第25話 (王太子視点)第一回、シャーロットさんに振り向いてもらうにはどうしたらいいんだろ会議
アウゼス王太子の執務は忙しい。
王太子の身分でありながら、既に多くの仕事を現国王から任されている。
今日も執務室の机で、山のように積まれた書類をさばいている。
書類に目を通し、押印していく。そんな殿下の手がピタリと止まる。
「この商店、店の客入りに対して売上高が異常に少ないな。先週視察した時には、あの店にはもっと客が入っていた。この数字はおかしい」
アウゼス王太子は更に、山から関連する書類を引っ張り出す。
「さらに、同じ通りの商店はどこも似た傾向がある」
「と、いいますと……?」
隣に立つ宰相が首をかしげる。
「脱税を企てているな。恐らく売り上げを少なく見せかけて、納める税金を少なく済ませようという魂胆だろう。店単位ではない。指揮しているのは、商店街を取り仕切っている商業ギルドだろう。詳細に調べてくれ」
「かしこまりました。早速調査員を向かわせます。しかしお見事です、これだけの限られた情報から黒幕まで導き出すとは」
アウゼス王太子は、ただ紙に書かれている数字を見ているのではない。その奥にある数字と物・金・そして民の動きを見ているのだ。
その英知を以て、アウゼス王太子は若くして国力を目に見えて底上げしている。実力は、宰相たちも他の王子たちも認めている。
休むことなく、アウゼス王太子は凄まじい数の書類を処理していく。当然、ただ押印するわけではなく内容を精査したうえで、である。恐るべきことに、まるで疲れた様子はない。涼しげな顔で執務をこなしていくのである。
日が暮れて、ようやくアウゼス王太子の仕事が終わる。
アウゼス王太子は王宮の自室に戻り、ようやく一息つく。
部屋には、使用人のセバスとアウゼス王太子だけだ。
「さてセバス……」
アウゼス王太子の顔が真剣になる。
「今日こそは、シャーロットさんにどうしたら振り向いてもらえるか考えなければならない」
さっきまで涼しげな顔で激務をこなしていた様子とは打って変わり、眉間に深い皴を刻んでいる。
「どうしたら、どうしたらいいのか……」
アウゼス王太子は頭を抱えている。
「ああああどうしたらいいんだあああああ! 教えてくれセバス!」
「殿下、落ち着いてくだされ殿下! 落ち着いてくだされ殿下!」
ベッドの上で転がり始めたアウゼス王太子をセバスが必死に引き上げる。
「デートに、デートにでも誘えばよろしいのではないでしょうか?」
「それは前回失敗してしまったし……。」
「殿下、誤解の無いよう次はちゃんと『僕とデートをしよう』といってチケットを渡せばよいのです」
「それができれば苦労しない……! 『デートしよう』だなんて恥ずかしいこと言う度胸、僕にはないんだ。そんなにはっきり誘って嫌われたらどうしようと、不安でたまらないんだ」
「盗賊団のアジトに乗り込んで単騎で半分を壊滅させた殿下が何をおっしゃるのですか!」
「僕は、無力だ……。シャーロットさんに振り向いてもらうことも、デートに誘うこともできない。僕はなんて無力なんだ……!」
アウゼス王太子は拳を握る。
「僕にできることと言えば、3年で国内総生産額を1.5倍にすることぐらいしか……!」
「十分凄いですぞ殿下! というか凄すぎますぞ殿下! 歴代の王族でそんな偉業達成できた者、殿下以外におりませんぞ! 胸を張ってくだされ!」
「シャーロットさんに振り向いてもらえなければ、こんな数字何の意味もない!」
「ありますぞ殿下! 大アリですぞ殿下! 国民みな生活が豊かになったのを実感して殿下に感謝しておりますぞ!」
セバスが必死にアウゼス王太子を励ます。
「さぁ殿下、一緒に次の策を考えましょうぞ! 殿下の頭脳をもってすれば容易いことですぞ!」
何とか元気を取り戻したアウゼス王太子は、セバスと一緒に策を練り始める。
――3時間後。
「この作戦なら完璧だな」
アウゼス王太子は、作戦を練り上げていた。
「まず調査によると、最近シャーロットさんはモンスターの棲む森をよく訪れているらしい。とても危険だ。そこで、僕が仮面を着けてコッソリとシャーロットさんの後をつける。そして、シャーロットさんがモンスターに襲われたところを、僕が助ける。シャーロットさんが安心してほっとして気が緩む。その時、僕が仮面を外して正体を明かす。心が緩んだ時に、正体が僕であったという衝撃。そして、シャーロットさんは僕を異性として意識してくれる、という算段だ」
「完璧な作戦でございます、殿下」
セバスは手をたたく。
しかしセバスは内心
(作戦そのものは完璧……。しかし何故でしょうな、全くうまくいく予感がしませんぞ……)
と思っていた。
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