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第一章:セレとカイトと……

どこまでも平らな緑色の絨毯。否、大草原が広がる平地。

空の蒼と、緑の境界線に、二本の線が続いていた。それは、線路だった。

その時、線路の上に乗っかっていた小石が、ポトン、と落ちる。レールの振動が大きくなり、周りの空間が揺れた。

先程から続いていた、ガタン、ゴトンという音は、次第に大きくなり、ゴー、という音に変わる。

直後に、汽車が通過した。


今、通り過ぎた汽車内部のあるコンパーメント。そこには、二人の子供が乗っていた。

「なぁ、後どれ位で着くと思う?」

退屈していたのだろう。子供の内の片方、少年の方が同乗者に問い掛ける。その声は、声変わりしたてだった。

「うーん、二時間ってところじゃない?」

いくらか高い声が答えた。少女の方だった。

「うぇ、まだそんなに?来るんじゃなかったぜ。全く」

少年が、自分の黒髪をかきむしりながら言う。それを見て、少女が眉をひそめる。

「おい、カイト。そんな事言うな。あっちはあれでも、死活問題なんだぞ」

新たに、三人目の声がした。しかし、その姿は確認出来ない。

そんな事お構いなしに、カイトと呼ばれた少年は牙をむく。

「フェルクには言ってねぇ!勝手に口出しすんな、悪魔!」

端から見れば、少年が少女に怒鳴っているように見えるだろう。

「ムッ。何度言ったら分かるんだ。俺は悪魔ではない。魔族だ」

しかし、発せられたその声は、まるで少女のものではない。落ち着いた低めの声。

「なぁセレ。こんのバカフェルク、どう見たって悪魔だよなぁ」

カイトは、視線を少し上げて、セレと呼んだ少女の方を向きやった。

その目は、

「肯定して」

と語っていたが、

「カイト、喧嘩しないでよ。もぉ、何で仲良く出来ないの?」

セレという少女は、こう返した。

途端にカイトは不機嫌になる。

「何だよ。セレはいっつもフェルクの肩持つじゃん。セレは実の弟より、悪魔の方がいいってわけ?」

「悪魔じゃない」

すかさず入るフェルクの訂正。

「二人とも、仲良くしてよ。特にカイト」

セレは、溜め息混じりに言う。

「それに、今から仕事だし。支障が出ても知らないから」


仕事。その言葉に、カイトは押し黙った。

それもその筈。なぜならそれこそが、二人+αがここにいる理由だから。こうやって、何時間も汽車に揺られているのも、全て仕事のせいに他ならない。

「あー、何で修復士の人口って少ないんだよ。だからこんなに遠くまで行かないといけないじゃないか」

修復士。それは、二人の職業であり、身分でもある。


この人間界は、魔界と接している。

普段二つの空間は閉ざされている。しかし空間の境目というのは、まるで布みたいに、整えても整えても必ず歪みが生じるのだ。

歪みはいつか壊れ、そこからは、招かれざるモノ――『咎』が侵入する。

『咎』とは、呼ばれていないのに、人間界へやって来た悪魔の事。その悪魔達は、魔力が本来の半分しかない。そして時間が経つと、理性を失い、『咎』となり果てる。

『咎』は人間を襲う。人間にしかない『霊幹』を得るために。

そこで、登場するのが修復士。彼らは、歪み、壊れた空間を修復する。

その能力は、誰もが持っているのではない。魔法とは、また別の能力だった。

セレとカイトは、数少ない修復士の名家・ルグレ家の生まれだった。

セレは今年で十五歳。青みを帯びた長い黒髪に、血のように紅い瞳を持つ。

ちなみに、紅い瞳の事は、龍眼と呼ぶ。それは、今は絶滅した龍に由来する。龍の瞳も紅かったらしい。

龍眼は、僅かな魔力でも察知する事が出来る。だからこそ重宝されている。

カイトは十四歳。セレより黒いボサボサの髪に、金色の瞳を持つ。

カイトは、末っ子でありながら、ルグレ家の次期当主となる事が決まっていた。それはひとえに、潜在魔力が大きいからである。 ルグレ家というのは、潜在魔力の大きな家系である。セレの魔力も人並みより大きかった。

しかし、カイトの魔力は、セレさえも遥かに凌駕している。その大きさは、悪魔並みである。


「そうだよね。何で修復士って少ないんだろ。フェルクは分かる?」

セレが、膝の上の乗っかった何かを撫でながら言った。

そこにフェルクはいた。常人には見えないであろう銀の毛並み。しかし、セレとカイトの目には、はっきりと映し出されている。

「さあな。でも俺達魔族には、空間を操れるヤツはいない。」

そう、フェルクは、人間界では一般的に(本人は否定しているが)悪魔と呼ばれている、魔界の住人だった。

今は、他人に見られないよう、体長五十センチ程の妙な生き物の姿に身をやつしている。しかし、その金色の瞳は、紛れもない悪魔の証拠だ。


「ふーん。フェルク、分からないのか」

カイトが言った。その顔は、少し嬉しそうだった。

フェルクは反論する。

「当たり前だ。俺だって只の魔族だ。知らない事の一つや二つだってあるさ」

「一つ二つねぇ」

また始まりそうな言い争い。セレは、傍観する事を決めた。今度は、楽しそうに聞いている。

「何が言いたい」

「言ってもいいのぉ。ほら、この前のアレ……」

「そ、ソレは言うな!」

「ソレって?」

「あ、セレ。あのなぁ」

「おいっ!」


セレとカイトとフェルク。この三人は、いつも一緒だった。

それは、五年前のあの時から……。

初めまして。神城です。

さて、初の連載です。難しいですね。どこまで書けばいいか迷いました。でも、小説を書く事って楽しいです。

ちなみに、Concertoは、「コンサート」ではなく「コンチェルト」とお読み下さい。


まだまだ未熟ですが、今後ともよろしくお願いします。

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