第60話 島に眠るモンスター
――そのモンスターが発見されたのは、40年前のことである。
発見したのは冒険者ギルドの調査部隊。無人島の調査をしていた時のこと。
突如、3つの頭をもつ巨大な蛇に襲われた。
『まるで、地平線が絡まりあって動いてるみたいだった』
最初に発見した冒険者はそう語った。
調査部隊の精鋭が武器と魔法によって討伐を試みたが、まるで歯が立たず撤退。
船へ戻って砲撃での討伐を試みて、ダメージを与えることに成功するも討伐には至らず。モンスターからのブレスによる反撃を受けて、船は半壊した。
その後冒険者ギルドは数年にわたり彼のモンスターの討伐計画を繰り返し実施するも、討伐は失敗に終わった。
しかし生態調査を続けるうちに、彼のモンスターは島から出ようとせず、また1年に一度決まった時期にしか活動しない、ということが判明。彼のモンスターは、洞窟で眠っているところを刺激しない限り危険はないと判断された。
この島に最も近い港町ミウンゼルの冒険者ギルドには、ある設備が用意されている。
ミウンゼルの冒険者ギルドには巨大な地下通路があるのだが、これは彼のモンスターを抹殺するためのものである。
万一彼のモンスターが海を渡りミウンゼルを襲撃してきた場合、モンスターが好むフェロモンをつかってこの地下通路に誘導し、建物を起爆。
地下通路天井に仕込まれた巨大ギロチンの刃に冒険者ギルドの建物全ての重さを乗せて、確実に抹殺する。
有事の際には建物全てを犠牲にしても彼のモンスターを討伐するという、冒険者ギルドの覚悟の表れの設備である。
彼のモンスターは、『まるで地平線が絡まり合って動いてるようだ』という発見者の発言から『地平の結び目』と呼ばれている。
そして“地平の結び目”は今、洞窟の爆破によって目覚めようとしていた。