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【147】深夜の報告1

 こうして色々とあった今日一日の、まずはルース自身の事を2人へ話すことにした。


 丁度もらったグレイプ2房は、同じに見えてひとつは種ありでもうひとつは種なしだと、それを受け取た時にルースは気付いていたからだった。

「両方とも同じ地域で作られた果物で品種も同じものですが、種の有無だけが違うようですね」

 そう言って、ルースは目の前にある果物の説明をした。


「へぇ…同じ地域で作っても、種ありと種なしがあるのは面白いわね」

「それより、何でルースはそんな事までわかるんだ?」

「フェル、私達がマジックバッグを見ていた時に、ルースが言っていた事を覚えている?」

 ソフィーに聞かれて少し考え込んだフェルは、「そういえば」とやっと何かに気付いた様だった。


「今日は色々あって忘れてた」

「そうですね。私も先程、荷物の入れ替えの後で落ち着いたらお話ししようかと思っていたのですが、少々遅くなってしまいました。では、それをこれからお話ししますね」

 ルースはそこから、今日自分に起こった事を話し始めた。


 1件目の道具屋でフェルからバッグを受け取った時に数字や文字が見えた事、初めはこの文字に確証が持てなかったが何度か見て行く内に、それはその物の情報を示しているのだとはっきり理解したのだと説明した。


「それであの店は良くないって言ったのか」

「はい。その事を2人へお話しするつもりでしたが、何も証明が出来ないので、どのようにお伝えしようかと考えていました。そこへ果物屋さんから“種あり“と“種なし“のグレイプを頂いたので、こういう形でお話しさせていただきました」

「そうだったのね。確かに私達には直接視る事は出来ないから、いきなり言われてもちょっと信じられなかったかも知れないわね」

「俺は何もなくても信じるけどな?ただちょっと、本当かな?とは思うけど」

 フェルは信じると言いつつ、疑うけどなと言う。

 そこはフェルらしい言い方なので、敢えて突っ込まずにおくルース達である。


「まぁそんな感じでしたので今日は検証をしていって、マジックバッグやフェルとソフィーが選んだ防具の方も、良品であると結論を出した次第です」

「じゃあ、ルースのお墨付きがあるなら安心ね」

「そうだな。で、それっていったい何でだ?」

 フェルが言う事はルースも考えていたが、それには一つしか思い当たらなかったのだ。


『ステータスが視えておるのじゃろう』

 ネージュの言葉にルースも頷いた。

「はぁあ?!」

「フェル、ちょっと声を落として。他の人に聞かれたら拙いわよ」

 ソフィーはフェルに向けて、立てた指を口元に当てた。

「ぁぁ…」

 そこは小声で言わずとも良いが、フェルも動揺している様である。


「ネージュが言ったように、私もその文字はステータスであると思いました。なぜそれが視えるのかはわかりませんが…」

『おぬし、自分の事は視えるのか?』

「それはまだ試していませんでした…。ちょっとやってみますね」

 ルースは、胡坐をかいている自分の足に手を乗せて目を瞑った。そして自分を視ると念じれば、それは次第に形を現し始める。


~~~~~~~

『ステータス』

 名前:ルース

 年齢:18歳  (前回:17歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):剣士

 レベル:75   (前回:46)

 体力値:403   (前回:224)

 知力値:310  (前回:112)

 魔力値:337 (前回:160)

 経験値:228  (前回:89)

 耐久値:190  (前回:50)

 筋力値:174  (前回:61)

 速度値:187  (前回:64)

 スキル:倍速・波及・叡知・雲外蒼天  (前回:倍速・波及・雲外蒼天)

 称号:―

~~~~~~~


 ルースが今視ている情報には確かにルースの名前が載っており、これは自分の情報であると確認できた為、その内容を2人へも伝えた。


「…新たに叡知(えいち)というスキルが出ています」

『ではそのスキルに因って、ステータスが視ているという事であろう。そしてそれは、おぬしが持っておる雲外蒼天の影響とも考えられる』

「この雲外蒼天が、私のスキルの項目に影響を与えていると?」

『そうであろうのぅ。そもそもその雲外蒼天は、何も自発せぬスキルじゃが道を示すスキルと言われておる。そのスキルは、(おの)が進む為に力を貸してくれるものであろう』


「ルースのスキルって、変な名前だし人に影響するスキルまであって、本当に意味が分かんない物ばっかりだなぁ…」

 確かに、フェルが言う通りである。

「複雑なのね…」

『さよう。その雲外蒼天というスキルは滅多に出ぬと言われておるし、我も今まで見た者では2人目じゃ』

「え?滅多にいないのに2人目?」

『何を言うておるのじゃ。我がどれ程、この当世におると思うておるのかえ?』

「あ…」

「そうよね。それならそんな珍しいスキルを持つ人とも、今まで会っていてもおかしくはないわね」

『我も余り人と会う事はないが、まぁたまにはそのスキルを持つ者も出てくるという訳じゃのぅ』


 ルースはネージュの話を黙ってじっと聴いていた。

 今まで教会を避けるために滞っていた3人のステータスを、これで人の目を気にすることなく確認できるという事になった。これからはルースがフェルとソフィーのステータスを視て伝えれば良いのだし、いつでも視る事が出来るのだ。


「この現象には最初は戸惑いましたが、これからは自分達のステータスも確認する事が出来るので、正直ホッとしました」

「ああ、頼むなルース」

「よろしくね?」

「はい、承知しました」

 ここで少し空気が和んで、ルースは小さく息を吐く。


 これから2人のステータスを確認するのだが、一つ気がかりなのは、先に視たルースのステータス値が異常なほどに伸びていた事だ。これはルースだけがその数値なのか、そうではないのか…。

 だが何もせずに考えているだけでは結果はわからない為、ルースはその考えを一旦保留にする。


「ではお二人のステータスも確認していきましょう。口頭でお伝えしますか?それとも何かに書き出しますか?」

「口頭の方が良いんじゃないかしら。万が一他の人に見られでもしたら大変だもの」

「そうだな。ソフィーは特に気にしないといけないもんな。俺も口頭でいいや。分かんなきゃルースに聞けばいいんだしな」

 フェルの言葉にルースとソフィーは笑みを浮かべ、聞く前から忘れる事前提のフェルも、頭を掻いて笑った。

「ではどちらを先に視ますか?」

「じゃあ俺からでいいか?」

「ええ、良いわよ」

 ソフィーが頷いて、フェルはルースへと姿勢を向けた。


「それでは手を出してください」

「おう」

 そう言ったフェルが両手を伸ばしたため、何となくルースも両手でそれを握った。別に少し触れるだけでも構わないのだが、わざわざ否定する事もないのでそのまま握り返したルースだった。

 そうして浮かび上がってくる文字を伝える。


~~~~~~~

『ステータス』

 名前:フェルゼン

 年齢:18歳  (前回:17歳)

 性別:男

 種族:人族

 職業(ジョブ):騎士

 レベル:68   (前回:39)

 体力値:501   (前回:224)

 知力値:180  (前回:80)

 魔力値:122   (前回:15)

 経験値:196   (前回:68)

 耐久値:217  (前回:51)

 筋力値:230  (前回:72)

 速度値:144  (前回:59)

 スキル:加護【月の雫(ムーンドロップ)稲妻斬撃ライトニングスラッシュ】・威圧

(前回:加護【月の雫(ムーンドロップ)】)

 称号:―

~~~~~~~


 そう伝え終われば、フェルは眉間にシワを寄せていた。

「何か…言葉だけだから今ひとつ頭に入ってこないけど、多分、爆裂に数値が伸びてる気がする…」

「ええその様ですね…やはり」

「やはり?…予想してたって事か?」

「はい」

 ルースはフェルに真っ直ぐな視線を向けた。

「私の数値が異様に上昇していたので、波及の影響を受けているフェルとソフィーも、もしかしてと思っていました」

「ああ、そういう事か」

「ええ。では次はソフィーですね」

「お願いします」

 自分で言った改まった言い方に笑ったソフィーは、次に片手を取られてステータスを告げられる事となった。


~~~~~~~

『ステータス』

 名前:ソフィア

 年齢:17歳  (前回:16歳)

 性別:女

 種族:人族

 職業(ジョブ):聖女

 レベル:38   (前回:4)

 体力値:241   (前回:103)

 知力値:260  (前回:80)

 魔力値:353  (前回:120)

 経験値:180   (前回:51)

 耐久値:108   (前回:31)

 筋力値:88   (前回:38)

 速度値:132   (前回:50)

 スキル:聖魂  (前回:―)

 称号:―

~~~~~~~


「………」

ソフィーは、伝えられた内容に驚いている様で、言葉も出ないでいる。

「ちょっと、俺とソフィーの数値が近いのが気になるな…」

「体力と筋力はフェルが断トツですが、速度と経験値はソフィーと近いですね」

「さらっと言ってくれるな、ルースも…」

「ソフィーは魔力値が、3人の内一番高いですね。フェルも随分と魔力値が増えていますが」

 ルースは2人のステータスの感想を淡々と述べる。


「でもルースの魔力も凄いわよね」

「そうだな。ルースも小さい頃からずっと魔法の練習をしてきたみたいだし、積み重ねなんだろうな」

「私は拾われてすぐ魔力があると分かった為、魔女である育ての親がずっと私に魔法の使い方を教えてくれていましたし、それが又当時の私には楽しい事でしたので」

「私ももう少し早く魔法の練習を始めたかったわ。といっても聖女だった私には、その魔法は殆ど使えなかったでしょうけどね」


 ソフィーは聖魔法の他に四属性の魔法も使えるが、基本的に攻撃魔法が使えない事が判明していた。その為、町にいた頃にしていた練習は無意味な事であったのだと、聖女とわかってから初めて気付いたのである。


「でもあの時は、本当に一生懸命だったわ」

 その頃の事を既に懐かしい思い出と割り切っているソフィーは、やはり強い女性であると言える。

 このメンバーの中で、ソフィーが一番打たれ強く切り替えが早いと言っても過言ではないかもしれないのだった。


「そう言えば今ルースから聞いたステータスに、新しくスキルが入ってたわね…」

「俺もあったな」

「私もありました」

 3人は顔を見合わせて、これはどうやって理解するべきかと思う。

「ねぇネージュ、前の聖女様は“聖魂“というスキルはなかったの?」

『うむ。前の聖女からは、我はそのスキルを聞いた事がなかったのぅ』


 ルースの“叡知“とフェルの“威圧“は解るとして、ソフィーの“聖魂“はネージュも知らない為に不明となり、この町にも図書館があるのかを先に調べる事になる3人なのであった。


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