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第50話 海底で優雅にロブスターさんを頂きますわ

「海底散歩は楽しいですわ~!」


 ワタクシ今、海底を歩いていますわ。


 船がいきなり沈んだのは驚きましたけれども。魔法“バブル”のおかげでなんとかなりましたわ。


「やはり海は深いですわね」


 前に湖の底を散歩した時とは比べ物にならないくらいですわ。光もまるで差しませんわ。


 まぁ、ワタクシは夜目が利くのでこの程度の暗さはなんともないのですけれども。


「さぁ、のんびりと島を目指しますわ」


 外を見ると、お魚さんが沢山泳ぎ回っていますわ。


 中には美味しそうな大きなお魚さんもいますわ。網でも持ってくれば捕まえられたかもしれませんのに。残念ですわ。


「あら?」


 海底すれすれのところを、巨大な何かが凄い勢いで飛んでいきますわ。あれは何でしょう……?


 ワタクシ、気になって追いかけてみましたわ。


「あれは……貝ですわ!?」


 ワタクシでは抱えきれないほど巨大な二枚貝が、殻を開けたり閉じたりして海底を素早く移動していますわ!


 図鑑で読んだことがありますわ。


 貝というのは一見大人しくてじっとしているイメージですけれども、実は海の中では結構活発に動き回っていると。初めて海の中の貝を見ましたけれども、まさかこんなに生き生きとしてらっしゃるとは思いませんでしたわ。


 それはそれとして。


「美味しそうですわ……!」


 あの貝さんは大きさからして間違いなくモンスター。ワタクシが魔法で倒せばお料理にできますわ。


 あれだけ大きい身体ですもの、中にある貝柱も当然大きいはずですわ。


 “貝柱”。貝の中でも、特に美味しい部位ですわ。


 残念なことに、貝柱は1匹の貝から少ししか取ることができませんわ。


 でも! あの大きさの貝ならば、貝柱だけでお皿いっぱいの大きさがあるはずですわ。


「貝柱だけの貝のステーキ! 楽しみですわ~! あら?」


 そんな時、貝さんを何かが凄いスピードで追いかけてきましたわ。あれは――


「巨大ロブスターですわ~~!!」


 胴体だけでワタクシと同じくらいの大きさがある巨大なロブスターさんが、貝さんを追いかけていますわ。


 なんだか、凄い迫力ですわ……!!


 貝さんはきっと、あのロブスターさんから逃げていらっしゃいましたのね。


 あっという間にロブスターさんが貝さんに追いついて、そして――!


“バキィ!!”


 大きなはさみで貝さんをたたき割ってしまいましたわ。


「ワタクシの貝柱ステーキが~~!!」


 ロブスターさんは貝さんを器用にハサミを使ってあっという間に食べてしまいましたわ。


 とっても美味しそうに食べてらっしゃいますわ。


 少しでいいから分けてほしいのですわ……!


 ワタクシの声が聞こえたのか、ロブスターさんがワタクシの方を見ましたわ。そして、今度はワタクシに向かってハサミを振り上げながら突撃してきましたわ。泡のドームを突き破って、中に入ってきましたわ。


 今度はワタクシを食べるつもりなのかしら?


「でも残念、食べられるのは貴方の方ですわ! “プチファイア”ですわ!」


 ワタクシの魔法が当たると、ロブスターさんは炎に包まれて――


「ローストになりましたわ!」


 大きなお皿の上に、ドーンとロブスターのローストが乗っていますわ!


 胴体は真っ二つに割られていて、白い肉を惜しげもなく晒していますわ。そして、その上にソースがかかっていてもはやその姿は官能的ですらありますわ子供に見せたら教育に悪いですわ。


 そしてジューシーな香りが漂ってきてワタクシを誘惑するのですわ。


「そんなに誘われたら、ワタクシもう我慢できませんわ! 頂きますわ!」


 ワタクシは早速ナイフでお肉を切り出しますわ。ナイフからぷりっぷりの触感が伝わってきますわ! 意味が分からないことを申し上げますけど、もうナイフで切り出しているだけで美味しいのですわ!


 そしていよいよ実食! ワタクシは香りたっぷりのお肉を口に運んで――


「美味、ですわ……!」


 ぷりっぷりの触感。濃厚な味わい。溜まりませんわ~!


 口の中を通して、このロブスターさんが生きてきた歴史が伝わってきますわ。


 ―― 一説によれば。


 ロブスターは、とても長生きの生き物だそうですわ。不思議なことにロブスターには老化という概念がないそうですわ。


 外敵に食べられてしまったり脱皮に失敗してしまって死ぬことはあっても、年老いて死ぬということはないのだといいますわ。


 このロブスターさんはモンスター。通常のロブスターと同じ生態かは分かりませんけれども、ある程度は似ているはずですわ。


 きっとこのロブスターさんも、脱皮を繰り返しながら少しづつ大きくなってきたのでしょう。一体どれだけの年月を生きてきたのかは想像も付きませんわ。


 辛い日も苦しい日もあったでしょう。エサが取れなくてひもじい日もあったでしょう。天敵に追いかけられて死を覚悟した日もあったでしょう。でもそんな日々を乗り越えて今日まで生きてきたのですわ。その年月が味の深みになって、ワタクシの口の中で爆発していますわ。


 つまりなにが言いたいかというと。


「とぉ~っても美味しいのですわ!」


 ロブスターさんを食べる手が止まりませんわ!


 食べているときは口の中が幸せ。


 ぷりぷりのお肉をナイフで切り分けていても手に触感が伝わってきて幸せ。


 ロブスターというのは素晴らしいですわ~!


 ワタクシは休みなくロブスターさんのぷりぷりのお肉を食べ続けますわ。


 そして。


 いよいよワタクシ! ロブスターさんのハサミにも着手しますわ!


「ロブスターさんのハサミ、何度見ても美味しそうな形をしていますわ……!」


『この中にはぁ! ぷりっっっっぷりの美味しいお肉がぁ! たぁっっくさん詰まっていまぁす!!』


 と主張するこのフォルム! 堪りませんわ~!


 ワタクシがまだ小さかった頃の話ですわ。


 お屋敷の料理人が、仕入れてきた生きたロブスターさんを見せてくださったのですけれども。


 そのハサミ(安全のためにヒモで縛られていましたわ)があまりに立派だったのでワタクシ思わずほおずりしてしまいましたわ。


 あとで父上に大層怒られたのですけれども、同じことをしている人はきっとたくさんいると信じておりますわ。


 ……いますわよね?


 ロブスターのハサミというのは実は左右非対称で、左右それぞれ役目があるのですわ。


 貝の殻など固いものを砕く“クラッシャー”。魚の肉など柔らかいものを引き裂くための“カッター”。クラッシャーの方が太くて、カッターの方が細長いですわ。


 ロブスターさんのハサミのどちらがクラッシャーとカッターになるかは個体によって違うらしいですわ。今回のロブスターさんはワタクシから見て右側がクラッシャーですわね。


「では、ハサミを頂きますわ……!」


 まずはクラッシャーから。


 ハサミの片側を持って。関節を逆に曲げて。


“バキィ!”


 小気味よい音を立ててハサミが折れて、香ばしい匂いが広がりますわ。


 そしてここからが難しいのですけれども。このハサミを、お皿と一緒に出現した専用の大きなハサミで割っていきますわ。


 普通のロブスターさんを食べるときでもこの作業は中々力が要るのですわ。まして今回は巨大ロブスターさん。ワタクシの細腕でこの立派なハサミが割れるか不安ですわ。


“バキバキバキバキバキバキィ!!”


 割れましたわ。


 いとも簡単に割れましたわ。


 こんなにおいしくてボリュームもある上に食べやすいだなんて、まるで食べられるために生まれてきたかのようなモンスターさんですわ!


 ということで早速クラッシャーハサミの実食ですわ!


 ぱくり。


「食べ応えたっぷりですわ~!」


 クラッシャーハサミは固い物を破壊するためにとにかく筋肉質ですわ。


 ムキムキですわ。


 ボディービルダー海中部門優勝間違いなしですわ!


 プロテインを主食と勘違いしているんじゃないかと疑うほどですわ!


 そのぎゅっと引き締まった身の歯応えと言ったら、もはや格別ですわ~。


 さて、次はカッターハサミを頂きますわ。


 こちらも先ほどと同じように関節で折って殻を割りますわ。


「こちらは……旨味が凄いですわ!」


 筋肉の引き締まり具合はクラッシャーハサミに一歩劣りますが、その分旨味がジュワアアアァッ! と口の中で広がるのですわ~!


「ワタクシ、選べませんわ……」


 ワタクシ最初クラッシャーハサミとカッターハサミどちらが美味しいか食べ比べをするつもりでしたの。ですが、これは甲乙つけがたい美味しさですわ。


 歯応えのクラッシャーハサミと旨味のカッターハサミ。


 どちらも美味し過ぎて、決めることなんてできませんわ~!


 両者優勝ですわ!!


 ロブスターさんもきっと、この素晴らしい二種類のはさみを使い分けて今日まで生き延びてきたんですのね。


『モンスターを食べたことによりレベルが1上がりました』


『バンデッドロブスター捕食ボーナス。重力魔法“グラビティプレス”を修得しました』


 そしてまた、ワタクシ使える魔法が増えましたわ。


「重力魔法……? なにやら変わった魔法ですわね」


 とりあえず、近くに転がっている岩に向かって試してみますわ。


「“グラビティプレス”ですわ!」


 すると。


“バキバキバキ!”


 岩がまるで見えない巨大な手に握りつぶされたかのように砕けてしまいましたわ。


「相手を重力で潰す魔法、ということなのかしら」


 モンスターを倒してもあまりお料理にはなりにくそうですわね……。


 その後ワタクシは歩いて、無事に試験会場の島にたどり着くことができましたわ。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


◇◇◇シャーロット・ネイビー◇◇◇


◇◇◇パラメータ◇◇◇

LV:68


HP:64/64


MP:101/101


筋力:56


魔力:84


防御力:69(+ボーナス105)


敏捷:49


◇◇◇スキル◇◇◇


〇索敵LV8


〇オートカウンター(レア)


〇無限アイテムボックス(レア)


〇状態異常完全遮断(レア)


〇オートヒール(レア)


〇全属性魔法耐性LV10


〇ナイトビジョンLV2


◇◇◇使用可能魔法◇◇◇


〇プチファイア


〇プチアイス


〇パラライズ


〇ファイアーボール


◯ステルス


〇トルネード


〇ウォーターショット(威力++++)


◯バブル


〇グラビティプレス [New!!]


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


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