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織田信行が行く  作者: あひるさん


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第17話 無礼討ち(一)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 信行と勝家は那古野城に向かう途中で荒子前田家を訪れると前田利家の父前田利昌が二人を出迎えた。


「利昌、元気そうだね。」

「治部少丞様、お久しゅうございますな。ご活躍は耳にしております」


 前田利家の件があるので前田利昌は少し落ち込んでいる様子だった。


「前田殿、利家はどちらに?」

「離れに閉じ籠もって外に出てこない」

「会わせてもらえるか?」

「構わぬが、会えるとは限らんぞ」


 前田利家は突然実家に戻ってくるなり離れに閉じ籠もって誰とも顔を合わせなくなった。那古屋城から出仕を催促する遣いが何度か訪れたが、本人が拒絶するので前田利昌はどうする事も出来ずに毎回頭を下げて断りを入れていた。


「治部少丞様、息子が嫁を迎えて何が悪いのですか?某にはさっぱり分かりません」

「私にも分からない」

「このままでは息子が不憫でなりません」

「私に任せてくれないか?あらゆる手段を使って利家の潔白を証明する」

「宜しくお願い致します」


*****


 二人が前田家の離れを訪れると中で人が動く気配がした。


「利家!」

「信行様?」

「そうだ、織田信行だ。柴田勝家も一緒に居るぞ。話をさせてくれないか」


 扉を開けて顔を出した利家は精気を失った死人のような面構えになっていた。


「信行様、申し訳ございません」

「謝る必要はない。お前は何も悪い事をしていな」

「しかし…」

「私の期待に沿えなかったというのか?そんな事はない。前田利家は期待以上の働きをしているぞ」

「信行様。俺は、俺は、」


 前田利家は張り詰めた糸が切れたのか、信行にしがみつくと涙を流して嗚咽した。


「お前が嫌がらせを受けている事は聞いている。誰がやったのか突き止めて潔白を証明してやる」

「それでは信行様に迷惑が」

「心配しないで私と勝家に任せておけば良い」


 前田利家を柴田勝家に任せて母屋に戻った信行は前田利昌を呼んだ。


「利家を鳴海に連れて行く。鳴海なら余計な雑音は入らない筈だ。それに許嫁の篠原まつも鳴海で預かる方が良いだろう。父の篠原一計には御屋形様から話を付けてもらう」

「何から何まで申し訳ございません」

「人を残していくので私と勝家が戻るまでに必要最低限の準備だけ済ませてくれ」


 信行と勝家は手伝い用の兵士を数名残らせると急ぎ足で那古屋城に向かった。前田利昌は後ろ姿に対して何度も頭を下げていた。


*****


 那古野城に入ると取次役が姿を見せた。信行が先触れを出せずに訪れたので何事かと驚いていた。


「兄上は?」

「平手様と共に清州城へ行かれています」

「丹羽長秀は居るのか?」

「直ぐに呼んで参ります」


 取次役が城内に姿を消した後、残った者に信行は声を掛けた。


「聞きたい事がある」

「何でしょうか?」

「前田利家の噂を知っているか?」

「耳にした事はありますが、巫山戯た内容だったので遊び半分で流したのだろうと思っておりました」

「出処は知っているか?」

「茶坊主が言っておりました」


 前田利家の手紙に書かれている事と相違なかったので信行は確証を持った。しばらくすると丹羽長秀が姿を見せたが、信行の顔を見てのっぴきならない事が起きたと直感した。


「信行様、先触れもなくどうされました?」

「兄上と同朋衆に用がある。先に同朋衆の部屋に案内してくれ」

「承知致しました」

「前田利家の件でしょうか?」

「よく分かったなと言いたいところだが…」

「申し訳ございません」


 同朋衆が増長して問題を起こしているのを非難する声が聞こえる度に平手政秀や丹羽長秀が信長に伝えて当事者を処分させていた。しかし短期間の謹慎など軽い処分に抑えられるので自分たちは何をやっても許されると図に乗っていた。


「悪いが同朋衆を根切りにする。理由は聞かなくても良いだろ?」


*****


 同朋衆の部屋に入ると酒の匂いが充満しており、泥酔状態で大の字になっている者や博打に夢中になっている者など信長の居城とは思えない程乱れていた。


「馬鹿共を放り出せ」

「はっ」


 丹羽長秀と柴田勝家が兵士を引き連れて部屋に入ると茶坊主を次々と庭に放り出した。抵抗する者も居たが袋叩きにされた後に放り出された。


「これはどういう事でしょうか?」


 奥の部屋から数名の茶坊主が出て来て、真ん中の茶に居た茶坊主が口を開いた。


「同朋衆の規律が乱れているので罰を与えただけだ」

「誰の許しを得てでしょうか?」

「誰の許し?私の許しだよ」

「まさか…」

「私が織田信行だ。お前が拾阿弥だな?」

「…」


 茶坊主は答える事が出来ず黙っていたが、自分がその拾阿弥であると言っているようなものだった。


「お前に聞きたい事がある。前田利家に言い掛かりを付けた理由を話せ」

「幼女を手籠めにする目的で嫁に向かえるのは鬼畜の所業であります。それを断じただけでごさいます」

「前田利家に直接言わず巫山戯た噂をばら撒いたわけか」

「巫山戯た噂ではごさいません。その筋の者から話を聞いております」

「話の出処は?」

「御屋形様に近い家臣の方です。その方は前田家の者から話を聞いたと申されておりました」

「その家臣とやらを直ぐに連れて来い」

「何故でしょうか?」

「私が真偽を糾すからだ」

「お断り致します」


 拾阿弥やは信長に気に入られていると思い込んでおり、一門衆相手でも少々無礼な態度を取っても大丈夫だと過信していた。


「私の命令に従えないと?」

「御屋形様の命令以外は従えません」

「そうか。ならば仕方ない」


 信行は太刀を抜いた。当主の命令に従わない者は処断されてもやむ無しとされている。ちなみに当主不在の際は奥方、一門衆、家老の順で責任の所在を決めている。帰蝶の姿も見えないので一門衆の中でも信長の次弟である信行が当主代理の立場になる。


「御屋形様の代理である私に従わないと言うなら死んでもらうだけだ」

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