第90話 (冒険者ギルド回) 英雄シャーロット、またまた新たな武勇伝を打ち立てる
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「久しぶりの! 街の英雄シャーロットさんの武勇伝を紹介する会です!」
「「「待ってました~!」」」
夜の冒険者ギルドに、大勢の冒険者が集まっている。
中央にいるのは、いつもの受付嬢だ。
シャーロットが初めて冒険者ギルドを訪れ、強力なモンスター”グランドボア”を一人で討伐してクエスト報酬を受け取らなかったあの日から、受付嬢がシャーロットの武勇伝を語り聞かせるのが冒険者ギルドでの人気イベントになっていた。
「まずはこちら! どーん!」
受付嬢が山のような資料を机の上に載せる。
「これらはすべて、冒険者ギルドミウンゼル支部に保管されていた、あるモンスターに関する資料です」
内容を見て、冒険者達は息を呑む。
「推定全長140メートル。3つの頭それぞれが、ワイバーン以上の破壊力のブレスを放つ。……おいおいおい! こんなモンスターが実在するのかよ!」
「信じられねぇ。嘘だって言ってくれよ」
「『討伐には、最低でも戦艦5隻、ゴールド級冒険者100人が必要。そして、その半分は生きて帰ってこれないだろう』だって。こんなモンスター、絶対相手にしたくないぜ!」
冒険者達は、揃って恐怖を口にする。
「ここにある資料はすべて、万一そのモンスターが海を渡ってきた際の迎撃の計画です。しかしシャーロットさん、プラチナ昇格試験の”ついでに”このモンスターを1人で討伐してしまいました!」
「うおおおおおお!」
「さすがシャーロットさんだぜ!」
「もう俺たちの街だけの英雄じゃなくなっちゃったんだなシャーロットさんは!」
冒険者ギルドが沸き上がる。
「というわけで! シャーロットさんのおかげで! この迎撃計画は不要となりました! この資料ももう全部不要だそうです! そーれ!」
受付嬢が紙束をまとめて暖炉に放り込むと、拍手が部屋中に満ちる。
「しかし、1つ不明なことがあります。シャーロットさんが倒した後、牙1本以外の素材が見つかっていません。ミウンゼル支部の担当職員だけが知っているそうですが、『話してもどうせ信じてくれないさ』と言って外部には語られていないそうです。一体シャーロットさん、あれほどの大きさのモンスターをどこにやってしまったのでしょう?」
「そりゃ簡単だぜ! きっと、切り分けてモンスターの生態研究所に寄贈したんだ」
「研究のためにホルマリン漬けにしてアイテムボックスの中に保管してるって線もあるな」
「思慮深いシャーロットさんのことだ。良質な部位だけをつかって、武器や防具の作成に使っていると俺は思う。ああ、余ったところを俺にも分けて欲しい。あれほどのモンスターの素材で作る武器は、きっと最高の性能だろうからな!」
集まった冒険者達は思い思いに推測を口にする。
「案外、から揚げにして喰っちまってたりしてな。なんつって!」
という1人の冒険者の冗談は、誰にも突っ込みさえされず流されていった。
「そして! シャーロットさんの活躍はこれだけではありません! 昨日、たった2人でのワイバーン討伐を成し遂げました! 感覚が麻痺しているかもしれませんが、これも十分過ぎる偉業です! そして……」
そこで受付嬢は咳払いする。
「なんと! シャーロットさんがパーティーを結成したのです」
「「「なんだって!?」」」
冒険者ギルドを、今日一番の衝撃が駆け抜ける。
「相手は誰なんだ!? どんなやつなんだ!?」
「チクショウ俺がパーティーに誘われたかったのに……先を越された……!」
「馬鹿言え、お前なんかじゃ釣り合うわけないだろ。それで一体どんな人がシャーロットさんに選ばれたんだ!?」
「コホン。誰がどのメンバーとパーティーを組んでいるというのは公開情報ですので、明日にも貼り出されますが。シャーロットさんが選んだのは、シャーロットさんと同い年タイでプラチナランク最年少記録を更新した、ユクシーさんという冒険者です」
「ユクシーか。聞いたことがあるな……」
一人のベテラン冒険者がつぶやく。
「地方の街の、病気の妹を助けるためにギフトに目覚める前から冒険者としてダンジョンに潜っていた獣人の女の子らしい。ギフト無しでも滅法強くて、街では大人でも敵わないらしい」
「病気の妹のためか、健気で良い子だなぁ……!」
「さすがシャーロットさんのパーティーメンバー。経歴が凄いなぁ」
「俺たちじゃやっぱ到底シャーロットさんの隣に立つには足りねぇや」
こうして今日も、冒険者ギルドはシャーロットの話題で盛り上がるのだった。
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