第39話 ポイントカードのプラチナ昇格試験に挑みますわ
今回から、新章開幕です!
「お祭りを邪魔した、レッドワイバーンはどこに棲んでいらっしゃいますの?」
ワタクシ、今日もレストラン“冒険者ギルド”へ来ていますの。
ウェイトレスさんに、あのお祭りを邪魔したモンスターさんの居場所を尋ねていますわ
「シャーロットさん、レッドワイバーンを討伐しに行くのですか?」
「ええ。来年のお祭りのときにまた邪魔されては困りますもの。今度はこちらから出向いて差し上げますわ」
それに、あのモンスターのお肉を食べてみたいとも思っていますわ!
翼が生えていたりして形は鳥に似ていますけれども、鱗があったりとトカゲに近いですわ。一体どんな味がするのか、想像するだけで涎が止まりませんわ~!
「流石シャーロットさん、素晴らしい心意気です。が、1つ問題がありまして……」
ウェイトレスさんが、カウンターから地図を取り出しますわ。
「レッドワイバーンの巣があると言われているのは、この“ロートナウ渓谷”です。が、ここは大型モンスターが多く生息していて、入るにはプラチナ(冒険者)カードが必要となります」
「なるほど、プラチナ(ポイント)カードが必要ですのね」
なんでレストランがモンスターさんの生息地域の管理をしているのかはわかりませんけど、VIP会員専用の美味しいモンスターさんの狩場ということですわね。
「そして、今回のお祭りでレッドワイバーンを撃退したことで、貢献度ポイントが溜まりまして……。シャーロットさんはなんと、プラチナ昇格試験に挑戦できるようになりました!」
「まぁ!」
なんだかよくわかりませんが、とりあえず嬉しいですわー!
「試験は1週間。過酷な試験です。この試験をクリアすると、晴れてプラチナ(冒険者)カードが手に入ります」
不思議ですわ。
レストランのポイントカードのランクを上げるのに、そこまで必要なのかしら?
「プラチナカードを貰うだけなのに、どうして1週間もかかる過酷な試験を受けなければいけないのでしょう? おかしいと思うのですわ」
「プラチナカードというのは、それほど格調高く、価値があるものだからです。モンスターを沢山狩れば誰にでも渡せるものではありません。プラチナカードを手にする資格があるか、しっかりと見定める必要があるのです。ですから1週間もの長い期間の試験があっても、なにもおかしいことはないのです」
なにもおかしくないそうですわ。
ワタクシ、侮っていましたわ。
VIP狩場に入るには、それ相応の品格が求められるということですのね。
「わかりましたわ! ワタクシ、プラチナ昇格試験を受けますわ!」
「そうこなくては! 丁度3日後に、1年に1回のプラチナ昇格試験が開催されます」
というわけでワタクシ、プラチナ昇格試験というものを受けることになりましたわ~!
――2日後。
ワタクシは乗合馬車に乗って、プラチナ昇格試験というものの会場へ向かっていますわ。
乗合馬車というものは新鮮ですわ。
他の方たちと一緒に、大きな馬車に乗って一緒に移動しますの。お屋敷にいたころは、いつも家で所有している馬車を専属の御者に引かせていましたもの。
馬車の中では各々、本を読んだり眠ったり好きなように過ごしていますわ。
目的地は、大都市ミウンゼル。ワタクシの住む町から馬車で半日程の距離ですわ。お父様に連れられて何度か行ったことがあるのですけれど、海があって海鮮料理が美味しいのですわ。
ワタクシ、今晩はパエリアを食べることに決めていますの
馬車は今、山道を走っていますわ。あと1時間もすれば、街に着くはずですわ。初めて乗りましたけど、乗合馬車の旅というのも快適ですわ~。
などと考えていたら。
「大変だ、馬車強盗だ!」
馬車が急停止しますわ。
どうやら道を丸太か何かで封鎖されていた様ですわ。
外を見ると、同行していた馬車に乗っていた護衛さん達が剣を引き抜いて、武器を持って襲ってくる強盗を迎え撃っていますわ。
護衛さん達は頑張ってくださっていますけど、強盗の方が数が多いですわね……。
徐々に護衛さん達が押されてしまいますわ
「わ、私も戦います!」
そこで、同じ馬車に乗っていた小さな女の子が飛び出していきましたわ。
小さい背丈。獣人種……というのでしたかしら。クマのような耳が小さくクセのある髪からピコンと飛び出してらっしゃいますわ。
内気そうな印象だったのですけれど、強盗に立ち向かっていくのは予想外でしたわ。
女の子が足元に生えていた雑草を、籠手で包まれた手で引き抜いて
「ギフト【錬金術】発動……!」
と唱えると、手の中が光りますわ。
「え、えい!」
そして手の中のものを、女の子が強盗に向かって投げつけますわ。
草……では無いですわね。何か別の物に変化していますわ。
“パァン!”
女の子が投げた何かは、強盗達の間で破裂しましたわ。火薬でしょうか? 何人かの強盗が吹き飛んでしまいましたわ。
「えい! えい!」
女の子が草を投げつけるたび、小さな爆発が起きて強盗たちが転んだり吹き飛んだりしますわ。
「やってくれたなぁ!」
護衛さん達と戦っていた強盗のうち何人かが、女の子の方へとやってきますわ。
あんな小さな女の子が戦っているのですもの。ワタクシも、見ているだけというわけには行きませんわね。
「“パラライズ”ですわ!」
ワタクシは、麻痺魔法を使いますわ。女の子に襲い掛かろうとしていた馬車強盗さん達が一斉に麻痺して動かなくなりますわ。
人間相手に魔法を使ったのは初めてですけれど、上手くいって良かったですわ~!
その後人数で有利になった護衛さん達が押し返して、無事に馬車強盗全員を無力化することができましたわ。
怪我人もいませんでしたわ。
「あ、ありがとうございました!」
さっきの小さい女の子が御礼を言いに来ましたわ。可愛いですわ。
「お姉さん、まとめてあれだけの人数を一瞬でまとめて動けなくしてしまうだなんて。凄いです……」
「貴方こそ、あんなに沢山強盗に立ち向かっていって、とても格好良かったですわ」
ワタクシ思わず、女の子の頭を撫でてしまいましたわ。
よく考えたらこの女の子もギフトを使えるのだから15歳以上。
ワタクシとほとんど歳が変わりませんわ。ひょっとしたら歳上かもしれませんわ。
でもワタクシに撫でられて
「えへへ、褒められちゃった……」
と嬉しそうにしているので問題ないのですわ~!
「その魔法の腕前。もしかしてお姉さんも、プラチナ(冒険者)試験を受けに……?」
「ええ、そうですわ。ワタクシはシャーロット・ネイビー。お見知りおきお願いしますわ」
「私はユクシー・サラーティ。よろしくね、シャーロットお姉さん」
まぁ。
まぁ!
まぁ!!
ワタクシ、お姉さんだなんて呼ばれてしまいましたわ!
なんだかとっても面映ゆいですわ~!!
ワタクシ頑張って! お姉さんらしいところを見せますわ~!!