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気づき

 男はそんなことを口走ったが、再び男の気は乱れ、意識を失ってしまった。

「ううーん、もう少しか……」

 クレンは周りを見渡す。

「俺が、試してみるか?」

 生善は、読経なり、お祓いなりをするとき瞑想状態の中で、他人とシンクロする“異次元”を生成する。瞑想次元、と名付けられたそれは、優れた退魔師の能力の中でも得に優れた人間だけが持つ。そしてそれは気をつきやぶり、直接意識同士の会話をつくりだし、亡霊とも人の意識とも、対話がしやすい状態をつくりだす。だがそれは、クレンもまだ体感したことのないものだった。

「ん、んー……」

 クレンは、男のわきで座禅をくみ目をつぶり瞑想状態に入る。クレンは心の中で読経を読む。なぜなら彼は恥ずかしがりだし、そもそも、それこそがクレンが幼少期に母と特訓して編み出した、彼の霊力と気を最大限に利用する方法だった。常識をよく知り、だが常識にとらわれなかった母親のために、常識を乗り越えて、クレンはそうして特別な退魔師として認められていったのだ。

 片目をあけるクレン。

「……」

 クレンは深い反省の中にいた。自分が人を、望まずと望まざるとにかかわらず傷つけてしまったこと、いまだ彼の意識がもどらないこと。その深い反省と罪の意識にアクセスしようとする。瞑想次元にはそうした意識が必要だと、何度も聞かされてきた。かといってすぐできる事ではないが……。

「!?」

 だがその時、一瞬ではあったがクレンの目の前にかすかにもやのかかった空間がひらかれ、そこに、彼の―ダレス―となのったカルマテイカーの意識が見えた気がした。

「俺は……お前に頼るしかないんだ」

「フモウ……」

 ダレスは、魔女のような形をした、ダレスがヘラと呼んだ悪霊とむきあっていた。彼らの間にあるはずの結束ははずれ、透明な板ガラスのようなものを隔てて向き合っているようだった。

「俺は……お前に出会ったとき、同じだとおもったよ、思い人に認められず、自分に自身もなく、最後には呪って、傷つけてしまった……お前はそんな自分が嫌で自殺したんだろう……?俺も、おんなじになりそうだった、だがお前は俺をすくってくれた、それなのに、それなのに……その結束は……」

 一瞬その空間が歪み、視界のフチから暗闇が迫ってきた。

「お前が!!!」

「うわ!!!!」

 その時、ヘラとダレスが合体したような、目と口と鼻が真っ黒な男が、突然視界いっぱいに現れたかと思うと、クレンを罵倒して、そして意識は現実に引き戻された。

「だめか……いまのが?……まさかね」

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