第59話 “討伐不能”と呼ばれたモンスターが目を覚ます
デビュー作『最強ギフトで領地経営スローライフ~辺境の村を開拓していたら英雄級の人材がわんさかやってきた!~ 1』
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――深夜。少し時は遡る。
ユクシー・サラーティは息を殺して、ひっそりとシャーロットの寝ているベッドから抜け出した。
「シャーロットお姉さん、本当にごめんなさい……」
そうつぶやくと、ユクシーが持っていた冒険者ギルドのペンダント2つを、枕元に置いた。
音を立てないように細心の注意を払い、ユクシーは自分の荷物と装備を身に着け、テントの外に出る。
「この数日、本当に楽しかったなぁ」
名残惜しさがユクシーの胸の中に渦巻いている。本当は、あの温かいベッドに戻りたい。シャーロットと一緒に、またモンスターを料理して食べたい。
だがユクシーには、どうしてもやらなければならないことがあった。
「じゃあね、シャーロットお姉さん」
そう言ってユクシーは1人歩きだす。
ユクシーが向かったのは、島の中央にある巨大洞窟。月明かりに照らされる看板には、立ち入り禁止と書かれている。
ユクシーは洞窟を封鎖している鎖を【錬金術】で破壊して禁断の洞窟に迷いなく踏み込んだ。
慎重に、慎重にユクシーは洞窟の奥へと向かっていく。
途中、小型モンスターが何体か襲ってきたが、ユクシーは素早い身のこなしで攻撃をかわし、ハンマーで一撃で仕留めていく。
そしてユクシーは洞窟最奥にたどり着く。
「……見つけた」
そこには、巨大なモンスターが眠っていた。
それは、胴の太さが優にユクシーの背丈の倍以上ある巨大な蛇。
とぐろを巻いており、その全長はどれほどになるのか推しはかることすらできない。
「待っててね、エレナ」
ユクシー・サラーティはある事件が起きた日からずっと、あるモンスターの毒に侵された妹エレナを助けるために行動していた。
解毒の方法を探し求めて、国中を駆け巡った。そしてようやく妹を助けるための方法にたどり着いた。
それは、とある蛇モンスターの毒液から作られる、あらゆる毒を無害化する“完全解毒薬”。
そして今、その蛇モンスターがユクシーの前で静かに眠っている。
「かならず、助けてあげるからね」
ユクシーの目には決意の炎が燃えている。
ユクシーは静かに洞窟の壁を堀り、シャーロットと協力して作った火薬を深く埋め込んでいく。
1箇所が終われば次へ。ユクシーは次々と洞窟に火薬を埋め込んでいく。
大きな物音を立てれば、蛇モンスターが目を覚ますかもしれない。
ユクシーは額の汗を慎重に拭う。
そして最後の火薬を仕掛け終わると、今度は時限式の点火装置をつなげていく。
(これで、よし)
ユクシーは、物音を立てないように、それでいて急いで洞窟の出口へ向かう。洞窟の外で月を見上げて、ユクシーはようやく息をつく。だがまだ緊張は緩めていない。
「……時間だ」
洞窟の奥で、爆音が響く。
支えを失った洞窟が崩落する。
“ズズウウゥン……!”
島の大地が揺れる。洞窟の天井が落ちて、洞窟奥深くで眠っていた蛇モンスターを襲う。
「これで死んでくれれば楽なんだけど……」
ユクシーの期待を裏切るように、瓦礫を押しのけて巨大な何かが姿を現す。
ここからクライマックスに向けて少し重い展開が続きます。
早く明るい展開に辿り着いていただける様、ここから数回毎日更新していきます!








