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織田信行が行く  作者: あひるさん


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第20話 ざまぁみろ義龍

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

「治部少丞様、お待ちしておりました!」

「藤吉郎!」


 鷺山城を脱出して鳥羽川の河原に到着した信行たちを待っていたのは木下藤吉郎である。木下藤吉郎は那古屋城まで信行に同行していたが鷺山城に行く事が決まった直後に信行から或る事を指示されて別行動を取っていた。


「よくやってくれた」

「こちらの蜂須賀殿が直ぐに手を回してくれたお陰です」


 木下藤吉郎は近くに居た土豪を信行に紹介した。土豪の名は蜂須賀正勝といい、普段は近隣の山中で木の切り出しを生業としている。時折斉藤利政からの依頼を受けて兵士として戦に加わるなどこの一帯では名が知られていた。


 蜂須賀正勝は旧知の仲である木下藤吉郎に頼まれて鷺山城に居る関係者を津島湊まで送り届ける為に筏を準備して鷺山城近くの河原で待機していた。


「織田信行です」

「蜂須賀正勝だ」


 信行は南の方へ振り返ると稲葉山城の方角を差し示した。


「土岐義龍が動き出している。挨拶は川を下ってからさせてほしい」

「分かった。準備が出来た者から乗り込んでくれ」


 蜂須賀正勝の合図で岸に留められていた筏に関係者が次々と乗り込んで津島湊を目指して川を下り始めた。


「あんたは?」

「少しだけ待ってほしい」

「構わんが。忘れ物でもしたのか?」

「親殺しを企んだ奴の顔を拝んでくる」


 誰の事を言っているのか分からず首を傾げている蜂須賀正勝を残して信行は鷺山城の方へ戻った。


*****


 土岐義龍率いる軍勢が鷺山城に到着したが、城に人の気配は無く静まり返っていた。


「空城の計でも仕掛けたつもりか?」


 土岐義龍は大軍で城を包囲して人っ子一人逃げ出せない状況を作った上で斉藤利政を始末してやると息巻いていた。


「物見が帰ってきましたが、城内には人が一人も居りません」

「無人だと?ちゃんと調べたのか?」


 土岐義龍は物見の報告を疑って副将の日根野弘就を問い質した。


「間違いありません」

「戦う前から逃げるとは卑怯な奴だ」

「おそらく尾張方面に逃げたと思われます」

「頼れるのは織田信長だけだからな」


 日根野弘就の話を聞いた土岐義龍は斉藤利政の事をコケにして笑みを浮かべた。


「親殺しの斎藤義龍様じゃないですか」

「誰だ!」


 捨てた名前を呼ばれたので土岐義龍は周囲を見渡した。斎藤の名を極端までに嫌っており、最近は呼び間違えた者に対して暴力を振るうので周りから腫れ物に触るような扱いをされていた。


「こっちですよ。こっち」


 土岐義龍が声のする方向へ顔を向けると、草むらの影から信行が手招きしながら立っていた。 

 

「誰だ、お前は?」

「織田信行と申します」

「ウツケの弟だな」

「親殺しの斎藤義龍に兄上の事をウツケと呼ぶ資格はありませんので悪しからず」


 土岐義龍は『親殺し』、『斎藤義龍』という耳障りな言葉を聞いて頭に血が昇った。


「貴様、もう一度言ってみろ!」

「何度でも言いますよ。斎藤義龍は親殺し。親殺しの斎藤義龍は親不孝者。親不孝者の斎藤義龍に土岐義龍と名乗る資格はなし」


 信行がおちょくるように耳障りな言葉を連呼したので土岐義龍は怒り心頭になり太刀を抜いた。


「お前は俺が叩き斬ってやる」

「出来るものならどうぞ。親殺しの斎藤義龍に斬られたら末代までの恥晒しだよ」


 信行は土岐義龍を指さしてコケにすると北に向かって走り出した。


「待て!」

「御屋形様、お待ち下さい!」


 止めようとした日根野弘就を振り切って土岐義龍は馬の腹を蹴って信行を追い掛けた。


*****


 信行は河原に到着すると土岐義龍が来るのを待ち構えた。この辺りは道端に石が多数転がっていて馬を走らせるのも一苦労する程である。何とか追い掛けてきた土岐義龍を見て信行は再び指を指して笑い出した。


「美濃を支配してるのに土地の事情も知らないとは情けない。親殺ししか頭にない斎藤義龍だから仕方ないか」

「貴様だけは絶対に殺す!」


 土岐義龍が馬に乗って河原に足を踏み入れた瞬間、足元から大きな音がして黒煙が上がった。それに驚いた馬が後ろ脚で立ち上がったので土岐義龍は馬から落ちてしまい全身を強打した。


「成功したね。死にはしないけど大怪我は間違いなしだな」


 信行は身動き一つしなくなった土岐義龍を一瞥すると蜂須賀正勝が待つ岸に向けて走った。


「御屋形様!」


 後を追い掛けてきた日根野弘就は河原で倒れて気を失っている土岐義龍を発見した。息はしているものの何度呼び掛けても反応がないので近くにいた馬に土岐義龍を乗せるとその場から引き返して軍勢が待機している場所に戻った。


「治部少丞様の策が上手く行った」

「南蛮銃に使う火薬をあのように使うとは」


 少し離れた草むらから様子を探っていた百地三太夫は伊賀崎道順と共に感心していた。信行が百地三太夫に頼んで河原に細工していたのは火薬が詰まった玉である。信行は自分が立つ位置から火薬玉まで火薬の導火線を敷いており火を付ければ導火線を伝って火薬玉に火が引火して爆発する仕組みである。


「稲葉山の監視は任せるぞ」

「承知した」

 

 二人は土岐義龍が運ばれるのを確認した後、百地三太夫は来た道(信行の往路)を戻るように尾張に向かい、伊賀崎道順は土岐義龍の生死を確認する為に稲葉山城へ向かった。

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