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織田信行が行く  作者: あひるさん


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第15話 一門衆の不始末(一)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 信行の嫡男が産まれた事を聞いた信長は先触れも出さず突然鳴海城を訪れた。


「直虎、よう頑張った!」

「ありがとうございます」

「兄上、声が大きいです。千早丸が目を覚ますじゃないですか」


 機嫌の良い信長が大声で話をするので信行は呆れながら注意した。直虎は信長が千早丸誕生を喜んでいるので信行とは異なり笑顔を見せていた。


「声が大きくて悪かったな」

「義姉上から説教されても良いんですか?」

「何だと?」


 帰蝶の名前が出されたので信長はビクッとした。


「先日もこっぴどく説教されたようですね」

「どこでそれを知った?」

「義姉上から手紙が来ましたよ」

「帰蝶の奴め…」


 帰蝶から説教された件を持ち出されたので信長は顔色が悪くなった。

 

「吉法師に碌でもない名前を付けようとしたらしいですね。『旦那様には呆れて物が言えぬ』と書かれていましたよ」

「仕方あるまい。赤子の顔を見た瞬間に奇妙だと思ったからな」

「だからといって奇妙丸はいけませんよ」


 帰蝶が抱いていた嫡男の顔を見るなり信長は『赤子の名前を奇妙丸にする』と言い出した。帰蝶は呆気にとられたが、我に帰った瞬間に『巫山戯た名前を付けるな!』と信長を怒鳴りつけた。


「帰蝶の顔が般若に見えた」

「当たり前ですよ。誰でも怒りますよ」

「他の名前が咄嗟に浮かばなかったので俺と同じ吉法師にした」


 信長は怒る帰蝶を宥めながら必死に名前を考えて最終的に自分と同じ吉法師と名付けた。


「言い忘れてましたが、義姉上からの手紙は母上も目を通されてましたので」

「何だと!」


 土田御前の名前を聞いた信長は顔色が一層悪くなって汗も搔き始めた


「挨拶される時は相応の覚悟を」

「兄である俺を売ったのか?」

「無茶苦茶な事を言わないで下さいよ。私と直虎が手紙を読んでいる最中に母上が突然部屋に来られたのです。見られても仕方ない状況じゃないですか」

「拙い。非常に拙いぞ…」


 信長にとって土田御前は顔を合わせなくない程苦手であり、帰蝶と同じくらい怖い存在でもある。


「だから声が大きいですって」

「千早丸が目を覚ましてしまいましたね」


 二人のやり取りを聞いて笑っていた直虎だったが、千早丸が目を覚まして泣き始めたのであやしながら部屋の外に出ていった。


「諦めて母上に挨拶して下さい。私も一緒に行きますから」

「許してくれ。顔を合わせたくない…」


 信行に促された信長は渋々土田御前に挨拶した。予想通り帰蝶から送られた手紙の件を持ち出されて長時間に渡り説教されるハメになり凹んだまま那古野に帰っていった。


*****


 信長が失意の内に那古屋城へ戻った数日後の夜遅くに信行は取次役の兵士に起こされた。


「目付衆の千賀地保俊様より至急の要件があるとの事です」

「こちらへ案内するように」


 千賀地保俊は出先から直接鳴海城に来たらしく土埃で着衣が汚れていた。


「夜分に申し訳ございません」

「構わない。要件を聞かせてもらおう」

「龍泉寺城の織田信広が斎藤義龍と対面しておりました」

「信広兄者も斎藤義龍に靡いたか」


 千賀地保俊は小さく頷いた。斎藤義龍が織田信広に遣いを送った事で対面が実現した。二人は国境の山中で偶然出くわした体を取って話し合いを行った。


 斎藤義龍と織田信広はお互い当主に対して不満以上の感情を抱いているという点と排除に動きたいが動けない状況という共通点があった。


 斎藤義龍は不満分子を糾合した上で稲葉山城に居る斎藤利政を始末する事を画策していた。しかし斎藤利政には娘婿の信長が居るので安易に動けば信長から背後を攻められる可能性があった。


 織田信広の方は信長と信行による粛清から逃れた者を召し抱えて体制の強化に勤めていたが、反旗を翻せば信長だけでなく信行からも攻められて大敗する可能性が高かった。


 斎藤義龍は内密に今川家と交流している事から次の内容で動けば斎藤利政と織田信長は共倒れすると織田信広に伝えて決起を促した。斎藤義龍が斎藤利政に、織田信広が信長に、今川が信行にそれぞれ一斉に動けば応援に向かう事は困難なので決起が成功する可能性が高い。万が一の時は斎藤家で織田信広の身柄は必ず保護する事も付け加えた。


 織田信広は直ぐに同意したので斎藤義龍はその場で約定を書いて互いに取り交わすと共に今川義元に尾張侵攻を促す遣いを出した。


「今川義元が動けば拙い事になる。誰か」

「何でしょうか?」

「内藤勝介、佐久間盛重、柴田勝家、佐久間盛次、千秋季忠を直ぐに登城させてくれ」

「心得えました」


*****


 信行から呼び出された五人は慌ただしく登城した。信行から話を聞いて驚く者は居らず、起こるべくして起きたという様子だった。


「我慢出来なかったようですな」

「まあ、そんなところだろうね」

「我らの立場なら分家すれば事が済む話ですが」


 佐久間盛次が言うように家臣であるなら佐久間家や千秋家のように兄弟それぞれに俸禄を与えれば済む話である。織田信広の場合は当主信長の兄弟という立場なので事は簡単に済む話ではない。


「いずれにせよ尾張拯様が我々と対立する道を選んだからには対処しなければなりません」

「兄上の耳にも入っていると思うけど斎藤義龍への対応があるから信広兄者に構っている暇はないよ」

「となれば…」

「僕が動くしか無いだろうね」


 信長は対美濃の指揮を執る立場から動けず、一族の重鎮である信光も清州城という要衝を任されているので動きにくい。となれば状況が比較的落ち着いている信行しか残っていなかった。


「信広兄者は謀反人だ。一門衆である以上死罪は免れない」

「確かに。殺りますか?」

「そのつもりだよ。兄上はああ見えて身内には甘いからね。追放処分で済ませるかもしれない」

「治部少丞様が敢えて汚れ役を引き受けると?」

「恨みや恐怖を抱かれるのは私だけで良いと思っている」


 当主である信長が動けば今後の統治に影響するという考えから泥を被る役目は自分が引き受けるのが当然の役目であると信行は思っていた。


「失敗は許されないが相手に警戒されると殺りにくい。となれば…」

「某がお供致します。相手方は我々が配下に居る事は知りません」

「だね。季忠には護衛役として連れて行くけど城内で待機してもらう」

「荒事になったら出番ですね?」

「そういう事。残った者は今川への対応をしてもらうよ」


 信行は段取りを済ませると日が明けると共に鳴海城を出発して龍泉寺城に向かった。

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