第86話 氷結果実、実食ですわ!
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ワタクシ達、ついに氷結果実の元にたどり着きましたわ!
大きさはメロンほどでしょうか。ただし、メロンと違って木に実っていますわ。
「ずいぶん沢山実っていますわね……」
1つの樹に実が5,6個。それが、何本も生えていますわ。
「さぁ、早速採集を始めますわよ。まずはレストランから依頼されている30個を確保いたしましょう」
少し手が届かないところに実がなっていますので、アリシアさんがユクシーさんを肩車して採取することになりましたわ。
「わぁ! すごくひんやりしてて触ると気持ちいいよ、シャーロットお姉さん」
氷結果実を木からもいだユクシーさんが楽しそうに報告してくださいますわ。
受け取ると、確かに冷えてらっしゃいますわ。これがパフェになったら、一体どんなお味になるのでしょう……?
「ねぇ、ちょっと。二人だけずるいわよ。アタシにもその冷たさを味わわせなさい」
と、アリシアさんが不満そうに訴えますわ。
アリシアさんの両手は今ユクシーさんの足を固定するために塞がってしまっているので、ワタクシ氷結果実をそっとアリシアさんの頬に当てますわ。
「ん~! ひんやりしてて気持ちいい!」
ユクシーさんが氷結果実を木からもいで、ワタクシが受け取ってアイテムボックスにしまう。
これを繰り返して、あっという間に依頼されていた30個の氷結果実が集まりましたわ。そしていくつか余分に採取して……。
「さて、ここからがお待ちかね……氷結果実試食タイムですわ!」
「わーい! まってました!」
「いいわね。そうこなくっちゃ!」
今回の主目的は、あくまでレストランで期間限定の氷結果実スイーツを食べるための材料採取ですわ。とはいえ。生でも美味しいと噂の氷結果実。
せっかく目の前に沢山実っているんですもの。もぎたてを試食しないという選択肢はありませんわ!
ワタクシが用意したテーブルの上で、ユクシーさんがナイフで実を切り分けてくださいますわ。
”シャリッ”
「わぁ、凍ってる感触がする……本当に果肉が氷結してるんだ……!」
「シャーベットを切り分けたような音がしましたわね。早く、早く頂きましょう!」
「アタシは元々氷結果実を食べる方に興味なかったけど、現物を見たら楽しみになってきたわ」
切り分けた果肉の断面は、とても綺麗ですわ。透き通る青い果肉が、とても美味しそうですわ。
それをお皿に盛り付けて……。
「「「いただきます!!」」」
パクリ。
「なんですの、これは……!?」
ゼリーのようななめらかさ。
氷の冷たさ。
蜂蜜のような目の覚めるような甘さ。
そして、メロンのような優しい風味。
それらが高次元で融合している、最高のフルーツ! それが氷結果実ですわ!
パクパクですわ!
「とてつもなく美味でしたわ……!」
「美味しかったなぁ……。私、こんなに美味しいフルーツ初めて!」
「アタシも。一族の屋敷では結構良い物食べてたけど、こんなの初めてよ」
お二方にも、ご満足頂けましたわ。
手を加えずにこれほど美味なフルーツが存在するだなんて、考えたことすらなかったですわ。
更にここに一流パティシエの手が加わったら、一体どうなってしまうのでしょう……?
「あら? そういえばこの辺り、変わった花が生えてらっしゃいますわね?」
氷結果実に気をとられていましたけれども、この辺りに生えている花もなんだか風変わりですわ。
透き通る淡い紫色の花弁が、とても綺麗ですわ。
それが、辺り一面に生えていて、素晴らしい景色ですわ。
「ユクシーさん、この花はなんだかご存じありません?」
「このお花はルナリスブルーム。伝説の秘薬”エリクサー”の材料になる花だよ! ……なんだけど、エリクサーは作るのがとっても難しいらしくて、この花だけあってもエリクサーは作れないと思うよ」
「そうですか、それは残念ですわ」
「あと、お茶にするっていう使い道もあるらしいよ。人によって好みは分かれるらしいけど、好きな人は好きなんだって」
「ふむふむ。せっかくですし、ワタクシお茶用にいくらか摘んでいきますわ」
ワタクシは透き通るお花を摘んで、アイテムボックスにしまっていきますわ。
これでもう、この場所での用は済みましたわ。後は街に帰るだけなのですけれど。今言っておかねばならないことがあるのですわ。
ワタクシがアイコンタクトで尋ねると、ユクシーさんも頷いてくださいましたわ。
「アリシアさん。ワタクシ達のパーティーに入りませんこと?」
「……なんですって!?」
ワタクシの言葉があまりに予想外だったのか、アリシアさんは後ずさりますわ。
「アンタ、正気? こんな聖女の出来損ないの、モンスターを引き寄せる忌まわしい力を持った女。仲間にしたら絶対後悔するわよ」
「ワタクシ大歓迎ですわよ、モンスターさんを引き寄せる力。それに、そんなに自分から距離を置くのは、ワタクシ達のことを気遣ってくださっているからですわよね? お優しいのですねアリシアさんは」
「――バカ! 優しくなんてないわよ!」
「それに私知ってるよ。アリシアさんが努力家だってこと。ギフトを授かったときのために、小さい頃からずっと弓の練習してたんだよね? じゃないと、”ダークアロー”であんなに正確にシルバーホーンの頭を撃ち抜くことなんてできないよ」
と、ユクシーさん。
アリシアさんは少しの間黙り込んで。
「……一つだけ約束して。これから何があっても、『忌まわしい力を持った女なんて仲間にしなければよかった』なんて言わないで」
「もちろん。お約束いたしますわ」
ワタクシの隣でユクシーさんも頷きますわ。
アリシアさんの目には、うっすらと涙が浮かんでいますわ。
「分かったわ。……その。よろしくね、二人とも」
ワタクシとユクシーさんは顔を見合わせて。
「やりましたわー!」
「やったね、シャーロットお姉さん!」
ハイタッチするのですわ。
「なによ、馬鹿みたいに喜んじゃって」
というアリシアさんも、口元が緩んでらっしゃいますわ。
「よろしくお願いいたしますわ、アリシアさん!」
「よろしくね、アリシアさん!」
ワタクシは前から。ユクシーさんは後ろからアリシアさんに抱きつきますわ。
「ああもう、暑苦しいわね!」
こうして、アリシアさんが正式にパーティーに加入したのですわ!
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