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織田信行が行く  作者: あひるさん


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第24話 三河国の動向

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。


*後半に登場する女性ですが、史実と異なる名前にしています。

 西三河にある一向宗の本證寺に属している複数の僧侶が安祥城下で或る噂を耳にしており、その噂は寺の上層部にまで伝わっていた。


「城下で変な噂を耳にした」

「今川義元が兵を集めている話か?」

「その通りだ。我々を潰す為らしい」

「何だと!松平から国を奪うだけでは満足出来んというのか…」

「このまま手を拱いていれば本当に潰されてしまう」

「上宮寺と勝鬘寺に遣いを出す。一同に介して対応を考えるべきだ」


*****


 東三河にある曹洞宗龍拈寺では西三河で一向一揆が起きる噂話で持ちきりだった。


「安祥や岡崎では一揆が起きると騒ぎになっている」 「一揆の噂は本当だったのか?」

「嘘なら騒ぎにはならん。」

「西三河だけで収まるとは思えん」

「東三河は我々曹洞宗が多数を占めているが、一向宗も少なくない」

「蜂起に合わせて立つとでも?」

「その可能性はある」

「ならばどうするのだ?」

「石雲院に遣いを出して駿府に噂を広めてもらう。そうすれば今川も腰を上げる筈だ」


*****


 三河で今川義元による一向宗討伐の噂を流していた木下秀吉が刈谷城に姿を見せていた。


「噂は着実に広まっています」

「こちらにも聞こえ始めた。西三河が危ないから尾張に逃げるという者も確認している」

「関所はこのままですか?」

「流民が増えだしたら関所を封鎖する。一向宗の坊主や門徒が紛れるようなら一大事だからな」

「目付衆による監視もあるのですり抜けるのは困難でしょう」

「今のところは十人と少しだけだ」

「捕まった者は?」

「これだ、これ」


 水野信元は手刀で首を切る仕草を木下秀吉に見せた。尾張に入ろうとした一向宗の僧侶と門徒は関所で捕まった後、全員首を刎ねられていた。


「秀吉は駿府へ向かうのか?」

「はい。商品も無事に受け取りましたので遠江と駿河に一向宗が騒がしくなっていると噂を流します」

「そろそろ今川義元が食い付いてほしいところだな」

「岡崎辺りも騒々しくなっているので情報は届いている筈なのですが」


 三河国の中心である岡崎も近傍に上宮寺と勝鬘寺がある事から城下も騒がしくなっている。城主の山田景隆はようやく腰を上げる形で今川義元に状況を知らせる遣いを出した。


*****


 今川義元は懇意にしている商人から三河の一向宗が騒がしくなっている事を聞いていたが、岡崎城主の山田景隆から報告が無いので動くべきか否かで迷っていた。


「御屋形様、悩まれておられる相が出ておりますぞ」

「老師か。三河で問題が起きているのだ」


 今川義元は太原雪斎に三河国で一向宗が何かを企んでいる節があると耳にした事を伝えた。


「一揆の可能性がありますな」

「守護不入を認めなかった事をまだ引き摺っているというのか?」


 三河国にある寺社は松平広忠が治めていた時に守護不入の特権を認めさせた。松平広忠が先代の松平清康から跡を継いだ時の状況(合戦の最中に家臣に暗殺された)から国内の諸勢力に強気な態度が取れなかった事が原因である。


 今川義元は三河国を支配下に置いた際に守護不入の特権を廃止すると寺社に通達を出した。岡部元信や久野元宗なとが率いる主力部隊を岡崎郊外に留めて圧力を掛けた上での事である。


「あのやり方は間違っておりませんが、一向宗だけは違っていたようです」

「似非坊主どもめ…」

「連中を刺激する事になりますが、兵を送るべきです」

「一戦交える覚悟が必要だな」


 太原雪斎は大きく頷いた。一揆を起こされる前にこちらから潰した方が被害も西三河に限定されるので少なくて済む。


「竹千代に元服させて大将に据えるのはどうだ?」

「元服は賛成ですが、三河に向かわせるのは反対致します」

「竹千代が大将なら三河の連中も喜んで集まるぞ」

「一向宗を抑えた後の事はお考えですか?」


 松平竹千代が三河に居る事から松平の旧臣が独立目的で暴走(謀反)する可能性が高かった。松平竹千代が欲を出して心変わりすれば今川義元は三河を失う事になる。


「岡部(岡部元信)と久野(宗能)に任せよう」

「良い判断ですな」

「松平竹千代の元服は進めるぞ」

「御屋形様が烏帽子親となり諱を与えれば良いでしょう」

「老師、同時に祝言を挙げさせるのはどうだ?」

「賛成致しますが、お相手次第です」

「糸はどうだ?」

「関口親永殿の御息女ですか…」


 関口親永は今川義元の一門衆(母親が今川義元の妹)なので娘の糸は今川義元の縁戚に当たる。


「老師は誰を考えていた?」

「竹姫です」


 竹姫は今川義元と定恵院(正室で故人)の長女で嫡男今川氏真の妹である。松平竹千代を一門衆として取り込むのに最適な相手である。


「牟礼元誠の嫡男(牟礼勝重)に嫁がせる方向で話を進めていたのだが」

「ならば仕方ありませんな。糸殿を御屋形様の養女に迎えてから嫁がせる事を提案致します」

「分かった。関口(関口親永)を呼んで話を進める」


 三河国への援軍が出発した後で松平竹千代は元服して名前を『松平元康』と改めた。そして今川義元の養女になっていた糸姫と祝言を挙げて名目上は今川家の一門衆になった。

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