第6話 (プチざまぁ回)乱暴な殿方が絡んできますわ
レストランで、ワタクシに大柄な殿方が声をかけてきますわ。
「オレ様はこの冒険者ギルドで最強。レベルはなんと、“8”だ。“圧倒的な実力差”って奴を、思い知らせてやるぜぇ!」
だからその“レベル”という数字は一体なんですのー!?
「お嬢ちゃん、いい洋服着てさぞかしお金持ちなんだろ? どうせさっきのモンスターの素材だって、金の力で買い集めたものなんだろ?」
「違いますわ。ワタクシが自分で倒したモンスターの素材ですわ。受付の方にも、それはちゃんと確認していただきましたわ」
「どうだかな。受付の嬢ちゃんにワイロでもコッソリ渡したんじゃねぇのかよ? 安い給料の受付嬢なんて、金貨でも握らせればなんでも言うこと聞いてくれるだろうからよ」
まぁ、失礼な方ですわ。ウェイトレスさんに謝ってほしいですわ。
「金でカードのランクを上げようなんて不届き者にはお仕置きが必要だな。財布の中身と着てるモン全部おいていきな。さもなくば――痛い目を見ることになるぜぇ!」
そういって殿方は拳を振りかぶって――
ワタクシに向かって殴り掛かって――
『自動迎撃スキル“オートカウンター”が発動します』
吹っ飛びなさいましたわ。
「ぽぎゃあああああああああああああああああああああーーーー!!」
なんだか愉快な悲鳴を上げて、吹っ飛んで行ったのですわ。
開いていたドアから外へ飛び出し、大通りを突っ切って、広場の噴水に激突しましたわ。
そしてそのままぐったりしていますわ。気絶していらっしゃるのかしら?
「なんだったのかしら、あの方……」
一方的に因縁を付けて一方的に殴りかかってきてその上勝手に吹っ飛んでいくだなんて、不思議な方ですわ。
怖かったですわ~。
それにさっき“オートカウンター”というへんな耳鳴りもしましたわ。
ワタクシ、もう疲れましたわ。
「シャーロットさん、お疲れ様です。あの男、腕だけは立つのですが迷惑行為ばかり繰り返していてギルドでも手を焼いていたのです。ですが、シャーロットさんにかかればイチコロですね」
そういって、さっきのウェイトレスさんが笑顔で話しかけてきて、親指をグッと立てなさいます。
……もしかして、ワタクシがさっきの殿方を吹っ飛ばしたことになっています?
濡れ衣ですわー!
「あの、ワタクシは何もしていなくて――」
「ふふ。何もしていないだなんて、とんだ御謙遜を。ところで、クエストは受注されますか?」
「クエ、スト……?」
なんでしょうクエストって?
また初めて聞く言葉が出てきましたわー!
「クエストとは、モンスターの討伐依頼です。クエストを受注してから指定されたモンスターを討伐すると、報酬を貰うことができます。モンスターを倒した後でクエストを受注しても報酬は貰えないので、ご注意ください」
モンスターを倒すと報酬が受け取れるだなんて、かわったレストランですわね。
報酬って、何が貰えるのでしょう? レストランの値引き券とかかしら?
面白そうなシステムですわ。でも……。
「ごめんなさい。クエストは受けないわ」
「クエストを、受注しないですって……!?」
ウェイトレスさんが、信じられないといった顔でワタクシを見ますの。ワタクシ、そんな変なことを言ったかしら……?
「だってワタクシ、倒すモンスターは自分で決めたいの。誰かに倒すモンスターを決められるなんて、イヤですわ」
実はワタクシ、ワガママな性格ですの。
「し、しかしそれでは報酬が……」
その時、ワタクシは聞きましたの。
「――大変だ! 街の北の畑を、超巨大イノシシモンスター“グランドボア”が荒らしまわってるらしいぞ」
「本当か!? 早く討伐しないと街の食料危機じゃないか!」
「だけどあんな強力モンスターと戦うなんて無茶だ! 街の冒険者全員で掛かっても、半分は死ぬぞ……」
「それでもやるしかないだろう。やらなきゃ街の人間まとめて飢え死にだ。あと数時間もすればクエストが発行されるはずだ。それまで、最後になるかもしれない飯でも味わって喰おうや」
「そう言えば、グランドボアの肉は美味いと聞くな。生き残って、何としてもありつきたいもんだ」
――という、噂話を。
美味しいお肉のモンスターが出現した……!?
決めましたわ。
ワタクシ、そのグランドボアというモンスターを食べますわ!
――お肉というのは、肉食動物より草食動物のほうが美味しいと相場が決まっていますわ。
狼のお肉でさえ、ワタクシのギフトであんなにおいしくなったのですもの。元々美味しいと噂のグランドボアのお肉がどれほど美味しくなるか、想像するだけで涎が止まりませんわ~!
他にも何やら食料危機がどうとか半分死ぬとかなんとか言っていた気がしますけど、忘れましたわ。
ワタクシ今、イノシシの美味しいお肉のことしか考えられませんわ~!
「ねぇ受付のあなた。あの“街の北の畑”というのはどちらにいけばいいのかしら?」
「北の畑は、こちらになります」
受付のウェイトレスさんが、地図に印を付けて渡してくださいます。
「ではワタクシ、行ってまいりますわ」
「待ってくださいシャーロットさん、クエストは――」
「クエストが発行されるのなんて待っていられませんわ~!」
誰かに先を越されたら大変ですもの。
美味しいお肉を頂くのはワタクシですわ!
ワタクシは急いで畑へ向かいましたわ。
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