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触らぬ神に祟りがあった _大人しくしてるのに周りが勝手にガヤガヤしています_

作者: 白衣


初投稿。なんとなく書きたいところだけを書きました。




ここはロベルト·ハーバスト国。

海に面した海産業が盛んな国だ。国の中心部に位置する王都を含め、10の都市とその都市を取り囲むように300の町村が存在する、広大な土地と人口を誇る国である。


文化は近代西洋のようだが、魔法や魔導具の存在もあってか元々日本育ちの私が耐えられるレベルの生活水準はおくれている。


そして私、リエル。この世界に前世の記憶を持ったまま生まれ、姓を持たない平民家庭で育てられた。今年ピチピチの14歳。


ロベルト·ハーバスト国の中心部、王都に構える国内唯一の王立児童教育期間「王立ロベルト学院」に一ヶ月前に入学をはたし、現在キラキラ学院生活を送っている真っ只中である。



「リエル氏リエル氏」


「…なんだいボック氏」



入学して一ヶ月。未だ一人として友人というものがいない、ぼっちな私だが、そんな私にもぼっち仲間が一人できた。友人というほど親しくはない。ぼっち仲間のボック·シェル氏(男)。ボックが姓だ。

ボック氏はちなみに私の後ろの席である。


「リエル氏はあそこに混ざらなくていいの?」


私にしか聞こえない程度の潜めた声でボック氏は言う。

あそこ、というのはもしかしなくても、あの教室の一角で繰り広げられている平民VS令嬢様の熾烈な戦いのことだろうか。戦いと言っても平民2名に対し、取り囲むように5名の令嬢がいる様子は、女の私から見ればどうみたって一方的なイジメ現場だ。

しかし、教室内の令息様たちが何の気も止めていない様子からすると、男たちから見れば、ただの女子会に見えるのだろうか。まあたしかに話の内容までは聞こえないし、表情だってこちらからは見えないが。


「ボック氏にはあれが仲良く女子会をしているように見えるのかい」


「俺には近付けない領域の闇魔法でも働いているかのような空気だよね」


「その通りですボック氏。私が近付こうものなら一瞬でふっ飛ばされるでしょう。」


「くくっ」


私の返答がツボだったのか机に突っ伏して笑いを堪えるボック氏。私は目線を手元の本から外さず、背中でボック氏の気配だけ感じていた。


__ガラッ…


そこで、教室に二人のご子息登場。突如教室の空気が変貌する。


「「あ、ハーバスト様!おはようございます」」


「あぁ、おはよう」



登場した二人の内の一人、この国の第二皇子、セドリック·ハーバストのご登場だ。

皇子の登場に闇の女子会は一瞬で解散、瞬きの間に皇子の取り巻きと化している。さすが恋する乙女の特殊能力だ。


セドリック·ハーバスト。この国基準で言えば顔よし、頭よし、運動よし、お家柄最高峰の完璧キラキラ人間だ。目に入れなくてもキラキラオーラを感じられるほど、彼はマジでキラキラキラキラ。私から見れば歩く宝石である。直視すれば不敬で処刑にでもなるのではないかと思うほどに異次元な存在だ。

そんな歩く宝石に近寄り、視界に入りたがるご令嬢たちは本当に凄い。


「あ、セドリック、さま…」


「マリア嬢、おはよう」


「お、おはようございます!」



あ、ヤバい。周りのご令嬢方、闇魔法発動。皇子がいる手前あからさまな行動は起こせないのか動きはしないご令嬢方だが、私から見ればオーラだけで人を殺せそうだ。怖い怖い。



「リエル氏リエル氏」


「なんだいボック氏」


「リエル氏はホントにああいうトラブルごとにも興味ないんだね。リエル氏って何なら興味あるの?」


「興味津々200%です。目線は本でも耳は全集中」



再び笑いを堪えながら机に突っ込むボック氏。

私だって噂大好き女の子だ。あーゆーいざこざは野次馬心が働くに決まっている。むしろ学園生活の娯楽なんてそれしかないだろう。


「イジメの傍観は加害者と一緒。って言わない?」


とニタニタ笑うボック氏。うざい。


「直接対決はイジメじゃなくただの喧嘩。あのご令嬢様は虐めているのではなく喧嘩をふっかけていると私は見ます」


「なーるほど」


まあそんなのただの言い換えだ。多勢が一方的に言葉を投げればそれは人によっては虐め。でも、そんなの人の感じ方だし、たとえイジメだとしても私が突っ込むことに無意味どころかマイナスでしかないし、なんならマジでふっ飛ばされるだろう。


触らぬ神に祟りなし。まさしくそれだ。



「マリア大丈夫?気にしちゃだめよ!」


「う、うんありがとう…」



そろそろ授業が始まる時刻だからか、キラキラ皇子様も闇属性令嬢様もみな、席へ向かい始める。そして喧嘩を吹っ掛けられていた平民二名も私の席へと近付いてきた。なぜ私に近付いてきたかって?それは平民二名様が私の前の席だからだよ。笑えない。


私の前の席、マリア様。先程喧嘩をふっかけてられていた平民の一人だ。この一ヶ月、誰がどう見ても第二皇子様とやや親しげなのがご令嬢様たちの神経を逆なでている。

そしてそのマリア様と常に行動を共にするもう一人の平民様。彼女はマリア様のさらに前の席だ。つまり、このクラス唯一の平民3名は窓際奥で縦並びの席となっている。

まぁ平民で席を固めるのはわかるが、なぜ私の後ろ

にボック氏がいるのか、それは不明だ。


ちなみにこのマリア様と友人様が仲良しすぎて、入学式の挨拶以来授業以外で一言もこの二人と話したことはない。なぜかって?そんなの話す話題がないとしか言いようがない。

お二人は大変仲良しで常に一緒。そんな二人に話しかけるわけもない私。私達三人以外は全員ご貴族様。つまり私のぼっち生活は約束されたものだったのだ!くそう


「リエル氏リエル氏」


「なんだいボック氏」


「テキスト忘れた」


「知らんがな」



まぁ私にはたまにの話し相手ボック氏がいれば充分だからよし。



______________





「はい、では授業はここまでです」


昼食を告げるチャイムが鳴り響くと教員は教室を後にする。みな各々昼食のため席を立っていく。

なんとなく後ろを振り向くと、ボック氏はすでに席を外していた。


いつも昼休みは一瞬でいなくなるボック氏。マジで瞬間移動をしてるのではないかというほどに一瞬だ。まぁべつに昼食を一緒に食べたいわけでも一緒に過ごしたいわけでもないので、いなくてもいいのだが。


私は弁当の入った自身の鞄を持つと席をたつ。

このご貴族様ばかりの学校ではお弁当持参なんて悪目立ちが凄い。ご貴族様はだいたい学院内に整備されている学食やサロンで昼食をとるからだ。学院内のサロンとか怖すぎて未だ行ったことはない。学食は一度覗いてみたが、値段を三度見して速攻帰った。なにあれ平民に優しくない。


学院には中庭が8つもあるのだが、その中でも一番人気がなく陽当りも悪い中庭のベンチで私一人弁当を食べている。もともと日本では30代独身を謳歌していた女だ。ぼっち飯は余裕中の余裕である。


次は算術の小テストかーなど、ぼーっと食事をすすめていると、普段この場所で滅多にない人の気配を感じた。しかも複数。



「マリア様。どういうおつもりかお教え願えますか?あのハーバスト様を名前呼びなど!」


「え、それは、セドリック様が…」



え、マジか。私ここにいるけど。なんか始まっている。え、めっちゃ私ここにいるけど。見えてない?私の存在。いや見えてるけど無視?


私の座るベンチより数メートル先に位置する校内の柱で突然始まる喧嘩。ご令嬢3名vsマリア様の構図だ。マリア様のご友人は不在らしい。


「あの御方はこの国の皇子であらせられます。むやみにお名前を呼ぶことは許されません。たとえご本人様がお許しになっていてもです!」


「で、ですが、この学園では誰もが身分関係なく平等と…」


おお!マリア様が言い返している!やはりあれは虐めではなく喧嘩だ。女達の言い争いだ。それにして3対1で自身の意見を言えるマリア様は思っていたよりも心臓がお強いらしい。あんな消えてしまいそうな儚げ美少女なのに。


「平等とは一定の秩序が保たれていること前提のものです!この国で一番高貴な血筋をお持ちの御方を、学院内だからといって名前で呼ぶなどあって良いわけがないでしょう!」


「私とセドリック様はご友人です!ご友人をお名前でお呼びして何が悪いというですか!!」


「婚約者である私ですら、この学院では外面を保つためハーバスト様呼びを徹底しております!」


「それは関係ないことかと思います!」


「な、なんですって」



修羅場あああ!!この学院に来て一番の修羅場が!私の目の前で!す、凄い!

というかあの黒魔術令嬢様は皇子様の婚約者様だったのか知らんかった。そらムカつくよな。でも平民からしたら貴族社会のしきたりとか判らないのも理解できないのもわかる。違いすぎる文化で育ったのだ。価値観に大きな差は出るだろう。 


ちなみに私、目線をむけず黙々と弁当を食べながら聴力を研ぎ澄ましている状況。なんせわりと修羅場から距離が近いのだ。なぜ私の存在が気にならないのか不思議なほど。多分ホントに目に入ってないのだろう。

このまま私は存在を消していこう。私は空気だぞ。


そこにまたもや空気をぶち壊す存在が登場した。



「おい、こんなところで何をやっている」


「え、」

「せ、セドリック様…」


歩く宝石キターーーー!!!

私大興奮である。これは思わず目を向けてしまった。

そして歩く宝石のキラキラに目を当てられ反射で再び目線を弁当へ。耳は200%全集中だ。なにこの激熱展開。


そこからは、もうわかり易すぎる展開が一瞬で過ぎ去っていく。マリア様を全面的に庇う皇子様と皇子様の言葉にショックを受け退散するご令嬢たち。ご令嬢がいなくなったあとの二人の世界。


二人の世界が繰り広げられながら、お二人も中庭を後にしていく。そして中庭取り残された観客私。最後まで私の存在に気づかなかったのが超不思議だが、それより……


なんか乙女ゲームっぽいなこれ。





___教室にて




「ボック氏ボック氏」


「突然どうしたリエル氏」


「乙女ゲームのようなのです」


「おとめゲームとはなんだ?」


「それが私もやったことがないのです」


「?????」



そう、アニメ漫画ゲーム大国日本で二次元全盛期世代を生きていた私だが、乙女ゲームはプレイしたこともなければ興味もなく、何一つ作品も知らないのだ。

ただ、乙女ゲーム×異世界転生をモチーフにした創作小説はとても好きで、読み漁っていたことがあったため、お決まり展開やテンプレの知識のみあるという残念なオタク脳であった。

でもあの中庭は俗に言う好感度イベントにしか見えない。きっと今後もイベントのようなテンプレがたくさん起こるのではないだろうか。


という100%私の想像の話だが。



「よくわからないなリエル氏」


「私にもわからないのだよボック氏」


「ちなみにリエル氏、第八校舎の中庭は一定周期で大蜘蛛が毎年大量発生するらしいから昼食場所には向かないぞ」


「……今はじめて私はボック氏に感謝してる」


「おい、いつも喋ってやってるだろう。ぼっちのリエル氏」


「それはお互い様だ。ぼっちのボック氏」



私のいつも使っている第八校舎の中庭に人が寄り付かない理由が解けた。あーあ明日からどこでご飯食べよう。



「私が中庭でご飯食べてるの知ってたんだボック氏」


「今日通りかかった時見掛けた」


なるほど?第八校舎なんて一学年が何の用があるのだろうか。と一瞬疑問が浮かんだが興味がないので聞くことはしない。てことはあの修羅場をボック氏も見ていたのだろうか。あの中庭は割りと小さい上に数本の木が生えているだけで、わりと拓けている。しかも人通りも少ないし人が来たら気配でわかりそうだ。でもボック氏が通りかかったなんて気付かなかった。



「なんかボック氏って忍者みたい」


「忍者?なにそれ?」


「あーシノビ?暗部?影の組織みたいな?」



だって昼休みも放課後も気配なく消えてるし、と思ったら気づいたら後ろにいるんだもんな



「さすが影が薄い」


「おい、それはお互い様だ」


「おい」


いつものやり取りにケラケラ笑う私。おっとそろそろ授業がはじまる時間だ。次は私の得意な算術だ。



「ねえ、それよりリエル氏。次の算術ヤバい俺」


「気合だ少年」


「小テスト出るとこ教えて。リエル氏算術得意でしょ」


「こういうのは自力でやらないと意味がないのだよ」


「変に真面目だよね」



算術なんてただ計算するだけだ。ヤマはれるような教科ではないのだよ少年。

その後もブツブツ言いながらも机に突っ伏すボック氏端からヤル気なしのようだ。


その授業の小テストは勿論100点満点である。算術に関しては日本の方が遥かに進んでいたし、ここでは単純計算の桁数が増えていくのみの簡単なものしか出ない。前世でそろばん教室に通っていた私の敵ではない。


まあこれがこの学院に入学する羽目になった原因ではあったのだが。それはまた今度話そう。


ちなみにちらっと盗み見たボック氏の小テストは60であった。なんだ0点でも取るのかと思ったわ。



算術の授業後は待ちに待った帰宅だ。といっても、この王都から馬車を5日とばした場所に位置する田舎町出身の私はこの学院寮に帰ることなる。一人一部屋支給、実家よりもしっかりとした造りの広々とした部屋を貰えるので快適だ。


今日は用事もないのでまっすぐ寮に帰るかな、と立ち上がり後ろを向くと、いつも通りボック氏はいなかった。いつも振り向いたらすでに帰宅してるボック氏。ホントに瞬間移動でも使っているのだろうか。


まあ私には関係ないことなのだけど。




______________






__王宮のとある一室にて




「きたか。入れ」



その言葉に一人の気配が現れる。

その身は学院服をまとっている


「本日の報告をせよ」


それを合図に本日の学院内でのことを事細かに報告していく。


「ふむ、ご苦労。セドリックはよほどその平民が気に入っているようだ。マリア、と言ったか」


「左様でございます」


「物珍しさもあるのだろう。そのまま様子を見るように」


「承知いたしました」



普段であれば皇子の近辺の報告で事が済む。しかし本日はそれだけではないようだ。



「本日で入学して一ヶ月がたつ。どうだ、目ぼしい人材はおるか」


「やはり首席でご入学されたバウロー家次男、剣技の秀でたフォンビル家三男は頭一つ出ているかと。とくにフォンビル家三男は性格も非常に誠実で義理堅い。一度こちらにつけば良い側近になるかと」


「ふむ。やはりその二名の名は上がるか。他にはどうだ」


「他…ですか、一人…」



いつも寸分の狂いも隙もない男が珍しく歯切れの悪い姿に、わずかに目を開く。



「どうした。申してみよ。気になる人材でもおるのか」


「セドリック皇子のクラスメートである、名をリエルと申す子女でございます」


「リエル……もしや平民の者か。算術の」


「存じておられましたか」



この国の最高権力者が存在を認識していることに驚く黒装束。



「算術がかなり秀でている平民の者がおると、入学試験の際に話に上がったのだ。しかも期限になっても入学手続きがされてないと、やや学内で騒ぎになっておったな、ハハハ」


そんなことが…と床を見つめながら内心驚く黒装束。


「しかしシェルードよ。算術だけではないのだろう?そなたが評価したのは」


「上手く言葉に表すことができないのです」


「ほう。シェルードがこう言うとはな。面白い。

しかし不確定性、それは危険性でもある」


「承知しております」



クククッとそれは楽しそうに笑う最高権力者。



「よい。そのリエルとやらも合わせて観察を続けよ。もちろん敵である可能性も考慮した上で、だ」

「シェルードがここまで掴めないのだ。敵だとしたら非常に厄介となるだろう」




「心得ております。陛下」







  終わり(続くかも)








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[一言] つ、続いてください!!
[一言] 投げっぱなしの自称短編ってどうなん
[一言] いやぁ〜続けてぇ〜!
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