はてなき世界
きょうだいたちはいつも、お家で一緒に眠っているのでした。ペトル神とサピュラ神も、また子どもをつくるため、いろいろなものをあつめて、朝つゆの時間を待って眠っています。
「ねえ、みんな」
アグスが小さな声で呼びかけました。みんなぱちりと目を覚まし、耳をアグスに向けました。
「ぼくたちのいるこの世界の外って、どうなってるのかなぁ?」
ブラウはあくびをして、答えました。
「さあね。だけど父さんも母さんもこの世界から出たことがないんだ。何もないんじゃないかなぁ?」
「だってお空の国があるんだろう? それなら、ここでもなくて、お空の国でもない国があるんじゃないのかなぁ」
プルスも目を輝かせました。
「そうかも! きっとあるんだよ!」
「でも、それがどうしたのさ?」
ココも首をかしげました。
「ぼくたちのほかに、同じ姿の生き物がいるかもしれないだろ? それにもっとおいしい食べ物もあるかもしれない!」
「そんなこと、ありえないわ! だってお父さんやお母さんが生まれる前には、砂しかなかったのよ?」
アルバも笑いますが、アグスはより一層目を輝かせました。
「もう砂があったんだよ! その砂はどこから来た? 母さんが生まれた川の水はどこから? 誰も見たことないじゃないか。きっと、この世界の外にも誰かが住んでいて、同じように暮らしてるんだ」
アグスははしゃぎながら、外を眺めました。
「ぼくは王様になる。そしたら、外の世界も見に行ける!」
アグスの輝く目に、弟たちや妹は、同じように目を輝かせながら、広い世界を思いました。草や木の実、それは原初の樹によってもたらされるものです。それと違った樹があって、とても美味しい実があったら。
「ぼく、行きたい!」
ココが、星のように目を輝かせて、はしゃぎ回ります。
「一度、父さんと母さんに話してみよう!」
きょうだいたちははやる気持ちに尻尾を震わせながら、眠れぬ夜を過ごしたのでした。
翌朝、アグスは日の出とともに、真っ先にサピュラ神のもとへ走り出しました。ペトル神もサピュラ神も、びっくりしてアグスに振り返りました。
「どうしたのです? アグス」
「母さん、ぼく、外の世界を見てみたいんだ!」
ペトル神もサピュラ神も、今度は目を丸くして、そして怒りました。
「何を言っている!?」
「アグス、お前はこの国の王さまになるのです。アグスがいなくなれば、この国はどうなります?」
今度はアグスが声を荒らげます。
「どうしてさ? 父さんも母さんも、外の国に行くのに」
サピュラ神は首を横に振りました。
「アグスはこの国で、アルバと一緒に皆を見守るのです。お空の国に行くのはそれから」
「ぼくが行きたいのはお空の国じゃない! それとも、外の国はお空の国しかないの?」
そうね、と、サピュラ神はアグスの頭を撫でました。
「アグスはこの国のことだけ考えなさい。きょうだいたちと助けあって、いっぱい子孫を残すのです」
アグスは歯ぎしりをして、うつむきました。
「みんなも、アグスを助けて、この国を大きくしてちょうだい」
きょうだいたちもうつむきながら、「はい」と答えました。サピュラ神はにこりとほほえみながら、
「それじゃ、朝露がとれたわ。食べ物を持ってきてちょうだい。新しいいもうとよ。ネグルを呼んできてちょうだい」
生まれてきた女の子は、サピュラ神に似た、青色の毛で覆われていました。