【188】久々のクエストを
ここからは再び、ルース達視点となります。
先日、デュオーニのパーティ登録をし忘れていた事に気付き、「171話ー澄んだ音色」でパーティ登録をしたという一文を追加しております。
ご連絡が遅くなりまして申し訳ございません。ですので、ここでは既にパーティ加入している事になっております。事後報告となりますが、ご了承の程よろしくお願いいたします。
その頃ルース達4人はルカルトの隣町ミントで、ギルドの宿を取って滞在していた。
流石に肌寒い季節となり、雪もチラホラと振り出した事で森の中の野宿を諦め、宿に泊まることにしたのだ。
このミントの町では隣町であるルカルトの情報を得るつもりだったが、誰に聞かずともそこかしこでルカルトの話をする者達がいる為、それらを耳にすればある程度の情報はすぐに集まってきた。
まず、ルカルトは港町で、船が沢山あるというものだ。
ルース達の知る船は湖に浮かぶ舟が関の山だが、海に浮かぶものはもっと大きく、沢山の荷物や人を乗せる事が出来るとの事であった。
そしてその海には色々な生き物が住み、海だけに生息する魔物もいるのだという。
「え?魔物がいるんだったら、海に入って泳いじゃいけないのか?」
フェルは初めての海で“泳ぐ“という行為をしてみたいらしく、それも含め海を楽しみにしていた様だ。
「そんな事はないと思うよ?」
と、デュオは地元の湖でも、夏場には泳いでいる人達を見ていた為、多分大丈夫だろうと言ったのだ。
「そもそもフェルは、海に入るつもりなのですか?」
「まあ、折角だから泳いでみたいと思ってる」
ヘヘっと鼻の下を擦りながら、フェルは嬉しそうに言った。
「ねえフェル。こんな雪が降る中で、海に入るのは止めた方が良いんじゃないの?」
ソフィーの冷静な指摘に、目を見開いたフェルが固まった。
「え?その顔は何?」
デュオは首を傾げてフェルに聞く。
「ふふ。フェルは今が冬である事を失念していた、という顔ですよ」
そのフェルに代わり、ルースがその表情から的確にデュオへ解説した。
「フェル……」
デュオはルースの答えを聞き、残念な者を見る目でフェルを見つめた。
デュオが加入してからも、フェルはいつもこの様に話題を提供してくれるため、年下であるデュオもすぐに皆へと気安い表情を見せてくれるようになり、皆の距離も近くなって良い事であると、ルースは笑みを浮かべて頷いたのであった。
そう考えているルースも少々ずれているのだが、それを指摘してくれる者は誰もいないのである。
そして他の情報と言えば、ギルド内でも一番話題にのぼっているものだ。
それは、ルカルトには小さなダンジョンがあるという話で、これにはルース達皆が喜び、行ってみたいという話になった。
「やっとダンジョンに行けるのか。楽しみだな」
「え?やっとってどういう事?」
デュオはフェルの言う意味が分からずに、首を傾げた。
そういえばデイラングの町での事は、デュオには伝えていなかったと思い至り、その町で新しいダンジョンが発見された時の事をかいつまんで説明すれば、デュオは目を輝かせて話を聞き、その場に居合わせたかったと残念がっていた。
「新しいダンジョンの噂は、メイフィールドでも一時期話題になったよ。いいなぁ、そんな機会滅多にないよね」
「フェルのお気楽な行動ゆえ、の事でしたけどね」
「なんだよルース、俺のお陰で新たなダンジョンが見付かったんだから、もう少し何かに包んで言ってくれよ…」
「でも、本当にあの時はビックリしたのよ?崩れた壁に、フェルが埋まってしまったんだから…」
「う゛…たしかに。ごめいわくをおかけしました…」
ソフィーにそう言われれば、治癒してももらったフェルに返す言葉はないのだ。
「あはは。フェルはソフィーに頭が上がらないね。まるでどこかの夫婦でも見てるようだよ」
デュオが冗談めかして例えれば、ソフィーとフェルの顔が赤くなった。
「いや…夫婦ってなぁ…」
「そっそうよ…例えがおかしいわ?」
と、なぜか2人共しどろもどろになり、ルースはそんな2人を眩しいものでも見ている様に、目を細めて見つめた。
ルースは何となくだが、フェルはソフィーと出会った時にはソフィーを気に入っていると感じており、いつもソフィーから色々と突っ込まれてはいるが、それも言葉遊びとして楽しんでいるように見えた。
そしてソフィーもそうやって話す会話を楽しんでいる様で、元々面倒見の良いソフィーはなんだかんだ、いつもフェルを気に掛けている様に見えていた。
しかしここでそれを言うのは野暮というものだと、ルースは何も気付かぬ振りで3人の会話を聞いていたのである。
そんな打ち合わせの様な雑談をしつつ、今回のミントの町ではどうせならと、久々にクエストを受けようという話になった。そのついでに、もっと詳細な情報を仕入れようという事である。
そうして宿で一泊した次の朝、ルース達は冒険者ギルドに顔を出す。
昨日は宿入りの手続きの際ルカルトの町の情報を聞く為、ギルド職員と少し話した位だった。その時は冒険者ギルドの中は人影もまばらで、こうして朝の時間にギルドに来れば、そこそこの人数の冒険者がいるのだと分かる。
その彼らに交じり、ルース達はそれとなく掲示板の方へ向かった。
今はネージュとシュバルツには部屋で待機してもらっており、彼らとは、受付が済んでから再び合流する予定にしていた。
余り大きくない冒険者ギルドが混んでいれば、それこそ獣を連れて入れば目立ってしまうからだ。そしてやはり混み合うギルドには、連れて来なくて正解であったとルースは思った。
こうして掲示板を見て行けば、ミントの町のクエストは商人の護衛が多いように感じた。
それはC級冒険者のクエストが主となっており、隣町のルカルトまでとルース達が来た方角にあったムロストという町の名前もある。
だが全て往復となっている為、ルカルトまでのクエストを受けたとしても、再び戻ってくるのでは少々効率が悪い。
「せめて片道だったらなぁ」
フェルもその辺りのクエストを見ていた様で、そう言いながら渋い顔を作っている。
あと目についたものは、A級クエストの“ロック鳥“や“ワイバーン“等の素材集めで、ルース達には余り馴染みのない魔物の名前がある。
「マンドレイクって何?」
デュオが1枚のクエストを覗き込みながら皆に尋ねるも、ルースはわからず首を振る。
「ん?」
と声を出したフェルが、眉間にシワを寄せて考え込んだ。
「フェル、知ってるの?」
その表情を見て、ソフィーがフェルに聞いてみる。
「ん~。どこかで聞いた事があったかも…」
とは言え、ルースが知らないのであればと、ソフィーは「図書館?」と尋ねた。
「ああ、そうだった。図書館で見たんだ」
フェルは図書館へ行くと、文字を読むより図鑑を見ている方が多いので、きっとそこで見た名前なのだろう。
「確か…植物の魔物だったか…」
「え?植物なのにB級クエストなの?」
そこでデュオが、このクエストはB級だよと指をさした。
「という事は、少々特殊な魔物という事でしょうか…」
「「「………」」」
ルースに答えるものは、誰もいなかった。
「じゃあ、受付で聞いてみる?」
デュオはそれが気になったようで、確認してみようと言う。
「そうですね。少々気にもなりますし、確認するだけでも聞いてみましょう」
それでフェルとソフィーも同意すれば、そのクエストを剥がして受付まで向かって行った。
受付の順番を待って職員の前に進み出ると、ルースが職員に尋ねてみる。
「あの、こちらのクエストに書いてある“マンドレイク“の事を、教えていただきたいのですが」
その質問に、職員は快く対応してくれた。
「はい。ああ、こちらは薬師のクエストですね。そのマンドレイクという魔物は植物の魔物でして、森の中に生息しています。いつも本体は土の中に埋まり、葉の部分だけを出していますので、ほかの植物と見分けるのにもコツがいるのです。葉の特徴は、緑が濃く肉厚で形状はこちらの資料の様な形です」
そう言って職員が見せてくれた絵は、どこにでもありそうな葉の形だった。
「マンドレイクはまず見付けるのが難しいのと、声が独特な事、そして逃げ出す恐れもある為、せっかく見つけても気を抜けば、走って逃げてしまうのです。あ、物理攻撃はしてきませんので、そこはご安心ください」
「はい……」
ルース達は説明を聞けば聞くほど、想像できない物になっていく。
「今の季節だと眠っている事が多いので、この魔物を集めるのが比較的ラクな時期でして、この様にクエストが出るようになります」
一旦説明を聞いてみたが、さてどうしようかと4人は顔を見合わせた。
「一度、受けてみますか?」
「そうね、興味はあるわね…」
今の説明でソフィーは興味を持ったらしいが、ルース達男性陣は全く興味がわかなかった。
しかし折角なので、ここはクエストを受けてみる事にしてそのまま手続きを済ませると、ネージュ達の待つ宿へと戻った。
そしてネージュ達にマンドレイクのクエストを受けたと話せば、表情の乏しいネージュが苦虫を噛み潰したように渋い顔で、頭を振ったのである。
いつも拙作をお読み下さり、ありがとうございます。
重ねて誤字報告もお礼申し上げます。<(_ _)>
▼ここで読者の皆様へご連絡です。
ここのところ筆者の仕事の都合もあり、執筆が滞り気味でお話しのストックが枯渇しております。
尚且つ、月末ごろには数日に渡り更新できない予定となっております。
なるべく更新していきたいとは思っておりますが、その様に毎日の更新が滞る可能性があります為、こちらでご連絡をさせていただきました。
更新が急にできなくなる事もございますが、その場合は活動報告でご連絡をさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。




