表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

第13話 ユウナの夢と決意

「じゃかじゃかじゃかじゃか〜♪ じゃ〜ん!」


 ドラムロールの音に続いて、ユウナのスマホを見せてもらった。


 映っていたのは紛うことなき全裸の写真。

 といっても上半身のみで、胸の大切なところは髪で隠れている。


 本物のユウナより少し美人だ。

 アプリで美肌加工しているのだろう。


 あ〜でもない、こ〜でもない、とスマホを操作している姿を想像して笑ってしまう。


「どうしたの? 急にエロに目覚めちゃってさ? ユウナって、SNSとか興味ない人だよね」

「私なりに真剣に考えてみたんよ。五年もしたら社会人になっているかもしれないじゃん。私みたいなクソ雑魚(ざこ)ナメクジが普通の会社で通用するとは思えんのよ」


『使えないやつ』の烙印(らくいん)を押されて職場でイジメられる。

 かといって転職のアテもない。

 まさに生き地獄。


「うわぁ……生々しいな。その若さで絶望しているの?」

「笑い事じゃないって。マジで絵を描いて、お菓子を食って、ゴロゴロするだけしか能がない女なんよ」

「後ろの二つは能と言わないけどね」


 自分のダメさは自分が一番理解している。

 ユウナはそういって、ずずずっとコーラを飲む。


「ハルくんが私を一生養ってくれる?」

「それだけは絶対ヤダ」

「でしょ〜」


 お金を稼ぐしかない。

 特技の漫画で。


「エロ漫画家になるしかないと思っているんよ。少年漫画みたいなやつ、描けないしね」

「いやいやいや……。その若さでエロ漫画家志望? でも、エロ漫画で収入を得るのだって、相当に難しいんじゃないの?」

「そこで顔出しだよ〜」


 ユウナは自分の胸を上下に揺らした。


「エロい女が生きるためにエロ漫画を描く。これなら需要ありそうだよね」

「ああ……動画配信者みたいに固定ファンから支援してもらうわけね」

「そうそう。美少女が美少女のエロ画を描いたら、二倍お得だろう」

「確かに……」


 ユウナにしては考えたな、という気がする。

 おそらく先駆者がいて真似したくなったのだろう。


「そのアイディア、誰かのパクリでしょう」

「どうして分かったの⁉︎」

「ユウナのアイディアにしては秀逸かつ現実的だと思ってね」

「ぐぬぬ……バレたか〜」


 ユウナは動画投稿サイトにアクセスして、とあるイラストレーターさんの動画を再生した。


「この人、普通に可愛いんだよね〜。作業風景とか流しているだけで、チャリンチャリンとお金が降ってくるの。あと、コスプレ趣味があるの」

「つまり、楽して稼ぎたいと?」

「そうじゃない。日本中の疲れたサラリーマンに(いや)しを届けたい」


 時々おしゃべりしているが、基本は淡々と作業している。

 リスナーがその場で商品を買ってくれることもある。


「この人の身長、何センチだと思う?」

「さあ……160cmくらいじゃないの」

「実は145cmなんよ。私より少し上なんよ」

「マジで⁉︎ 顔ちっさ!」

「ネットの世界だと、チンチクリンの体型もハンディにならない」


 若さは女の武器。

 その発想がユウナの頭から出てくるなんて、今年で一番のびっくりかもしれない。


「エロ漫画家になる夢、二人だけの秘密だからね。親には言わないでね」

「言うわけないだろう」


 ハルトの父が心配して帰国してくるかもしれない。


「二十五歳くらいまでに、まとまった貯金を作らないと、私の人生は確実に詰む。そのくらいの覚悟はある」

「お……おう。まあ、頑張って」


 将来を真剣に考えるなんて、ユウナも伊達(だて)に十七年生きていないよな。

 ハルトはそう思いつつ、カレーの残りを平らげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ