者』でいいじゃん。全帝権限でそれに決定してきてよ」
「俺にそんな権限はない。というか、いくらなんでもそれだと国民が納得しないだろ」
つまり、カインは納得するんですね。
まぁ、昨日さんざん龍雅の愚痴言いましたから納得できるだろうけど。
うん、二つ名がどんなのに決まろうが『ヘタレ屑勇者』を広めてやる。
「……またロクでもないこと考えてる」
「考えてないです。しぃちゃん、起きてー。お出かけするよー」
「くぅん?」
さ、魔力測定魔力測定♪
たーのしーみー♪