第40話 (王太子side)高みを目指してプラチナ級冒険者試験を受けることにする
シャーロットが試験会場に向かう数日前。
ミウンゼルにある、冒険者ギルドの支部の支部長室にて話し合いが行われていた。
「……確かに、これだけの数のモンスター討伐実績があれば、通常であればプラチナ昇格試験を受ける資格はありますな」
机の上には、大量のモンスターの素材が並べられている。ゴブリンやトロール討伐の証である腕輪。更にはモンスターの牙などなどが机の上に山盛りになっている。
それを見て、中年の冒険者ギルド支部長が顎髭を撫でる。
向かい合っているのは、アウゼス王太子だった。背後には武器を携えた護衛も立っている。
アウゼス王太子は、何度か以前にやったような『モンスターを王国騎士団に追い込ませて自分が狩る』という修行を行っていた。机の上に並んでいるのは、まぎれもなくアウゼス王太子が狩ったモンスターの素材である。
「しかしながら。モンスターにトドメを刺したのは殿下ですが、モンスターを1箇所に追い込んだのは王国騎士団。このようなケースは前例がありません。これだけでは、殿下にプラチナ昇格試験を受ける資格があるとは言えません。冒険者ギルドは、実力絶対主義。たとえ現国王陛下がお越しになられようと、実力のない方を昇格させるわけにはいきません」
「構わない。むしろ、特別扱いなどされては困る。実力で勝ち取ってこそ、意味があるものだからな。……僕はもっと強くなりたい。あの人の隣に立つにふさわしいほどに、強くなりたいんだ。そのために、より強いダンジョンへ赴き、より強い者達と切磋琢磨したい」
「ええ。プラチナ冒険者となれば、殿下はきっと想像もしたことのないような強きモンスターや強き冒険者と巡り合えるでしょう。……では、殿下にプラチナ試験を受ける資格があるか、追加試験を行いたいと思います」
アウゼス王太子達と冒険者ギルド支部長は、冒険者ギルド裏手にある訓練場へと移動する。
訓練場で、支部長とアウゼス王太子が剣を持って向かい合う。もちろん、訓練用の、木製の剣に布を巻きつけたものだ。
「私はこれでもかつてプラチナ級より上のアダマンタイト級冒険者として、ダンジョン攻略の最前線で戦った身。一線を退いたとはいえ、まだまだ衰えてはいませんぞ。私に一撃でも入れられれば、殿下のプラチナ級受験を認めましょう」
冒険者ギルド支部長が剣を構える。
「では、はじめ!」
両者が突撃し、剣を交わす。
「ぬぅ!?」
幾度も剣が交差し、乾いた音を立てる。剣の打ち合いで、アウゼス王太子が完全に押していた。
(馬鹿な! スピード、パワー、技術そして技の組み立て! 全てが私より上だと!?)
冒険者ギルド支部長が驚愕に目を見開く。
(その若さで、全盛期の私を超えるその力……! いったいどれほどの執念、どれほどの鍛錬を積んだというんだ! 何が殿下をここまで強くするというのか!?)
冒険者ギルド支部長は、アウゼス王太子の涼しげな顔の奥に煌々と燃える執念の炎をみた。
そしてあっという間に決着がついた。
冒険者ギルド支部長が膝をつき、肩で息をしている。対するアウゼス王太子は涼しい顔をして立っていた。
「これで、僕のプラチナ級昇格試験の受験を認めてくれるかな?」
「もちろんでございます……! どころか、一次試験免除の推薦状を書かせていただきたいくらいですよ」
「言っただろう、特別扱いは不要だと。……だが、僕もあまり公務を放り出して冒険者業にかまけている等という噂を立てられても困るからな。偽名での冒険者登録は可能かな?」
「もちろんですとも。冒険者ギルドは実力絶対主義。実力のないものを昇格させることはありませんが、それ以外でしたら融通が利く組織。その程度の便宜はいくらでも図りましょう」
「助かるよ」
こうして、プラチナ試験に、アウゼス王太子改め仮面の冒険者アウロフが参加することとなった。
――――――――――――――――――――
――ワタクシ、ミウンゼルにあるプラチナ昇格試験の会場に来ましたわ。
いよいよ、試験が始まるのですわ。
試験会場は、大きな建物。
集まっているのは、ざっと100人といったところでしょうか。ずいぶん多いですわ。
「シャーロットお姉さん、おはようございます!」
「あら、ごきげんようユクシーさん」
ユクシーさん、今日もかわいらしいですわ~!
小さな体にやる気をみなぎらせていますわ。
「みなさん、静粛に」
建物に低い声が響きますわ。
受験生たちの前に、大柄な殿方が現れますわ。筋骨隆々で、いかにも力が強そうですわ。
「俺は一次試験担当の試験官、ガノガンだ。早速だがプラチナ昇格試験の説明をさせてもらおう。君たちには今日から、全部で4つの試験を受けてもらう。一次試験は、基礎身体能力試験」
試験官さんが扉を指さしますわ。
「今からあの部屋に1人ずつ入って、筋力と魔力を計測させてもらう。合計点が基準を超えれば一次試験合格、簡単だろう? 基準に満たない者は、即帰ってもらう」
こうして、プラチナカードを手に入れるための試験が始まりましたわ。
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