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クノハと悪霊

 当たりすべてまっ暗闇の世界につつまれ、クレンの意識にその声はぼんやりとしか聞こえなかったが、すっと暗闇の中に光を帯びた手がさしのべられクレンの手を握った。

「クレン様!!しっかりしてください!」

「……クノハ?」

「どうしたのですか?あなたらしくもない!!」

「いや……彼女の、サノンの中でみたんだ、確かに委員長、シノメは小さいころ僕に憧れていたらしい、そして僕をたよったことも……でも僕はそのとき、手を差し伸べるどころか、自分でがんばれと突き放した……」

「クレン様……」

 クノハは、暗闇の中にすっと姿をあらわした。

「クレン様の過去に何があったのかはわかりません、そもそも私は、私の過去ですら忘れているのですから、ただ……」

 クレンは顔をあげてクノハの顔を見る。

「あなた様の強さは、失敗をしないことではない、あなた様の強さは失敗してもめげないこと、そして人も幽霊の失敗も許すこと、そうでしょう?」

「……」

「でも俺はもう、悪霊にやられたんじゃ?」

「よく見てください……」

「……クノハ?」

 クノハは、クレンの頭にてをあてた。自分の今まで体感したイメージをさーっとクレンの意識にながしこんだ。まず公園で、クノハは猫のランにあった。

「これは……」

 クレンは、クノハがもしかしたら異変に気付くかもしれないと思い、わざと自分の気をのこし、そのランに出来事を―濃い残留思念という形で―残した。クノハは急いで現場にかけつけると、クレンは悪霊と対峙していたが、どこか本気を出していないような雰囲気を妙に思い、すぐさまかけつけクレンをかばおうとした。

「グサリ」

 クレンが自分の体に刺さったとおもった悪霊の爪は、クノハの霊体ががうけとめていた。霊体は傷がないわけでも苦しくないわけでもない。だがクノハは、クレンをかばった。

「くっ」

 そしてとどめに腹部を刺そうとした爪も、クレンに届くまえにクノハが立ちはだかり止めたのだった。

「ク……ノハ」

「どうして、クレンさま、どうして本気で戦わなかったのですか!!」

「強敵は二人いるんだ、それにどうやら、自分の過去に原因があるようなら、俺は……俺はもう何度も失敗をしてきたから、ヒーロー気取りで、きっと誰も助けてやれなかった」

“パシィッ!!”

 クノハは、クレンをビンタした。

「そんなはずないでしょう!!ヒーローだからって、うまくいくこともいかない事もありますよ!でもそんな自分の失敗を受け入れてこそ、あなたでしょう!!あなたは人を許せるんだから、自分も許してあげてくださいよ!!」

 クレンは頬をなでる。そしてつぶやく。

「母さんにも、同じ様なことをいわれたような」

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