第31話 湖の底を散歩しますわ
★★★★★★お知らせ★★★★★★
本作の書籍化&コミカライズが決定しました!!
刊行時期やレーベルは追って報告します!
ここまで来れたのは、応援してくださった読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございました!
これからも、【パクパクですわ】をよろしくお願いします!
「水属性魔法“バブル”発動ですわ」
ぷくぅ、と。
ワタクシの周りを巨大な水の膜が包み込みますわ。大きさは……今のお屋敷が丸ごと入るくらいでしょうか。大きいですわ。
「なるほど、ワタクシを巨大な泡で包んで守ってくださる魔法ですのね」
膜を突っついてみると、ぶよんという感触がいたしますわ。シャボン玉のように見えて、結構頑丈なようですわ。
「でもこの魔法、使い道がイマイチ思いつきませんわね……あら?」
その時ワタクシは気づきましたわ。
泡が、湖の水を弾いていることに。
泡の範囲が湖に掛かって、湖の水を押しやっていますわ。押しやられた部分は、湖の底が露わになっていますわ。
ワタクシが近づくと、泡も一緒に移動しますわ。そして、湖の底もどんどん露わになっていきますわ。
「えいっ」
ワタクシ思い切って、湖の底に足を踏み入れますわ。少し濡れていますが、問題なく歩けそうですわ。
「もしかしてこの魔法を使えば、湖の中をお散歩できるんじゃないかしら」
そうと決まれば早速出発ですわ〜!
ワタクシ、湖の中の方へと歩いて行きますわ。
水深が深くなって、水が完全に泡の上側まで覆っても全然問題ないようですわ。
どんどん深いところまで行きますわ〜。
揺れる藻や泳いでいる小魚を眺めながら、のんびりとお散歩いたしますわ。
この魔法、とっても便利で楽しいですわ〜。
ワタクシ、鼻歌を歌いながら湖の底をお散歩いたしますわ。
「あら、またモンスターさんの気配が近づいてきますわ」
湖の底の方でじっとしている気配があると思っていましたけれど、まさかあちらからきてくださるなんて。
ラッキーですわ〜!
「あれはナマズさんでしょうか?」
ワタクシを丸ごと飲み込めそうなほど大きなナマズモンスターさんが、こちらに向かってやってきますわ。
でかいですわ。
昔、お父様が教えて下さいましたわ。
ナマズさんは目が悪い代わりに、ヒゲと全身の感覚器官を使って周りのモノを認識しているらしいですわ。
きっとあのヒゲでワタクシを見つけて、丸呑みにしてやろうとやってきたのでしょう。
でも残念ですわ。
“スポーン”
ワタクシに近づいたナマズさんは、泡の膜を突き破り中に入ってきますわ。でも当然中には水がないので、ナマズモンスターさんはワタクシの前で跳ねる事しかできませんわ。
“ビチビチビチ!”
自滅ですわ。
「では早速頂きますわ。“プチファイア”ですわ」
さっきのマスモンスターさんたちと同じように、魔法で焼いて頂くことにしますわ。
現れたのは……。
「フライですわ!?」
ついにきてしまいましたわね、揚げ物。
先ほどももうし上げました通り、美味しいものというのは脂肪と糖分で作られていますわ。
裏を返せば。
油たっぷりである揚げ物は、美味しいに決まっていると言うことですわ。
どんな食材でもフライにすれば美味しく食べられるのですわー!
フライにしても美味しく食べられないものなどないのですわ。
しかし、不安要素はありますわ。
お父様曰く、ナマズとは食用に適さない魚なのだそうですわ。
ワタクシ釣りをしていて何度か、狙っていなかったナマズを釣ったことがあったのですが。お父様に湖に返されてしまいましたわ。
食べてみたかったのに……。
「というわけで、頂きますわー!」
ワタクシ、ナマズさんのフライを口に運びますわ。
「これは……」
さっくさくですわ!
なんて上質な白身肉なのでしょう!
きめ細やかで上品な身が舌の上で踊っていますわ!
そして油で揚げられたことによる香ばしさ!
たまりませんわー!
こんなに美味しいのに食用に適さないなんて、そんなはずありませんわー!
お父様、もしかしてワタクシに嘘をついていたのかしら。
『ナマズは平べったい顔で不細工だしヌメヌメしていて気持ち悪いから食べたくないな。シャーロットにも嘘を教えて食卓に出ないようにしておこう』
だなんて、お父様が考えるはずが……
ありますわ。
お父様、食わず嫌いが多いタイプでしたもの。
それくらいの嘘、ついていてもおかしくありませんわ。
お父様の嘘つきー!
あの日のナマズ、返して下さいましー!
……気を取り直しまして。
今のこの手元にあるナマズさんのフライを美味しく頂くことに専念しますわ。
「ほんっとうに美味ですわ……!」
パクパクですわ。
『モンスターを食べたことによりレベルが1上がりました』
『デーモンキャットフィッシュ捕食ボーナス。常時発動スキル“ナイトビジョン”を獲得しました』
そしていつもの耳鳴りですわ。
「……あら? 辺りが急に明るくなったような……?」
湖の深いところに来るにつれて、段々と陽の光が届かなくなって薄暗くなってきていましたの。
それが今、パァっと明るくなりましたわ。
……いえ、違いますわ。これは、ワタクシの目が良くなったのですわ。
「なるほど、これがお魚さんの力ですのね」
お魚さんには、健康に良い栄養素がたっぷりと含まれていますわ。
特に目玉の周りにはナントカ……カントカという栄養素がたっぷりと含まれていますわ。それに皮にもナンタラカンタラという栄養素がありますの。
とにかく、お魚は健康に良いということですわ! お魚を食べると大抵の体の不調はなんとかなるのですわ。
ワタクシの目が良くなったのも、きっとお魚さんの栄養によるものですわ!
「ゲホッゲホッ」
その時、近くで誰かの咳き込む音が聞こえましたわ。いつの間にやら、近くに上品な身なりのご婦人が倒れていらっしゃいましたわ。
透明感のある白い肌と白いワンピース。長い髪もサラサラでとても美しい方ですわ。
咳き込んでいたご婦人は、ワタクシの方を見るなりこう仰いましたわ。
「先ほど助けていただいた湖の妖精です。本当にありがとうございました」








