第67話 打ち上げに美味しいレストランに行きますわ!
おかげさまで、コミカライズの1話がニコニコ漫画様の少年漫画毎時ジャンルで【1位】獲得しました!!
原作者としてとても嬉しいです!
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是非お読みください!
ワタクシ達は船に乗せられて、ミウンゼルまで戻って来ましたわ。
『最後まで油断してはいけない、ここからが本当の最終試験だぁ!』等と言ってまた船が沈没しないかヒヤヒヤしていましたけれども、無事に冒険者ギルドまで戻ってこれましたわ。
「シャーロット・ネイビー。プラチナ級試験合格だ。おめでとう」
そういって、冒険者ギルドの偉い方からカードを渡されますわ。
ついに。
レストラン“冒険者ギルド”のプラチナポイントカードゲットですわ!
上品な輝き。重厚感、光沢。しっかりと“プラチナ級”の文字も入っていますわ。
イイですわね……。
この高級感、堪りませんわ。ずっと眺めてたいですわ。
プラチナポイントカード所有者だけのメニューとか無いのでしょうか。帰ったらさっそく聞いてみますわ!
「プラチナ級冒険者諸君、あらためておめでとう。諸君には、プラチナ級として相応のふるまいを期待する。それでは、解散!」
こうして、長かったプラチナ級昇格試験は幕を閉じたのですわ。
無人島からの船での移動時間やカードの発行待ち時間などもあって、もう夕方ですわ。
ワタクシもユクシーさんも、明日朝の乗合馬車で家に帰るので今日はミウンゼルの街に泊っていきますわ。
最後にもう1つ、やるべきことがあるのですわ。
ワタクシ、ユクシーさんを連れて殿下に話しかけますわ。
「やぁシャーロットさん、この後――」
「殿下、この後は暇かしら?」
「なんだって!? も、もちろん暇だが――」
「では決まりですわ。ユクシーさんと一緒に、お疲れ様会をやりますわよ! さて、どこに行きましょうか。ワタクシが取っていた宿の近くにレストラン街があったので、そちらに――」
「待った!」
珍しく、殿下がワタクシの言葉を遮りますわ。拳を固く握ってらっしゃいますわ。
「今日はいい天気だね――じゃない! お、美味しい魚料理を出す良い店を知っているんだ。良ければこちらにしないかい? 案内するよ」
「あら、殿下がエスコートして下さるなんて珍しいですわね。どんなお店なのか、楽しみですわ」
「わ、私も楽しみです」
ワタクシの後ろに隠れていたユクシーさんもひょっこりと顔を出しますわ。
「では行こう。馬車も用意してあるんだ」
殿下に連れられて、殿下オススメのお店にやって来ましたわ。
着いたのは、海辺の格調高いレストラン。それも、最上階の個室に案内されましたわ。
「いいですわね~このお店。内装も雰囲気がありますし、窓から見える景色も綺麗ですわ」
「私、こんな高級そうなお店来たの初めて……! どんな料理が出てくるか、楽しみだなぁ」
「2人に喜んでもらえて、僕も嬉しいよ」
殿下が机の下でガッツポーズをしていますわ。本当に嬉しいのでしょうね。おもてなし精神が凄いですわ。
「そう言えば殿下に紹介していませんでしたわね。こちらはユクシーさん。この街に来る途中の馬車で知り合った友達ですわ」
「よ、よろしくお願いします」
ユクシーさんがペコリと頭を下げますわ。ユクシーさん、ワタクシが差し上げた蛇さんの牙から取り出した何かの液をずっと大事そうに持ち歩いているのですけれども、何に使うのでしょうか?
「そしてこちらの殿方は――」
ワタクシからあまり殿下の素性を話してしまうのも良くないですわね。
ワタクシは殿下に目配せしますわ。
殿下は仮面を外して。
「ユルケヤ王国第一王子、アウゼス・ユルケヤだ。気を遣わず、プラチナ級冒険者仲間として気楽に接してほしい。よろしく」
ユクシーさん、硬直してしまいましたわ。
「ほん、もの……!?」
「ワタクシが保証しますわ。この方、本物の王太子ですわ」
ユクシーさん、泣きそうな表情になっていますわ。
「本物のアウゼス王太子だぁ……! えと、私、アウゼス王太子の大ファンです……!! お会いできて、本当に、本当にうれしいです……」
「あら、ユクシーさん、アウゼス殿下のファンでしたの?」
「うん。アウゼス王太子っていえば、国中で一番ファンが多いんだよ」
……知りませんでしたわ。
「殿下、意外と女性たらしですのね」
「待ってくれシャーロットさん! 誤解だ誤解だ! 僕からは一切女性に対してアプローチしたことはないんだ。その点だけ信じてくれ」
手をブンブン振って弁明しますわ。
……逆にここまで否定すると、なんだか怪しいですわ。
「私ね、モンスターに村を襲われてお父さんとお母さんが死んじゃって、妹の面倒も見ないといけないから全然お金が無かったんだけど……自由に使えるほんの少しのお金は全部殿下のグッズに使ったんだ! ブロマイドとか」
「ブロマイドって……何かの役に立つんですの?」
「うん! 辛い時や苦しい時に、ブロマイドを容器ごと抱きしめると元気が湧いてくるんだ!」
そこで殿下が切り出しますわ。
「そういえば、レストランに来る途中気になっていたんだが。もしかして君の今着けているベルトも……」
「はい。さり気なく王家の紋章と殿下のイメージカラー取り込みながら普段使いできるようになった王家公認アウゼス王太子グッズです。分かる人だけ『あ、この人もアウゼス王太子推しなんだ』って分かるようになってるんです」
「あらあら? 随分商魂逞しいですわね、殿下?」
「ご、誤解だシャーロットさん! 確かに王家公認だがこれは僕の起案ではなく財務部が無理やりに……」
またまた殿下が手をバタバタさせますわ。
「殿下、こんなに熱心に慕ってくださるかわいらしいファンは大事にしないとだめですわよ? サービスで握手くらいしてあげたらどうですの?」
「もちろんいいとも」
殿下は手を差し出しますわ。
「ひゃあ!」
ユクシーさん、急いでナプキンで手を何度も拭いますわ。そして恐る恐る、アウゼス殿下の手を握りますわ。
「凄い。生殿下と握手できるなんて……」
ユクシーさん、目に涙をにじませて喜んでいますわ。
楽しそうですわね~。
「ありがとうございました! 一生の思い出にします!」
ユクシーさんが楽しそうで何よりですわ。
……折角ですしなんだかワタクシもやってみたくなってみましたわ。
「殿下、ワタクシとも握手してくださる?」
と言って。ワタクシ殿下の手を握ってみますわ。
「ひゃあ!」
殿下がすっとんきょうな声を出しますわ。
「あら? 子供のころはワタクシの方が大きかったのに。いつの間にか殿下の方がずっと大きくなっていますわね。それに逞しくなって」
ワタクシ、殿下の手と自分の手を合わせて大きさを比べてみたりしますわ。
「ままま、待ってくれシャーロットさん。急にそんなことされると、刺激が強すぎる……!」
殿下は何か言いたそうにバタバタしてらっしゃいますわ。
「わあああぁ……! 殿下のメロメロ骨抜き照れ顔だぁ! 普段のキリっとしている殿下も格好いいけど、恋愛よわよわのタジタジ殿下も可愛くてイイ、推せる……!」
ユクシーさんは何やら楽しそうですわ。
「シャーロットさん、アウゼス殿下をよろしくお願いします」
ユクシーさんが、ペコリと頭を下げますわ。
分かりますわ。殿下を幼馴染としてサポートしてあげてということなのですわね。殿下はポンコツだから不安になるのですわね。
そうしているうちに、待ちに待ったお料理が来ますわ。
前菜の、サーモンのカルパッチョですわ。
「やったぁ、私サーモン大好き!」
「ワタクシもですわ!」
「僕もだとも」
「「「頂きます」」」
こうして、とても楽しいプラチナ昇格試験お疲れ様会の時間が過ぎていきましたわ。
そして翌日の朝、ワタクシは乗合馬車で元の街に帰りましたわ。
「おかえりなさいませッスお嬢様!」
玄関からマリーが飛び出してきてワタクシに抱き着いてきますわ。
「お嬢様、寂しかったッス~!」
「あらあら。ワタクシもマリーに会いたかったですわ」
ワタクシはマリーの頭を撫でますわ。相変わらず何時間でも撫でたくなる触り心地ですわ……!
「マリー、早速だけどパンケーキを焼いてくださる? お腹が空いてしまいましたわ」
「了解っス!」
マリーが元気にキッチンの方へ走っていきますわ。
こうしてワタクシ、元の生活に戻って来ましたわ。
――そして翌日。
「さぁ、今日はあのお祭りを邪魔したモンスター“レッドワイバーン”を食べに行きますわよ!」
プラチナカードを持っているワタクシは、レッドワイバーンさんの棲むという渓谷にも出入り自由になったのですわ!
レッドワイバーンだけではありませんわ。渓谷には、まだ見たことのない美味しいモンスターさんがたくさんいるはずですわ!
早速食べに行きますわ~!!
これにて1章完結になります!
第二章も冒頭数話(仕上げ待ちの)ストックがあるので、そんなに間が開くことなくお出しできると思います!
コミカライズ共々よろしくお願いいたします!