第21話 墓地に出没するフワフワ浮遊なさるカボチャを頂きますわ
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「ワタクシ、迷子になってしまいましたわー!」
街の外れの墓地の真ん中。
ワタクシ、来た道がわからなくなってしまいましたわ。
周りを見渡しても同じ形の墓標がお行儀よく等間隔に並んでいるので、方角がわからなくなってしまいましたの。
「困りましたわね……」
とりあえず、あてずっぽうで歩いてみますわ。
幸いなことに、怖い幽霊さんにはまだ出会わずに済んでいますもの。きっと大丈夫ですわ。
ワタクシが閃いた、幽霊に出会わずに済む方法。
それは、昼間に来ることですわ。だって、幽霊は夜にしか出ませんもの。
ワタクシ、冴えていますわ〜。
ただ、ずっとワタクシの周りで何かがチカチカと光っていらっしゃいますわ。
「なんだかわかりませんけど、墓地って意外と賑やかな場所ですわ~」
思ったよりも怖くないですわ。
「さぁ、ジャック・オ・ランタンさんを探しますわよ~」
と言っても、道が分かりませんので適当に歩くしかないのですわ。
どちらでしょう。
こっちをうろうろ。
今はまだお昼前。時間にたっぷり余裕はありますわ。
でも、あんまり遅くなるとマリーに心配されてしまいますわ。
あら?
その時、ワタクシはモンスターさんの気配を感じ取りましたわ。
場所はすぐ近く。でも、モンスターさんは見当たりませんわ。
「とりあえず……“パラライズ”ですわ」
ワタクシは、麻痺作用のある煙を放ちますわ。すると……。
“ギャアアアアア!”
軋むような悲鳴を上げて、顔の彫られたカボチャが地面に落っこちて来ましたわ。中ではオレンジの炎が燃えていますわ。
「なるほど。姿を消す能力を持っていらっしゃるのですわね」
でも耳がいいワタクシには通じませんでしたわ~!
というわけで。
「“プチファイア”ですわ」
“ギャアアアアアアアアア!!”
ジャック・オ・ランタンさんが炎に包まれますわ。
そして……
「カボチャのスープですわー!」
予想通りですわ!
ワタクシ、今朝からもうカボチャのスープの口になっていましたの。カボチャのスープ以外受け付けませんわ。
早速頂きますわ。
「美味しいですわ!」
口の中に暖かさと甘みが広がりますわ。
これはもう止まりませんわ。
ゴクゴクですわ。
「そして今日は、こんなものも用意していますわ……」
ワタクシは例の穴からパンを取り出しましたわ。
そしてパンを、スープに浸しますわ……!
え? 食べ方に品がないですって?
知ったことではありませんわ〜!
周りに誰もいないのですから構いませんわ。
「ますますおいしいですわ~!」
パンの食感が加わったことで、ますます美味しくなりましたわ! パンから“ジュワッ”と溢れ出るスープの旨味が最高ですわ~!!
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『ジャック・オ・ランタン捕食ボーナス。魔法“ステルス”を修得しました』
そしていつもの耳鳴りですわ。
「今回は新しい魔法ですわ。どんな魔法なのか、楽しみですわ~……あら?」
ついていますわ!
もう一体、近くに同じ気配がありますわ!
「折角ですし、試してみますわ。“ステルス”」
魔法を発動した瞬間、ワタクシの身体が透明になりましたわ。
自分の手も胴もなにも見えなくなりましたわ。
不思議ですわ~!
これでジャック・オ・ランタンさんからワタクシは見えなくなったはず。
そしてワタクシは耳がいいので一方的にジャック・オ・ランタンさんの居場所がわかりますわ。
足音を立てないようにコッソリ近づいて……。
“プチファイア”を使おうとして、ワタクシ一つ良いことを思いつきましたわ。
「“プチアイス”ですわ!」
ワタクシはあえて、さっきとは違う魔法を使ってジャック・オ・ランタンさんを倒しましたわ。
すると……。
「やりましたわ! カボチャの冷製スープですわ!」
狙い通りですわ!
早速ワタクシは冷製スープを頂きますわ。
ひんやりとした触感がとても心地よいですわ。
温かいスープとはまた一味違った味わいですわ。
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『ジャック・オ・ランタン捕食ボーナス。魔法“ファイアーボール”を修得しました』
今度は、さっきと違う魔法を覚えられましたわ~。
同じモンスターさんでも、倒し方によってもらえる魔法が変わるみたいですわ。
これはモンスターさんを倒す方法を色々試してみたくなりますわ……。
“バサッ”
その時、空から音がしましたわ。
何かが羽ばたくような、力強い音ですわ。
モンスターさんの気配が、急激にこちらに近づいて来ますわ。
そして、ワタクシの目の前に重々しい音をたててモンスターさんが着地しますわ。
「あれは……石像、ですの?」
どう見ても、石でできたモンスターさんが現れましたわ。
体高はワタクシとさほど変わりないくらい。羽のついた、悪魔を象った石像モンスターさんですわ。
「石像は、流石に食べられませんわよね……?」