異形事変
それは突然だった。
数十分前まではそこはただの東京駅の広場をサラリーマンたちが歩くという日常風景だった。
しかし、とある黒い「穴」のようなものが現れてその日常は崩れ去った。
その穴からは謎の怪物、後に「異形」と呼ばれる生物が人々を襲い、食い散らかした。
警視庁や横須賀の自衛隊やアメリカ軍は怪物たちに対し攻撃を開始。普通だったら勝てるはずだった。そう、それが普通だったら。
その怪物は銃撃をものともせず、逆に火を吐いて攻撃してくる始末。幸い、自衛隊やアメリカ軍には被害はなかったが、警官隊は壊滅状態。さらに複数の民間人が巻き込まれる痛ましい結果となった。
そして───
「あぁ、くそっ…」
警官隊の唯一の生き残り、「佐藤 みずき」巡査は物陰に隠れながら悪態をついていた。
「何がどうなってんだよ…謎の怪物の討伐に駆り出されたかと思えばなんか火を吹いてきて同僚たちは全滅…あぁ、もうっ!」
みずき巡査は支給のニューナンブM60を持ちつつ、冷や汗を垂らしていた。
「MP5だなんだ持ってた特殊部隊もあっさり消えちまった…一体これからどうすればいいんだy
その時巡査は背後に嫌な気配を感じてすぐに振り向いた。
そこには「怪物」がいた。
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
ダンダンダンダンダンッ!
その瞬間、巡査の理性は吹き飛び、ニューナンブを乱射していた。
「こっちに、こっちに来るなぁっこの化け物!!」
とにかく乱射しまくっていた。弾が切れたら震える手でリロードし、何発も何発も撃った。だが、一発も効かず、残り弾薬はポーチにある一発のみとなった。
「あぁ、そんな…」
諦めかけたその時、視界の端に何かが写った。
それは、古めかしい札だった。それも何かを封印するようなものだ。それを見た瞬間、なぜか巡査はそれを本能的に掴み、飲み込んでいた。後々考えてもこの行動は謎だった。だが、正解だった。
──何だこの感覚は!?
体の内側からの焼けるような熱が湧き出てくる。焼き死にそうなほど苦しかったが、意識をなんとか保ち、最後の一発をニューナンブに込め、構える。
───今度こそは、殺れる!
引き金を引いた。ハンマーが撃鉄を叩き、弾薬の中にある火薬を目覚めさせる。弾丸が銃身を通り抜けようとした時、変化はおきた。銃身の周りを半透明の魔法陣のような幾何学的な模様が覆った。弾丸は銃口を飛び出るときにはもともとの弾薬の色ではなく、うっすら紫色に光って怪物に飛んでいった。
弾丸は怪物の頭に飛び込んだ。
弾丸は怪物の頭を貫き、頭から黒い血のようなものを垂らしながら倒れ、動かなくなった。
「はあっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、くっそ…」
地面に倒れ、空を仰ぐ。
くたばれ、怪物野郎。