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第4話  告白

「まだかー?」


優馬はメリッサに訪ねた。

メリッサは今、姉の部屋で着替えている最中である。

メリッサはこの世界の服などわからないので優馬が姉の服から良さそうなものを見繕ったのだが、流石に着替えを見るわけにはいかない。


「ちょっとこれの着方がわからないんですけどー。」ガラッ


メリッサが突然襖を開けた。


「ん?お、っおい!そんな格好で出てくるなよ!」


優馬は少し焦って慌てて襖を閉めた。

メリッサは上着を脱ぎ、上半身は薄布一枚という格好だったからだ。

そして、メリッサは姉の下着を手に出てこようとしたのだった。

どうやらブラジャーの着け方がわからなかった様だが、優馬だってそんなものは知らない。

いや、何となくはわかるが、基本的に優馬は純情なのだ。


「それは胸に着けるやつだ!何となく形でわかるだろう!」


優馬は叫んだ。


「えーっと、こうかな?この金具は背中のほうですかね?

 んー・・・。

 あのー、優馬さん。背中の金具着けてほしいんですけど。」


「ばかか!そんなの自分でやってくれっ!」




30分後・・・


「お待たせしましたー♪

こんな感じでいいんでしょうか?どうですか?」


どうですかって。・・・かわいいな。い、いやいや。


「ん、まあいいんじゃないか。」


正直な感想など言えるはずがなかった。


「じゃあちょっと出かけるかー。」


「はいっ!」



「ぼっちゃんお出かけですかい?

そちらが噂の彼女ですかい?いやー、めちゃくちゃ美人じゃないですかー。

あっしもお伴したいくらいですよー。」


ジロッ!

優馬はにらみを利かせた。


「ス、スイヤセン。出過ぎたお言葉を。気をつけて行ってらっしゃいやせ!」


今のは主に門番的な仕事をしているギンという男だが、すぐにつけ上がるので優馬はあまり好きではなかった。

優馬のにらみは、ただ単に怖いかををするだけではない。というか決して怖い顔ではない。

優馬の顔はどんなにがんばっても優男に見えてしまう。

しかし、幼い頃から武道の修行をしてきた優馬は、相手を威圧するための力を込めることが出来る。

それは殺気とか剣気と呼ばれるものであるが、とくにそういう力だと意識したことはなかった。



「さて、どうするかなー。

流石に学校を見学するのはマズいか。サボったわけだしなー。とりあえず近所を見て回るか。」


優馬はとりあえず歩き出した。

メリッサはその後ろをついて行く。



「お、若。今日は学校はどうしたんだい?

かわいい娘連れてるねー。・・・コレかい?」


近所の本屋のオヤジが声をかけてきた。

なんか小指を立てているが・・・。

みんな発想は同じだ。


「いやー、そういうわけじゃないんだけど。

留学生でさ、しばらくうちで面倒見ることになったんだよー。」


学校だけでなく近所でもそういうことにしておいた方がいい。


「そうかいそうかい。組長は心が広いねー。

彼女日本語はしゃべれるのかな?」


「ああ、ぺらぺらだよ。」


「そりゃあよかった!

じゃあ近所だし、よろしくお願いします。」


本屋のオヤジはメリッサに会釈をした。


「メリッサ・エクランドと申します。

お見知りおきをお願い申し上げます。」


メリッサが恭しく礼をする。

なんでそんなに丁寧なんだ・・・。


「いやー、できたお嬢さんだ。

若、本気で狙ってみたらどうだい?」


オヤジがまたオヤジらしい発言をしていると、


「あんた!なにダベってんだい!?」


店からおばさんが出てきた。

オヤジはしかめっ面をした。もちろんおばさんには見えないが。


「おや、優馬ちゃんじゃないか。

あらあら、かわいい娘連れて。

今日はどうしたんだい?」


優馬は同じ説明をする。


「じゃあもし日本語が読めるようなら本を読んでみるといいよ。

色々勉強になるよ。」


「は、はい。ありがとうございます。」


メリッサは深々と頭を下げた。


「じゃあ、また来るよー。」




「わかー!」

「あー、わかがおんなのこつれてるー!」

「わかのかのじょかなー。」


公園の横を通ると遊んでいた子供達が寄ってきた。


「ようお前ら。

この人はなー、外国の人でな、

しばらくうちに住む事になったから、やさしくしてやってくれ。」


「そうなんだー。」

「おめめ青いねー。」

「かわいいー。」


子ども達はメリッサの周りに集まってきた。


「ふふっ。みんな、ありがとう。

メリッサって呼んでね。」


「は~い。

じゃあまたねー。」


子供達はまた遊び始めた。


「優馬さんは人気ものなんですね。」


メリッサは笑顔で言った。


「いやー、人気者というか。

うちの家は昔からここら辺の治安を守ってきた感じだからなー。

おれも近所で何かあると駆り出されるし。

ここら辺の人たちは子供の頃から知ってるしね。」



「ちょっと喫茶店でも入るか。」


歩いていても至る所に知り合いがいるため落ち着いて話すことができない。

優馬はお茶でもしながら話をしようと考えたのだった。

何しろ聞きたいことならいくらでもあるのだ。



二人は昔ながらの喫茶店にやってきた。

喫茶カナリアは祖父の代からの常連で、優馬も幼い頃から祖父や父、子分達など、多くの人に連れて来られたため、自分も常連になっていた。

最近の若者は喫茶店など来ないし、今は平日の午前中のため、客はほとんどいない時間帯だった。

というより、この店に客が入っているのをほとんど見たことがない。

マスターは日がな一日食器を拭いたり、テレビを見たりしているように見える。

だからこそ落ち着いて話せると思ったのだった。


「魔法について教えてもらいたいんだけど、いいかな?」


優馬とメリッサの前にはそれぞれ、コーヒーと紅茶が置かれていた。

注文から出てくるまでが早いのはこの店の自慢でもある。

優馬が聞くと、

メリッサは店内が珍しいらしく、きょろきょろと周りを見回していた。


「は、はい。どうぞ。」


メリッサは慌てて答えた。


「喫茶店が珍しいのか?メリッサの国じゃあこういう店はないのか?」


「私の国の飲食店は昼間は食事を出して、夜はそのまま酒場になるお店が多いですね。

 だからこういう落ち着いた雰囲気ではなくていつも騒がしいんです。だそうです・・・」


メリッサは答えたが、どこか自信なさげだ。


「だそうです?」


優馬は気になったので訪ねてみた。


「実は、私は物心ついた時から城で魔法の修行をしていたので、

外の事はあまり知らないんです。

城下に出たのは数えるほどしかなくて。」


メリッサは苦笑しながら答えた。


「ん、そうかー。」


それじゃあほとんど自由はないんだな。国のために魔法の修行か。

戦争やったりしてるみたいだからそのための戦力なのか?

こっちにいた方がむしろ自由に生きていけるんじゃないか。


などと考えたが、やはりこの世界の人間ではないのにずっといてもいいものなのかとも思う。

少なくともこちらにいる間は守ってあげようと、優馬は心に決めた。


「ところで、メリッサの世界には魔法使いみたいのはいっぱいいるのか?」



優馬は話題を変えた。


「魔法使いではなく、魔導士と呼ばれています。

ほぼ全ての生き物は潜在的に魔力を持っていて、量が多い人が主に魔導士になりますね。

でも、元々の魔力量が少なくても、修行で増やす事ができるので、なりたい人は修行で魔力量をあげたりして、魔法学校に入ります。

魔法学校は国が運営しているんですが、通常は6年ほど魔法の基礎から応用を学びます。

学年が上がっていくと専門分野に分かれて、戦闘用の魔法、補助系の魔法、魔法道具についてや、薬の調合、などを学びます。

私も幼い頃に学校で基礎を学びましたよ。その他に父の用意した家庭教師がいたので一日中魔法の勉強をしてましたね。」


今度はメリッサは自信を持って答えた。


「一日中かー。大変だな-。俺にも魔法って使えるのかな?」


それはほんの少し期待をしていた事だった。


「うーん。まずこの世界には魔力が感じられないので、魔力を持って生まれる確率は相当低いと思います。で、優馬さんですが、見たところ魔力はなさそうですね。なので魔法は無理かと・・・。」


やっぱりだめか。


「そうだよなー。まあ聞きたかっただけだから気にするなよ。」


落胆を表には出さない優馬である。


「今は魔力がなくなって魔法が使えないのか?」


気を取り直して話を進める。


「いえ、完全になくなった訳ではないので、簡単な魔法なら使えますよ。

例えばこんなのとか。」


そう言うとメリッサは飲んでいた紅茶のカップに手をかざした。

すると、

『プクプク』


気泡が出てきたと思ったら、紅茶が増え始めた。


「おおっ!」


優馬は思わず声を上げてしまった。

マスターがこちらをチラッと見るが、すぐにまたテレビに没頭する。


「今のは水属性の魔法で、カップの中に水を生んだだけなんです。」


メリッサは説明する。


「私は色々な属性が使えますが、水属性は一番得意ですね。」


「いや、すげーな。派手なやつは魔力の消費も激しいのか?」


「そうですね。特に水属性は空気中の水分とか、川の水とかを使えば消費が抑えられるんですが、何もないところから火を出したりとかは割と消費します。

今の私の魔力量は、普通の魔導士一人分より少し少ないくらいなので、今でも大抵のことはできますが、この世界ではやっぱり回復が遅いので、あまり消費したくないですねー。」


空に近いとか言って、普通の一人分かよ。お前の魔力はどんだけだよ・・・。



喫茶店を出ると二人はまた歩き出した。


「次はどこに行くんですか?」


「ちょっとなー。見せたいものがあるんだ。」


メリッサは聞くが、優馬はもったいぶって教えない。

しばらく歩くと小さい山の麓に鳥居があり、その向こうに長い階段があった。

階段の周りは木々が鬱蒼としている。


「今から登るんだが、たくさん歩いて疲れたか?」


「全然大丈夫ですよー。」


本当か?余裕があるようには見えないが、でも目的地はこの上なのでしかたないか。


「よし、じゃあ行こうか。」



「ハア、ハア。」


メリッサは息も絶え絶えでものすごく辛そうだ。


「大丈夫か?おんぶしてやろうか?」


「・・・大丈夫・・・です。

終わりも見えてきたみたいなので、がんばります。」


そう言うとガッツポーズのような格好をして見せた。

まったく強がりだな。



ようやく頂上にたどり着くと、木々の間を抜けて開けた場所に出ると、奥には神社があった。


「ここは、何か神聖な場所なんでしょうか?」


「何か感じるか?ここは神社って言って、昔から神様が祀られているんだよ。って言っても今の時代に神を信じているやつなんか一握りしかいないけど、ここは昔から気に入っててたまに来るんだよ。」


「そうなんですか。私の世界では、神は実際に奇跡を起こす存在で、転移魔法の様な大規模な魔法を使う時は、神に祈りを捧げて力を引き出すんです。」


何だかすごい話だな。


「こっちの神とはエライ違いだな。」


優馬は率直に述べた。


「でも私達の世界の世界の神は、こちらの世界にも存在しているはずですよ。でないと転移魔法でこちらに渡れないですからね。

神は世界の外側にいて、いくつもの世界を加護しているんだと思います。」


「ふーん。確かに魔法で繋げるには同じ神がいなきゃってことか。何かすごい話だな。

本当の神とか、まあ魔法から言って今日は衝撃的過ぎる日だよ。

ちょっとこっちにこいよ。」


話し終えると優馬はメリッサを促した。


「うわー、すごい、きれい。」


そこは町が一望出来る場所だった。

優馬の家や公園などが小さいがわかる。


「ここから俺の町がほとんど全部見えるんだよ。

何か親父や爺さんには、この町はお前達が護るんだ、とか言われてきたんだ。

小さい頃は何となくその気になってたけど、少し大きくなってきたら、なんで俺が護らなきゃいけないんだとか思うようになってさ。でもある時ここに来て思ったんだ。

俺はこの町が好きだし、町の人間も好きだ。そんで俺は力もそれなりにある。だからここから見える町くらいは俺でも護れるんじゃないか、ってね。それくらいはやってみたいって思ったんだよ。

だからさ、今はその中にお前もいるわけで。とりあえず帰れるようになるまでは俺が護ってやるから。安心してこっちにいてくれよ。」


優馬は自分の素直な気持ちを話した。

何か告白するみたいで恥ずかしかったが、この場所で言わなければならないと思ったのだ。


「はい、ありがとうございます。

グスッ。」


メリッサは涙を流した。


「お、おいおい。なんで泣いてるんだよ。」


「わかりません。でも嬉しくて。

私も知らない世界に来て、でも優馬さんや優馬さんの家族の方々が優しくて、本当によかったです。」


泣き止まないメリッサを見て、優馬はメリッサの肩を抱いた。

気持ちが伝わるようにやさしく抱き寄せたのだった。

こんにちは、作者です。

少し間が開いてしまって申し訳ありませんでした。


タイトルの『告白』というのは

「好きだよ」という意味ではなく自分の気持ちを打ち明けるという意味です。

まあそっちの気もあるんだろうけど、そこら辺はまだわかりません。


んー甘酸っぱい恋とか書けるかな?

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