第68話 (新章開幕)ワイバーンさんを食べるために旅に出ますわ!
今回より新章開幕です!
また。本日(5/15)コミカライズも更新されています!
ページ最下部にリンクがあるので、是非お読みください!(7/17までの期間限定無料公開とのことです)
「良い朝ですわ~」
ワタクシの名前はシャーロットネイビー。
ネイビー侯爵家の娘……だったのですけれども、15歳の誕生日にお父様の意向で実家から追放されてしまいましたわ。
でも、ワタクシは【モンスターイーター】というモンスターさんをとっても美味しく料理できるギフトを授かりましたの。モンスターさんを魔法で倒すと、モンスターさんがお料理になるのですわ! しかも、それがとっっっっても美味なのですわ!
ワタクシ世間知らずだったので初めて知りましたけれども。モンスターさんというのは魔法を1回当てただけで倒れてしまうほどか弱い生き物なのですわ。
しかしそれはそれとして……。
「このお店のサンドイッチ、美味しいですわ~!」
ワタクシが今居るのは、レストラン”冒険者ギルド”。ちょっと変わった名前で背中に剣やら弓やら物騒なものを背負った方も多くいらっしゃいますけれども、美味しいお料理を出すレストランですわ。
特にサンドイッチは絶品で、ワタクシ毎朝これを食べに来ているのですわ。
と、言っている間に完食ですわ。
さて、実はワタクシ今日はもう一つ用事があって来ましたの。
「ちょっとよろしくて?」
ワタクシ、カウンターにいらっしゃるウェイトレスさんに話しかけますわ。
「あ、シャーロットさん。おはようございます。話は聞いています、プラチナ級昇格おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます!」」」
ウェイトレスさんが頭を下げると、周りにいらっしゃったお客の皆様も一斉に頭を下げなさいますわ。
「あ、ありがとうございますわ……」
驚きましたわ。こんなに皆様にお祝いしていただけるだなんて。
レストラン”冒険者ギルド”では”ポイントカード”という仕組みがあるのですわ。モンスターの素材を渡したり、試験を受けたりするとカードのランクが上がるのですわ。
ワタクシ、プラチナカードを貰うために過酷な試験に挑んだのですわ。
特に、無人島での最終試験はとても大変でしたわ~。
テントの張り方が分からなくて、夜快適に眠れなかったり。
食料がほんの少しのビスケットしか配布されなかったり。
でも同時に、楽しいこともたくさんありましたわ。ユクシーさんというとても小柄で愛らしい方とお友達になれましたし、とっても美味しい大きな蛇モンスターさんを食べることもできましたし。幼なじみのアウゼス殿下と一緒に美味しいお店でお疲れ様会をやりましたし。とても楽しい日々でしたわ。
そんなことがあって、ワタクシは無事このプラチナのポイントカードを手に入れることができたのですわ。
「さてシャーロットさん、今日はどのような御用事でしょうか? いよいよ”クエスト”を受けますか?」
「いえ、クエストは受けませんわ。今日はワタクシ、あるモンスターさんの居場所について教えてほしくて伺ったのですわ。ワイバーンさんはどちらに行けばお目にかかれますの?」
ワイバーン。先日この町で開かれたお祭りに現れて邪魔をしようとしたモンスターさんですわ。
また次のお祭りに現れないように、ワタクシがお仕置きしに行きますわ。
それに、ワイバーンさんのお肉がどんな味なのか気になるところですわ。
「なるほど。ワイバーンの生息地はこちらになります」
ウェイトレスさんが地図を広げてくださいますわ。
「ロートナウ渓谷。プラチナ級以上しか入れない、大型モンスターが多数生息する谷です」
プラチナカード会員限定のVIP専用狩り場ということですのね。
「シャーロットさんなら大丈夫だと思いますが、お気を付けください。行き方は、この街から定期乗合馬車で4,5時間ほどです。馬車の出発時刻が朝早いので、お気を付けください」
「ありがとうございますわ」
プラチナカードを手にして、いよいよワイバーンさんにお目にかかりにいけますわ。
それに、渓谷にはワイバーンさんの他にも大型モンスターさんがたくさんいらっしゃるとのこと。
ワタクシ、とっても楽しみですわ~!
――翌朝。
「遅刻ですわ~!!」
ワタクシ、馬車の乗り場に向かって急いでいるところですわ。
乗合馬車の発車時刻まであと5分。このままでは間に合いませんわ。
「紅茶がいつもより美味しくてついお代わりしていたら時間が無くなってしまいましたわ……!」
なんとか、なんとかしませんと。
そうですわ、こんなときこそ。
「”タイムストップ”ですわ!」
ワタクシ、魔法で時間を止めますわ。
無人島で大きな蛇モンスターさんを食べたときに覚えたこの魔法。少しの間だけワタクシが指定したもの以外の時間を止められるのですわ。
街の他の通行人も、空を飛んでいる鳥も、風に舞う木の葉も。今はピタリと動かなくなっていますわ。今のうちに歩けば、少しですけれども時間に余裕が生まれますわ。
……とはいえこの魔法。一度にたったの10秒程度しか時間を止められないのですけれども。
少し歩いただけでまた時間が動き出してしまいますわ。そのたびに、
「”タイムストップ”ですわ!」
と時間停止を繰り返しますわ。
こうしてなんとか、ワタクシは馬車の出発時刻に間に合いましたわ。
「疲れましたわ……」
ワタクシは乗合馬車の座席でぐったりしていますわ。
”タイムストップ”はほんの短い時間しか止められないのに、とても魔力を使いますわ。たった5、6回使っただけで魔力が空になって立てないほどしんどくなってしまいますの。今のワタクシのように。
昔家庭教師の先生に教えていただいたのですけれども、魔力は大体誰でも回復に”一時間程度”かかるそうですわ。
「コストパフォーマンスのよろしくない魔法ですわ……」
一時間のうち、たったの1分程度しか止められない、使いどころのあまりない魔法ですわ。今日のように遅刻しそうなときか、お料理をうっかり取りこぼしてしまったときにキャッチするくらいしか使いどころがありませんわ。
――数時間後。
「酔いましたわ……」
以前乗ったときは平気だったのですけれども。
今日の道はあまり舗装されていなかったからでしょうか?ワタクシ、酔ってしまいましたわ。
「もしもし、御者様? すみませんけれども、少しの間馬車を止めてくださらない? ワタクシ、気分が悪くなってしまいましたの」
「ええ、いいですよ。ちょうど私も休みたかった所です。10分ほど休憩にしましょう」
馬車は、道の端に留りますわ。ワタクシ以外にも皆様馬車から降りて、伸びをしていますわ
「うぅ……まだ気持ち悪いですわ……。少し離れますわ」
もし粗相してしまっても他のお客様にご迷惑にならないように、ワタクシは少し離れたところへ移動しますわ。
その時。
「……今、悲鳴が聞こえたような?」
集中すると、モンスターさんの気配がありますわね。
きっと、ワタクシ達の後ろからやってきた馬車がモンスターさんに襲われているのでしょう。
モンスターさんは見た目が怖い割に人に害をなせないほどか弱い生き物なので、誰かが命を落としてしまう心配は無いと思うのですけれども。
「助けに行きますわ」
あまりモンスターさんになれていない人は、モンスターさんに襲われて驚いて転んで怪我をしてしまうかもしれませんわ。
幸い襲われている馬車はすぐ近くのご様子。ワタクシ、早速襲われている馬車の方へと向かいましたわ。








