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【338】最終確認

 ガジット村を通過したルース達は、それから更に1週間をかけてやっと国の北西部にある山の麓に辿り着いた。

 今はもう陽も傾き辺りは暗くなっている為、今日はこの麓で野営をし、明日この山を登って行く予定だ。


 というのもその山は、道という道もなくその上足場も悪い。その地の殆どに大きな岩が露出して平らな場所は余りなく、休憩するのにも一苦労するはず。前回は、ソフィーが苦労して登っていた事を思い出すルースだった。


 そしてこの山を越えれば、目的の魔巣山(まそうざん)がある。


 その為その日の夜には、先日ルースが思い出していた魔巣山の麓の事を皆に話した。目の前の山は一日あれば越える事ができ、明日には目的地がハッキリと見えてくるはずなのだ。

 そこで何も知らなければ、魔巣山を囲む闇に気付き難儀する事にもなる。だがこうして事前に話しておけば、到着する頃には各々ができる事を考え最善策が取れるだろうという事だ。


 ルースは出来るだけ詳しく、前回に見た魔巣山の情報を伝えていった。


「では、その橋が唯一の足掛かりか…」

「橋と言っても、これ位のだだの丸太です。前回は、フェルの運動神経の良さを活かして最初に渡ってもらいましたが、今回も同じ状況であると想定して、他の方法も考えようかと思っています」

 ルースは身振り手振りを交え、そこにあるはずの物の事を伝えていった。


「丸太で、8mの距離か…」

 キースは渋い顔を作り、顎に手を当てている。

「ええ。以前はキースが、フェルの周りに下降気流(ダウンバースト)を送り続け、下からの風を相殺していたはずです」


 ルースの話に、皆は一様に考え込む。


「あ、飛んでもらって上から渡してもらうのは?」

 ルースの記憶には居なかったシュバルツを見て、デュオが「どうかな?」と問いかけた。

『それは無理だな』

 それに対し、シュバルツはデュオに即答する。

「え?無理なの?シュバルツ」

 ソフィーも疑問を投げかけるが、シュバルツは丸い目を瞬いてジッとソフィーを見つめた。

『あそこは一度試したが、下からの風に煽られて前に進めない』


 シュバルツも遥か昔に一度、魔巣山へ行った事があるのだ。その際にはいくら高く飛び立っても、その風はシュバルツを追いかけるように吹き上げていたという。


「ある意味、風の障壁だな…」

 キースはシュバルツに向け、考えを伝えた。

『そういう事だ。風を消さねば、空からも入れぬ場所だ』


 シュバルツの視点から言えば、吹き上げる風は魔巣山を隔離する為にあるようなもの。

 それは本当はどちらを隔離する為のものかは分からないが、その障壁がある限り、滅多に人も魔物も出入りする事は出来ないと思われる。余程の覚悟がなければ、そこは越えられぬという事だ。


「では、前回同様で行くか?」

「あ、俺が先行って事だな?」

 フェルはキースの問いに、特に身構えた様子もなくそれならそれでいいと言う。

「やってみなきゃ、何が良いのか分かんないもんな。俺ができる事なら俺がやる」


 深刻な様子も見せずに言うフェルに、ある意味では頼もしくも感じるが、そこでソフィーが心配そうに口を開いた。

「フェル、ほんとに解ってるの?危ないのよ?」

「ああ。でも前の俺も出来てたんだろう?だったら今の俺が出来ない訳がない。そこは心配すんなって」

 鼻の下を擦りつつ言うフェルに、皆はその時までには何か方法を考えておこうと、口には出さず心に誓うのであった。



「…それでは最後に、皆のステータスを確認しましょう。今の自分を知る事も大切ですし、本当にこれで最後になると思います」


 ルースはそう言って真摯な眼差しを向ける。

 前回のステータス確認は勇者の儀の前日で、その際にソフィーはいなかった為、まずはそのソフィーから始める事になった。


 ルースはソフィーの手を取って、深く目を瞑る。

~~~~~~~

『ステータス』

 名前:ソフィア

 年齢:19歳  (前回:18歳)

 性別:女

 種族:人族

 職業(ジョブ):真聖女

 レベル:100  (前回:66)

 体力値:576  (前回:328)

 知力値:720  (前回:411)

 魔力値:817  (前回:525)

 経験値:572  (前回:293)

 耐久値:366  (前回:276)

 筋力値:345  (前回:208)

 速度値:487  (前回:394)

 スキル:聖魂・調和 (前回:聖魂)

 称号:魂の聖女

~~~~~~~


 ソフィーは約一年振りのステータス確認であり、聖女のレベルが最高値に到達していた。その為か“真”という文字が付いて称号も出現し、スキルにも“調和”が増えている。しかしそのスキルは聖獣達も知らないらしく、今までの聖女でも出た事はないという。

 その謎のスキルは現状を照らし合わせた上で、ソフィーがその意味を考えておくと言って話を閉じる。


 そしてルースは、次にキースの手を取った。

~~~~~~~

『ステータス』

 名前:キリウス

 年齢:22歳  (前回:22歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):賢者

 レベル:49  (前回:12)

 体力値:684  (前回:597)

 知力値:938  (前回:841)

 魔力値:891  (前回:712)

 経験値:637  (前回:527)

 耐久値:429  (前回:306)

 筋力値:405  (前回:359)

 速度値:417  (前回:363)

 スキル:乗算(ジナシー)・融合 (前回:乗算(ジナシー)

 称号:勇者の賢哲

~~~~~~~


 約4か月振りの確認ではあるが、キースは初めてステータス確認をした一年前よりも大幅に成長を遂げている。その要因がスキルの“乗算”であろうとは、ルースの推測である。

 乗算は元々、ルースの見立てでは汎用性があると思われた。その為魔法の発動時にも使える他、ルースのスキルの影響を受けて更に、“乗算”が影響したステータス値となったと考えられた。それに今回は“融合”が出ている事で、一層の効果が期待された。これが一握りしかいない“賢者”になれる素質なのであろうと、密かにルースは思った。


 次はデュオだ。

~~~~~~~

『ステータス』

 名前:デュオーニ

 年齢:19歳  (前回:19歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):魔弓士

 レベル:89   (前回:54)

 体力値:701  (前回:566)

 知力値:692  (前回:643)

 魔力値:495  (前回:380)

 経験値:509  (前回:411)

 耐久値:467  (前回:349)

 筋力値:478  (前回:424)

 速度値:455  (前回:385)

 スキル:集中・斥候・必中 (前回:集中・斥候)

 称号:勇者の射手

~~~~~~~


 デュオのステータス値はキースに比べると緩やかに感じるが、しかし彼はまだ19歳。それを考えればルース達が19歳の時よりも成長が早いのだ。それは元々彼が努力家である事も大きな要因だが、本人がこの結果に残念がっている事は、もっと成長できる証とも言えるだろう。

 そしてデュオにも“必中”という新しいスキルも出現しており、それは文字通り狙った場所は外さないのだと推測できるものであった。


 次はフェル。

~~~~~~~

『ステータス』

 名前:フェルゼン

 年齢:20歳  (前回:20歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):聖騎士

 レベル:38  (前回:8)

 体力値:954  (前回:888)

 知力値:461  (前回:392)

 魔力値:483  (前回:455)

 経験値:796  (前回:653)

 耐久値:728  (前回:508)

 筋力値:839  (前回:693)

 速度値:499  (前回:414)

 スキル:加護【月の雫(ムーンドロップ)稲妻斬撃ライトニングスラッシュ】・威圧・身体強化・硬化

(前回:加護【月の雫(ムーンドロップ)稲妻斬撃ライトニングスラッシュ】・威圧・身体強化)

 称号:勇者の護り

~~~~~~~


 フェルも順調にステータス値を伸ばしており、彼の場合は肉体的なものの伸びが著しい。魔法も頑張ってはいるが、やはり魔法は後発で使い始めた為か馴染みが薄いようで、余り魔法に頼ることなく戦闘をしている為の結果であろう。

 その為か、魔法に付随する加護のスキルが増えていないと、フェルはガクリと肩を落としていた。


 そうして最後に、自分のステータスを読み上げるルース。

~~~~~~~

『ステータス』

 名前:ルース

 年齢:20歳  (前回:20歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):魔剣士

 レベル:69  (前回:38)

 体力値:838  (前回:749)

 知力値:814  (前回:726)

 魔力値:796  (前回:683)

 経験値:828  (前回:691)

 耐久値:501  (前回:467)

 筋力値:585  (前回:514)

 速度値:604  (前回:539)

 スキル:倍速・波及・叡知・雲外蒼天・神風龍(ウインドドラゴン)・追憶の漂流者

(前回:倍速・波及・叡知・雲外蒼天・神風龍(ウインドドラゴン)

 称号:勇者

~~~~~~~


「追憶の漂流者…?」

 ルースのステータスを聞いたソフィーが、新たに現れたスキルを口にする。

「随分と御大層な名前のスキルだな…」

「漂う思い出?…記憶に漂う?」

 フェルとデュオも、ルースのスキルについて首を捻った。


「多分、記憶がらみなんだろう。ルースらしいと言えばルースらしいな」

『そういう事だ』

 そんな中でも、キースとシュバルツは納得した様に言葉を落とす。


 こうして改めて視たステータスは、ルシアスの時のものとは大きく異なっていると知る。

 以前の記憶にあるスキルは、“身体強化”や“読唇”そして剣技に関するものといった直接的なものばかりであった。

 今回ルースの得たスキルは、ルースが旅してきた中でしか得られなかったスキルであろうと、ルースはそう解釈をする。“追憶の漂流者”にしても、それは時間の精霊と出逢った事で得たスキルではないかと思えるからだ。

 しかしこの考えはルースだけが解っていれば良い事であると、ルースがその違いを口にする事はなかったのだった。


 ルースが自身の思考に入っている間も各々のステータスへの話は続いていたが、その後はしっかり休息を取れるように早めの就寝となった。


 そうして翌朝、薄霧が漂う森の中が少しずつ明るくなる頃、ルース達は出発の準備を終え、山の麓を後にしたのである。


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