オクトドン創世記
世界は荒れ地でした。チモシーもリンゴもない、砂でした。その荒れ地の真ん中に、砂で出来た木がありました。その木の根もとに、砂の葉っぱが落ちました。葉っぱは地面でくずれ、風に包まれて、砂色の男の子になりました。
同じころ、荒れ地の西に川がありました。川の水が跳び、ひときわきれいな石にかかりました。その石は青く光る女の子になりました。
砂の子と青の子は、砂の木の前で出会いました。二人が木の前でお互いの毛をつくろうと、砂の木が固く、それでいてしなやかな木になり、荒れていた砂はうるおい、たくさんの草が生い茂りました。
この二人こそ、私たち八つ歯の祖先。そして大切な神様である、ペトルとサピュラの二柱です。ペトル神は木をかじり、サピュラ神は土を掘りました。深く深くサピュラ神は土を掘りました。ペトル神は木をたくさんかじりました。ペトル神がかじった木の皮を、サピュラ神の掘った穴に持っていくと、とても暖かくなりました。すると、木の皮の一枚と土のかたまりからまた、木と土の色の子どもが生まれ、穴の暗闇の奥から、真っ黒な子どもが生まれました。
「なんて暖かく、かわいい子どもたちだろう」
「きっと素敵な家族になりますわ」
ペトル神もサピュラ神もたいそう喜んで、子どもたちの毛づくろいをしてあげました。この子どもたちはそれぞれ、「アグス」「ネグル」と名付けられましたが、ペトル神はため息をつきました。
「二人とも男の子か。これでは子どもは生まれない」
「そうですね。女の子も作れたら」
ペトル神とサピュラ神は、また木の皮や土をこねました。しかし同じ方法では同じ子しかできません。とはいえ、まわりにあるのは木と土だけ。生えている草を使おうかとも思いましたが、草で出来た子どもに草を食べさせるのは、とてもいけないことなのです。ペトル神とサピュラ神は困ってしまいました。
そのときでした。いつの間にか夜が明け、草の間に朝つゆがたまっていました。サピュラ神はきれいな朝つゆを、草の葉に乗せて集め、少し飲んでみました。そして集めた朝露をペトル神の元に持っていきました。
「きれいな水だな」
ペトル神も喜びます。ペトル神も少し水を飲み、子どもたちにも少しだけ飲ませました。余ったつゆは、大きなあくびをして起き上がり、真っ白な女の子になりました。
これが、みなさん八つ歯の一族の誕生と、世界の始まりになりました。