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旅に出て

 補助マスクの新造には二日かかるらしい。

 そのうちは身体を休め、マスクの完成が済み次第すぐに魔法使いの館を出られるようにしておく。


「これさえなけりゃすぐにでも飛び出せたんだけれどもなあ」

「文句なら俺じゃなく魔王に言えよ」

「言いに行くんだよ。……なんて言おう?」

「なんで俺の身体なんて串刺しにしたんだよ〜とか?」

「ド直球すぎんぜ。もっとさあ、捻りとか加えようぜ! 俺ユーモアあふれてるだろ。ほら、だから『子供を無理やり寝かすなよ』とか」

「何を伝えたいのか一切伝わらん」

「そうかい? そうかぁ……」


 そういうくだらない話ばかりが捗ってしまって、マスクが完成する。以前の物よりはるかに大型で、顔のほとんどを覆いつくしてしまう。いわくわざと、らしい。


「アレッ、こいつアベル・タフか? って思ってマスク外したら完全に別人だなんて、それって完全に警察とかのマークから外れると思わない?」

「クレバーガイ! お前めっちゃ天才! これで勝てる!」

「ハハ。勝利ばかり見えていると勝利はお前に訪れんよ。油断だけはするなよ。補助マスクつけてるヤツなんて少ないんだから。誰に渡されたものかって言われたらちゃんと俺の名前出せよ」

「りょーかーい! じゃあバイバーイ! また今生会えたら酒でも飲もうぜ! 俺の好きなヤツ用意しておけよ! 若い酒な! 年食った酒が好きなヤツなんて全員凶悪犯罪者だからな」

「テメェで用意しろや」


 旅は再開する。


 大きなバッタのような補助マスクのフチを撫でながら「かっけぇな……」「ふふふ、かっけぇや」と何度か呟いているところを見ると、本気で気に入っているらしい。


 その頃、勇者パーティーではまるで親でも死んだ時のような暗い空気が続いていた。ふとエルフの魔法使いシェリー・ガミーズが放つ。


「おとなしく連れて行っていれば、あのクソボケも失踪なんてしなかったんじゃないかな。…………補助マスクだって使用期限近いでしょ、吸気口の取り替えとかしてからとか、新しいマスク渡すとかしておいてからさ」

「ぜんぶ病院でやってもらうつもりで話を進めてたから……」

「じゃあ『解雇』とかじゃなくて『補助マスク云々』で話を進めておくべきだったよね。私言ったよね、『あんたがタフ坊と二人きりになっね達者に喋れる訳がないから、私も一緒にいてあげようか』って」

「……二人きりになりたかった」

「そっかあ……」


 いわく一目惚れだったらしい。


 飄々とした性格のあの男の金色の髪が青い瞳を隠す時、「この男と付き合えたら幸せなんだろうな」と思ったのだとか。


 それからすぐにある事件が起こった。


 勇者パーティーが滞在していた待ちに魔王軍の連中がやってきて、ドラッヘたちはみんや未熟で怪我を負って動けなくなってしまった。そんな時、誰よりも頑張って街を守っていた。


 つねに笑顔を浮かべて、軽口を叩きながら、振るう拳は勇ましい。自分がどれだけ傷付こうとも決して「誰かを守る」というのを投げ出さない。


 後ろで縛った長い髪も、人を小馬鹿にしたような眉間のシワも上がった口角も、ぜんぶ好きになってしまった。


「あんた、うぶすぎたんだね」

「……」

「ヒステリックババア臭い説教は終わりにしようね。実際問題あんまり気にすることはないと思うよ。タフ坊は名に違わないくらいめっちゃタフだし」

「アベルのタフは……身体じゃなくて心だよ」

「しってるよ。だからでしょ、あのクソボケは自分だけの旅を始めちゃったんだ」

「マスク、どうしよう」

「『知り合いに技師がいる』って言ってたから、その人に会いに行っていたりするでしょう? いつまでも落ち込んでたらみんな不安になっちゃう。ほら、ご飯食べて楽観視。あのバカアホも言ってたでしょ。ご飯を食べてみんなハッピー♪」

「音程がちがう……」

「ああそう」


 面倒くさいなぁどいつもこいつも、とシェリーはドラッヘの頭を小突きながら、外のメンバーにも飯を食うように催促する。


 変に長生きだと母親役を押し付けられてしまう。

尊さ界隈ってなんだよ

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