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ファーブラ オクトドノス  作者: 風見鶏充
3/5

アグスの兄弟

 アグスには、同じ毛色の弟たちが三人いました。鋭い爪のブラウ、耳が良く、遠くまで聞こえるココ、すばしっこくて甘えん坊のプルス。

 同じく双子の弟、ネグルもいましたが、真っ黒な色の弟を、アグスは毛嫌いしていました。いつも同じ毛の色の弟たちや、かわいい白毛の妹アルバと、草の間を駆け回って遊んでいました。

「ほらほら、みんな置いてくぞ!」

 アグスは先頭を走ります。甘えん坊のプルスが、アグスと並びました。

「ぼくのほうが速いぞ!」

「それじゃあ、あの高い草まで競争だ!」

 アグスとプルスは、更に足を速めます。ココは疲れはてて、その場で止まってしまいました。

「もうだめだよ。疲れちゃった」

 アルバがココに寄りそうと、元気づけました。

「ほら、もう少しよ。あそこについたら休みましょう」

 ココはまた、走り出しました。

「ついたよお兄ちゃん! ぼくの勝ちだ!」

 プルスは喜んで、自慢げな顔で兄たちに振り返りました。

「あと少しだったのになぁ!」

 アグスは悔しさのあまり、じだんだを踏みました。続いてブラウ、そしてココとアルバも追いつきました。

「よし、次はおうちまで競争だ!」

「アグス兄さん、ココがもう疲れてる。少しぐらい休んでいこうよ」

 ブラウの提案に、アグスはココを睨みました。

「情けないなあ! プルスだってまだこんなに元気なのに、ココはもう走れないのか?」

「もう、いじわるね! お兄ちゃんならもっときょうだいには優しくしなきゃ」

 アルバがむっとしてアグスをたしなめました。しかしアグスは聞きません。

「ぼくはお兄ちゃんだぞ! 父さんや母さんの次にえらいんだ! もし逆らったら、この歯が黙ってないぞ!」

 アルバも黙っていません。

「それならそのお父さんとお母さんに言いつけてやるんだから! ネグルお兄ちゃんのこと、すごく心を痛めてるのよ!」

 アグスはアルバに歯を向けました。

「ぼくはあんなやつ、兄弟だとは思ってない! あんな真っ黒黒のおどおどしたやつ、強いぼくと同じなもんか!」

 アグスは、ふんと鼻を鳴らして、プルスを連れて走り出してしまいました。怒って歯を鳴らすアルバを、ブラウがなだめます。

「アルバ、アグス兄さんはぼくたちの言うことなんか聞かないよ。ネグル兄さんみたいになりたくなかったら、黙っていよう」

「女の子の私がいなかったら困るのはお兄ちゃんたちのほうよ。私、やっぱりアグスなんかを王様にしたくない!」

 長男であるアグスは、やがてペトル神のあとをついで王様になります。そうなればただ一人の女の子として、アルバがお妃になるのです。

「アルバ、でもこの世界の決まりなんだよ。父さんと母さんの言いつけは守らないと。ここにはぼくたちしかいないんだ。助け合っていかなきゃいけない」

 ブラウにさとされながらも、アルバは納得がいきませんでした。

「帰ろう。ひょっとしたらまた、弟か妹が出来てるかもしれないよ」

 ブラウに招かれ、ココもアルバも後をついていったのでした。


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