~~ ガンマ ~~
遠くに救急車のサイレンが聞こえてくる・・・
体が動かない・・
(学生証あるかな?)(君はこの子の親の連絡先わかる?)
(バイタルは異常ないです)(アレルギーがあるか聞いてました?)
(え・・・わか・・りません・・)・・・茜ちゃん?泣いている?
(この子のスマホのロック・・・顔認証できるかな?)
(目が開いてないとダメですよ!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(開きました!)
(両親の連絡先探して!)
これらは耳なのかどうなのかわからないが、生田には入っていた。
病院に搬送され、2日後に目を覚ました。
(またあの時と同じ風景だな・・・懐かしいな・・・)
タイムリープしたような感覚だ。
今度はあまり焦りもなく、ナースコールを押した。
「生田さん!先生を呼びますので!気分はどうですか?」
「大丈夫です、お願いします」冷静だった。
自分で過去をなぞるように、医師が来るまでの時間で、手足の状態を確かめる。
指先から足先までの確認が終わった後
「生田さん、意識戻ったみたいですね、医師の三宮と申します」
非常に若く見える体育会系のような雰囲気の医師は以前よりも更に安心して緊張どころかリラックスしていたくらいだった。
「宜しくお願いします」
「意識がない間、色々な検査は行いました、中学生の頃、事故で当院へ入院してたんですね」
「はい、あれからなにもなく過ごしていましたが、今回は何が起きたのかわかりません」
「検査の結果も、特に異状は見られませんでした、詳しくは御両親が来てから説明しますね。」
2回目の入院でもう慣れた感じだ。
1時間もしないうちに父と母は病院に到着した。
「浩太大丈夫⁈」「浩ちゃん・・良かった・・・」
これもフラッシュバックだ。
歩ける自信はあったが、無理やりと言っていいほどの勧めで車椅子に座らされ
両親と共に、別室に案内された。
部屋の中にはモニターとパソコンしかないような部屋だ、重ねられた椅子を人数分だけ差し出され説明が始まった。
三宮医師がパソコンを操作し始めると、三つある画面が全て映し出された。
「これがMRIで、そしてCT、心電図・・・採血結果・・・脳波・・になるんですが・・いずれも異常はない・・・ということなんです・・ですけど・・逆に言うと、じゃぁなんでこんな事が起きたのか?という不思議な気持ちと不安がありますよね?」
両親はそのまま不安の顔をしていたが、俺は・・・
(あれが原因か・・・?言うべきか?)悩んでいた。
三宮医師の説明が続く
「強いて言えば、入院時にとった脳波なんですけど・・この部分わかりますか?」
マウスのカーソルをクルクル回し異常を示す。
「ここの波形を通常の波形と比べると通常よりも強く出ているような・・?極僅かですけど・・でもこれが原因とは思えないんですよね」
三宮医師は質問を続ける
「喫茶店では何か飲んだり食べたりしましたか?コーヒーとか...カフェインとかの刺激物だったり…」
......
ぼんやりとした記憶を探る
「コーヒーは苦手で、カフェオレもあんまり好きじゃないくらいです、シェイクがあったので、バナナシェイクを注文しました。甘党ではないですけど、それは凄く美味しく感じて飲むペースは早かったかもしれません..こんな事、関係ないですよね?」
話し終えた後に恥ずかしくなった。
三宮医師も首を傾げていた。
父が沈黙の中
「またこんな事が起きる事ってあるのでしょか?」
三宮医師の首が逆側に傾いただけだった。