クレンの決意、最後の言葉。
(でもどこかで、クノハが来ることを願っていた、何を弱気になっているんだろう……そもそもどうして退魔師をやめようと思ったんだっけ)
ぼんやりとした意識を確かめようとする。しかし、退魔の力を消耗しつつあるせいで、思考が回らない。
(母さんがいつもいっていた、失敗は仕方がない事もある、自分を許せば必ずあなたは強くなれる、強くなれたあとで人を許せる人間になりなさい)
そして、いつだろう。たしかあれは……。
「ハッ」
急に意識が鮮明になる。ふと、あの時の事を思いだしたからだ。―母が死んだときの事を―最後の言葉を。
「クノハ……」
「はい!!」
「俺はここで全力を使う、あとは君の力にたよっていいか?」
「もちろんです!!」
悪霊はクノハにささったツメをひきぬき、わめき叫んだ。
「小癪な!!!この小娘の浮遊霊ごときがああ!!!」
「浮遊霊ではありません」
「なに!!?」
クノハは、すぐさま悪霊の背後に回り込んだ。そして両手をがっしりとつかむと、叫ぶ。
「今です!!クレン様!!」
仮面を外したシノメも、その様子をみて自然に体が動いた。
「!!まずい!」
クレンは、サノンに意識を飛ばし呼びかける。
「サノン、死にたくなかったら、意識を強くもて、自分を強くもつんだ」
「!?何を!!」
「いいか、この一撃を受けた悪霊で、無事だったものはいない、以前家の寺で立てこもった人間も、お前たちの仲間のカルマテイカーもこの技でしとめた」
「!!」
明らかなハッタリだったが、クレンにはある目論見があった。クレンは勢いよく息を吸い込むと、突進し、まずサノンの首にまきついた木の細工をつかんだ。サノンは無意識か、それをかばうようにした。
「やめ!!これは!!大切な!」
「大切?あんたにとって本当に大切か?」
「!?」
次にクレンは、サノンの腹部に左手をあてた。右手はフェイクだったのだ。そして、勢いよく退魔の気を射出した。
「もろとも吹っ飛べ!!!」
サノンが叫ぶ。
「やめッ!!!」
悪霊が叫ぶ。
「ウゴオオオ!!!!」
クレンが射出した気は、やはり生身の肉体にも影響があったのだろう。
「カハッ!!!」
サノンは咳き込み、吐しゃ物を吐き出した。と同時に、サノンの魂はふと背中から抜け出た。
「ここは……」
サノンは生まれて初めて見る不思議な光景をみる。自分の背中を見ている自分の意識が存在する、そしてふと、寒気がして後ろを恐る恐る振り返る。
「ヒィイイ!!!」
そこには恐ろしい形相の亡霊、ヨギがいたのだった。




