第7話 イノシシのステーキは絶品ですわ!
「まぁ、大きなイノシシですわ」
北の畑についたわたくし、びっくり仰天してしまいましたわ。
庶民の皆様の家まるごと2つ分程の大きさでしょうか。とにかく大きいですわー!
「どうしましょう、こんなに大きな猪だと思っていませんでしたわ……」
こんなに大きかったら――
こんなに大きかったら――――
「1人じゃ食べきれませんわー!」
正直に白状いたしますわ。
ワタクシ今、グランドボアさんの事が大きなステーキにしか見えていませんの。
『ブフーッ!』
グランドボアさんが鼻息を荒くして威嚇しますわ。
でも全然怖くありませんわ。
宝箱に追いかけられたときの方が、ずっと怖かったですわ。
あの時は本当に怖かったですわ!
こほん。
その話はさておきまして。
あんな大きなイノシシとワタクシ、体格差がありすぎですわ。
でも大丈夫ですわ。ワタクシ、あのイノシシさんに勝つための作戦をちゃんと用意していますの。
これまでの森での暮らしで、モンスターに共通の弱点があることを見つけましたわ。
それは、『魔法に当たると死んでしまう』ですわ。
これまで何度もスライムさんや狼さんに魔法を当てて試したから、間違いありませんわ。
これはきっと、どんなに大きいモンスターでも同じですわ。
つまり、攻撃を受けるより先にワタクシが魔法を当てれば勝ちなのですわ!
先手必勝ですわ!
『ブモオオオオオォ!』
やられましたわ。
先を越されましたわ。
ワタクシが魔法発動の構えに入る前に、グランドボアさんが突進してきましたわ。
土煙を上げて猛然とワタクシに突っ込んで来て――
『自動迎撃スキル“オートカウンター”が発動します』
吹っ飛びましたわ。
『ブモオオオオオオオオオォ!?』
悲鳴のような声を上げながら、飛んでいきましたわ。
「またですのー!?」
勝手に吹っ飛んでいくの、これで二回目ですわ!
本当になんですのこれ!?
じゃれて遊んでらっしゃいますの!?
『ブフゥ……』
とはいえ。
グランドボアさんがぐったりしていますわ。
なんだか知りませんがチャンスですわ。
「“プチファイア”ですわ!」
飛び出した牛1頭ほどの大きさの炎の塊(前より大きくなっているような気がしますわ? 不思議ですわ)が、グランドボアに命中しますわ。
『ブモオオオオオオオオオオオオオオオォ!!』
グランドボアさんが断末魔を上げて、地面に倒れますわ。思った通り、こんなに大きなモンスターさんでも魔法に当たると死んでしまうのですわ。
「魔法って便利ですわ~!」
そして“ボンッ”という音を立ててグランドボアがステーキに変身しますわ。
馬車が丸ごと1台乗りそうなくらい大きなお皿。その上に、山盛りのステーキがドーン! と乗っていますわ。
最高の眺めですわ!
「でもどうしましょう。こんなに沢山のお肉、ワタクシだけでは食べきれませんわ……」
今は周りに誰もいませんわ。
後から他の方が来たら、分けて差し上げましょう。独り占めは良くないですから。それに、美味しいものは皆で分け合ったほうが美味しくなりますわ。
と、思っていたのですが――
「完食ですわ」
あんなに沢山あったお肉。
全部! 食べてしまいましたわ!
先ほどワタクシ、『美味しいものは皆で分け合ったほうが美味しくなる』と申し上げたかしら?
嘘ですわ!
美味しいものは分け合うよりも全部自分で食べたほうが美味しいに決まっていますわ~~!
パクパクですわ~~~~!!
ワタクシの身体よりもずっと大きなあれだけのお肉がどうしてワタクシの胃袋に収まっているのか不思議ですけれど、これもきっとギフト【モンスターイーター】のおかげですわ。
「ワタクシ大満足ですわ~!」
『ボスクラスモンスターを食べたことによりレベルが5上がりました』
『グランドボア捕食ボーナス。レアスキル”無限アイテムボックス”を獲得しました』
ワタクシの手元で、急に空中にぽっかりと“穴”が空きましたわ。
「まぁ。なんですの、これ?」
ワタクシが意思をこめると、穴が広がったり閉じたりしますわ。
穴の中に手を入れると、中に空間が広がっていますわ。
「もしかして、この穴に荷物を入れておいたらとても楽に運べるのでは無いかしら?」
ワタクシってば賢いですわ。
「この穴、とても便利ですわ~!」
淑女はみんな、同じ悩みを抱えているのですわ。
「オシャレなデザインのバッグは、どれも小さすぎるのですわー!!」
淑女たるもの、大きな荷物を自分で持ち運ぶなかれ。
そんな風潮があるので、オシャレなデザインの淑女向けバッグはどれもとても小さいのですわ。
ハンカチとお財布くらいしか入りませんの。
でもこの不思議な穴があれば、暇潰しの本も何冊でも運べますわ。お腹が空いたとき用のパンも持ち運び放題ですわ~!
――――
「というわけでワタクシ、グランドボアを倒してきましたわー!」
夕方。
ワタクシは大満足でレストランに戻って来ましたわ。
「はい、グランドボアの牙ですわ。これをお渡しすれば、カードはランクアップできるかしら?」
ワタクシは、例の不思議な穴からグランドボアの牙を取り出して、受付のウェイトレスさんに渡しますわ。
「え、今どこから牙を取り出しました?」
「この不思議な穴ですわ~」
ワタクシは穴を広げて見せますわ。
「そ、それは所有者が1人いるだけでポーション類を大量に持ち込めるようになってダンジョン攻略難易度が大きく変わるという伝説のスキル“アイテムボックス”では……?」
「まぁ、そんな名前なのこの便利な穴?」
この穴があればかさばるお化粧道具も楽々持ち運びできますわ~。
「グランドボアをお1人で討伐したということは、ポイントが頭割りされずシャーロットさんに全て付与されるので……ええと、ゴールドカードにランクアップします」
受付のウェイトレスさんが綺麗に光るカードを出してくれましたわ。
「まぁ、綺麗ですわ~。これまでのカードの光り方も好きだったけど、ワタクシこちらの方が好みですわ」
「ふふふ。そう言っていただけると嬉しいです」
「でもね。ワタクシ一番好きなのは一番上のダイヤランクのカードですわ。早くダイヤランクのカードになってみたいですわ~」
「シャーロットさんならすぐになれますよ。ええ本当に。その気になれば来週にでも」
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シャーロット・ネイビー
LV:34
HP:35/35
MP:55/55
筋力:28
魔力:45
防御力:36(+ボーナス105)
敏捷:24
スキル
〇索敵LV6
〇オートカウンター(レア)
〇無限アイテムボックス(レア)
使用可能魔法
〇プチファイア
〇プチアイス
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