〜〜 自転車 〜〜
「なんだよ浩太!せっかくのカレー買わねーのかよ?」
「ああ、なんか無性にパンが食べたくてさ、後、甘いものが食べたい気分で」
「お前甘いもの、あんまり好きじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、病院食の影響かな?」
真司を無断で実験に使うのは申し訳ないと思ったが
親とも顔見知りで、何より信頼できる奴が良かった。
最初にチョコレートチューブを試した。
いくつかの質問を真司に投掛けたが、普通の会話だ
反応はない
これは少し予想していた。
なにも根拠はなかったが、次は蜂蜜を多めにパンに付けた
飲み込んでから30秒程経った頃・・
(う・・のかぁ・・ん・・・レー・・・も・・)
(きた!! やっぱり空耳ではない!!真司の声に間違いない!!)
ーー次は、パンよりも多くの蜂蜜を飲み込んだ
「おいおい!甘いものが食べたい言っても、それはさすがにキツイだろ!!」
(こいつ大丈夫か?入院して変になったのか?)
(今度はハッキリ聞こえる!!)
「びっくりするよな? 変に思われても仕方ないなこれじゃ・・・」
笑いながら様子を探った
「えっ!・・・いや・・別に変とは思ってねーよ!!」
明らかに動揺した真司を観察した。
「入院した時、お前も見舞いに来てくれたけど、バド部の茜ちゃんも見舞いに来てくれてさ」
「マジかよ!!しかも二人で出かけた最中に倒れたんだろ⁉」
(茜ちゃんと何があったんだよ・・付き合ってるのか?)
「まさか付き合ってるのかと?思ってる?」
「思ってねーよ!!あの茜ちゃんが思えなんかと!!」
(おいおい・・・なんだよ・・・・・でもなんで二人で?)
「パスモ・・・茜ちゃんがチャージ忘れてさ・・・お礼にって喫茶店に行っただけだよ」
「そうだったんだ・・でもそれだけで二人で出かけるって凄いよ!!」
(うわーーーーー羨ましい!!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
実験は成功した。
一度掴んだコツは、体が覚えた。
あれから、何度か実験を繰り返した。
①能力発同時に蜂蜜が無くても集中力次第で発動可能。
② ①の場合の発動は、発動後、安全を考慮して10分以内に蜂蜜を摂取する
③蜂蜜を2.5mgのスティックで発動可能時間は30分程度
④蜂蜜の純度にも影響が出る
⑤現在の所、一日に能力発動する時間は、合計で5時間程度
まだ不安定な能力で、勝手に発動してしまうこともあり、10分を過ぎたあたりから、軽いめまいを起こした。
3度目の入院は避けたい
しかも、能力を自覚してしまった以上、この能力を隠しておきたいと思ったからだ
学校で改めて茜に会い、今度は俺が御礼をしたいと声をかけた。
快く応じてくれた事に嬉しさは当然だったが、不安も感じた。
土曜の午前練習が終わったあと
「昼飯一緒にどう?」という簡単な誘いだった。
ステッィクを、念のため5本ポケットに忍ばせて、待ち合わせのショッピングモールに向かった。