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織田信行が行く  作者: あひるさん


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第26話 三河一向一揆

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 今川義元の指示で岡部元信率いる部隊が三河国に向かわせた情報が駿河国の一向宗を通じて本證寺に伝わった。


「駿河から今川の兵が西に向かっているだと?」

「目的が分からない」

「我々を潰すつもりだ」

「早合点は禁物ではないか?」

「悠長な事を言っている場合ではないぞ」


 本證寺の上層部は半日に渡って議論を繰り広げた。今川義元が尾張を狙っている噂もあるので三河国は通り過ぎるだけで何もしない可能性もあったが、今回は一向宗に対するモノだと判断せざるを得ない材料が多過ぎた。


「今川義元の出兵は我々に対する挑発だと判断せざるを得ない」


 寺主の空誓は今川義元が一向宗との全面対決を望んでいると判断した。


「それでは戦の準備を始めます」

「上宮寺と勝鬘寺に遣いを走らせろ」

「一向宗を怒らせたらどうなるか、身を以て分からせてやる」


 僧兵たちは『戦が始まる』と大声を張り上げながら境内を慌ただしく動き回り、僧侶たちは近隣の寺や集落に決起を知らせる為に各地へ散らばった。


*****


「西三河で一向一揆が始まりました」

「火元は?」

「安祥の本證寺です」

「あの寺が纏め役だから当然か。ところで信元は?」

「関所を閉鎖した上で国境沿いの警戒に当たっております」


 西三河で一向一揆が発生した一報が鳴海城に届けられた。刈谷城の水野信元は一報を聞くと直ぐに全ての関所を封鎖した。関所を通らず国境を越える関所抜けを防ぐ為に各所に将兵を送り込んだ。


「勝介(内藤勝介)と盛重(佐久間盛重)は鳴海の守りを任せる」

「「御意」」

「他の者は刈谷に向かう準備を」

「「御意」」


 木下秀吉は初陣が不意に決まった事もあってガチガチに緊張して席を立てなかった。


「木下、どうした?」

「佐久間様、申し訳ございません。緊張して身体動かなくなりました」


 佐久間盛次に声を掛けられた木下秀吉は正直に事情を話した。嘘をついたところで場慣れしている佐久間盛次なら直ぐに見破られると思ったからである。


「それが普通だ。俺も初陣の時は緊張して足が竦んだ」

「佐久間様が?」

「俺も人だからな。季忠(千秋季忠)や利家(前田利家)のような『人じゃない連中』は緊張を知らんようだが」


 佐久間盛次が千秋季忠と前田利家の事を揶揄した物言いをしたので木下秀吉は堪えきれず笑い出した。


「それを聞いて力が抜けた気がします」

「戦場で動けなくなったら最期だ。何があっても身体が動けるようにしておけよ」

「ありがとうございます」


 木下秀吉は佐久間盛次のお陰で緊張の糸が解れて身体が動くようになった。


「お前は何処に配属されるんだ?」

「指示を受けていないので…」

「俺の所に来い。うちの連中は細かい所に無頓着で困っている。お前が手伝ってくれたら助かる」

「良いのですか?」

「治部少丞様には俺から言っておく。準備が出来たら俺の屋敷を訪ねて来い」


 佐久間盛次は木下秀吉の配属先を一方的に決めると広間から出て行った。二人のやり取りを奥の方で隠れて見ていた信行は小さく頷くとその場から立ち去った。


 木下秀吉は足軽身分だが信行の祐筆として召し抱えられたので周囲から妬みや嫉妬の目で見られて肩身の狭い思いをしていた。信行は佐久間盛次に声を掛けてそれとなく様子を見てほしいと頼んでいた。本来なら足軽組頭の下に配属されるので何らかの声が掛けられている筈である。それが為されていなかったので佐久間盛次は自己判断で自分の部隊に組み込んだ。木下秀吉の上司に当たる足軽組頭は信行麾下の者だったが、佐久間盛次から怒鳴られた上に信行からも叱責された。


*****


 松平元康と鳥居元忠の密談を聞いていた目付衆が尾張国に戻り、頭領の千賀地保俊と共に鳴海城を訪れた。目付衆から松平元康の本音を聞いた信行はしたり顔で何度も頷いた。


「大きく出たね」

「あのような事を言われたら三河に居る者は失望するでしょう」

「三河に固執するならそのまま死ぬまで居続けろと言っているようなものだよ」


 千賀地保俊は一族と袂を分かつまでは服部党の一員として松平家の為に働いていた。松平元康の発言は三河に居る者たちの存在を否定していると言っても過言ではなかった。


「治部少丞様、服部党との交渉を進めて宜しいでしょうか?」


 千賀地保俊は信行から『松平元康が三河に戻る意思が無いと確認出来たら接触してほしい』と言われていたので動く時期だと判断した。


「進めて構わないけど無理は禁物だ。手に余ると判断したら躊躇せず退いてほしい」

「承知致しました」

「私に会わせろというなら三河に行く準備は出来ているから遠慮なく言うように」


 千賀地保俊と目付衆は一礼すると部屋から出て行った。傍で控えていた千秋季忠は黙っていたが何か言いたげな顔をしていた。


「松平元康は今川家を蝕む毒みたいなもんですか?」

「面白い事を言うね。まさにその通りだ」

「それじゃ毒には毒を以て制するしかないですよ」

「誰が毒なんだ?」


 千秋季忠が誰の事を指しているのか分からず信行は首をひねった。 


「目の前に居るじゃないですか」

「僕の事?」

「美濃で蜂須賀正勝殿から『尾張の毒蛇』と言われたらしいですね」

「確かに言われたよ。土岐義龍を痛い目に遭わせたからね」

「松平元康も同じ目に遭わせたらどうです?御屋形様を愚弄したわけですから」

「季忠も甘いね」

「まさかとは思いますが…」

「当たり前だろ。兄上には悪いけど織田家の事を考えれば始末する以外あり得ないよ」


 松平元康が織田家と信長に対して不倶戴天の言葉を使った事もあり、信行の中で松平元康を生かしておく理由は無くなった。松平元康が那古野に居た頃から信行は違和感を覚えていたが、目付衆からの報告を聞いて違和感の正体が見えたような気がした。

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