挿話 1
暗い部屋の中に障気にも似た、噎せ返るような煙が立ちこめている。
外から来た男は苦い顔をしながら部屋の中心にいる男に近づいた。
「例の物が仕上がったと聞きましたが。」
男の顔は涼しい顔に戻っていた。
白いスーツに身を包み、物腰の柔らかい姿は上流階級の雰囲気を漂わせる。
金髪のロングヘアーをなびかせて、作り笑顔とは思えない表情を振りまく。ほとんどの女性はこの男に惹かれてしまうであろう。内に秘めた野心と狡猾さ、残忍さ等は決して表に出す事はない。
「ああ、これだ。
すでに貴様が用意した被験者に服用させたが、ほぼ完璧と言っていい。後はもう少し中毒性が高ければなおいいが・・・」
部屋の中心にいた男は対照的に暗い雰囲気である。黒いマントのような物を羽織り、怪しげな首飾りを身に付けている。腰も少し曲がり、初老に見える男の目には、憎しみにも見えるような、怪しげな光が宿っていた。
「ふふ、流石はメフィストさんですね。
まあ、改良の方は続けていただいて、出来ている分はこちらで回しますので。
ああ、被験者が必要ならまた仰って下されば届けさせます。どこの国にもいなくなっても気づかれない人間はいくらでもいますから。」
メフィストと呼ばれた男は少し考えてから答えた。
「いや、今はいい。それより今後の進行状況を見る方が先決だからな。
ふふふ、その薬を広めればいずれ私の野望が叶う。ケルベロス、貴様には感謝しているぞ。」
「いえいえ、お互いに利益のある話ですからね。
我々はその薬によって莫大な利益を得られる訳ですから。まあ先行投資のようなものですよ。
ではまた来ます。」
そう言うとケルベロスは部屋を後にした。
作者です!
前回の投稿からずいぶん時間が経ってしまい申し訳ありません。
次回からは学園生活の始まりとなります。