第2話 シャーベット美味しいですわ
「シャーベットですわー!?」
スライムさんを魔法で倒したら。
何故かスライムさんがいた場所に、小さなお皿の上に乗ったシャーベットがありましたわ。しかもスプーン付き。
「もしかして、ワタクシのギフトの『倒したモンスターを美味しく食べられるようになる』って『倒したモンスターが美味しい料理になる』という意味でしたの!?」
これは予想外ですわー!
「しかしいくら調理済シャーベットになったとはいえ、モンスターを食べるなんてはしたないこと……」
“ぐううううぅ~”
お腹がすきましたわ。
それにしてもこのシャーベット、なんて美味しそうなんでしょう。
なんて、なんて美味しそうなんでしょう……!
……。
…………。
ぱくり。
誘惑に勝てず、ワタクシはシャーベットを口に運んでしまいましたわ。
その瞬間。
「美味しいですわー!?」
思わず叫んでしまうほどの美味しさが、体中を駆け抜けていきましたの。
ヒンヤリと冷たくて。
シャリっと心地よい食感で。
程よい上品な甘さで。
とっっっっても美味しいですわ!
ぱくぱくですわ!!
あっという間に、皿は空になってしまいましたわ。
こんなにせかせかと食事を口に運んだのは初めてですわ。きっと、お父様が見ていたらはしたないと怒られたことでしょう。
でも、美味しかったのだから仕方ないのですわ~!
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『スライム捕食ボーナス。防御力が5上昇しました』
何かしら。へんな耳鳴りがするわ。シャーベットが美味しすぎて頭がへんになったのかしら?
「ああ、もっと食べたかったですわ……」
用が済んだとばかりにお皿とスプーンも消えてしまいましたわ。
しょんぼりするワタクシの視界の隅で、何かが動きましたわ。
「スライムさんですわー!」
さっきまで怖くて仕方なかったスライムさんが、今は美味しそうに見えてしかたありませんの。
そういえば、ワタクシもう一つだけ魔法を覚えていましたわ。
「火属性魔法“プチファイア”ですわ!」
今度は小さな火の塊が飛び出して、スライムさんに命中。
“ぷきゅん!”
倒しましたわ!
ですが……。
「あれ、シャーベットがないですわ?」
落ちているのは、スライムさんと同じ小さな水色の結晶のようなものだけ。これはさっきのスライムさんの時にも落ちていました。
「うぅ、折角スライムさんを倒したのにこんなのあんまりですわ。ワタクシの、ワタクシのシャーベットはどこですの……?」
ワタクシは必死に探しますが、シャーベットは見つかりませんわ。
でも代わりに……
「スライムさんの群れですわ〜!」
森のあちらこちらに、スライム、スライム、スライム。夢のような光景ですわ!
「お父様、ごめんなさい。ワタクシは、はしたない子になってしまいましたわ……!」
ワタクシは口から涎があふれそうになるのをこらえながら、ふらふらとスライムに近づいていきましたわ。
そして、狩りつくしましたわ。
スライムさん達を倒す中で、ワタクシ一つ気づいたことがありますの。
それは、“プチアイス”の魔法でスライムさんを倒した時だけ、シャーベットが現れるということですわ。
「もしかして、モンスターの調理方法に合わせた魔法で倒さないとお料理にならないのかしら……?」
という訳で。
ワタクシの目の前には、ズラッとシャーベットが並んでいますの!
「頂きますわー!」
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『スライム捕食ボーナス。防御力が5上昇しました』
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『スライム捕食ボーナス。防御力が5上昇しました』
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『スライム捕食ボーナス。防御力が5上昇しました』
――――――――――
「もう食べられませんわー!」
20体程かしら。辺りにいたスライムさん達を食べつくして、ワタクシ大満足ですわ!
相変わらずスライムさんを食べるたびにへんな耳鳴りがしますけど。
「“レベル”や“防御力”って一体なんですのー!?」
意味がわからなくて怖いですわ。
ワタクシが首をかしげていると、後ろからなにか唸り声が聞こえてきますわ。
「お、狼さん……?」
ワタクシよりもずっと大きな狼モンスターが、ヨダレを垂らしてこっちを見ていますわ。
「きゃあああああ!」
『ガルルルルゥ!』
狼さんが、ワタクシの腕に嚙みつきますわ。でも――
“ガキンッ!”
ワタクシのお肌には、何故か傷1つ付きませんわ。
「……もしかしてこの狼モンスターさん、じゃれているのかしら……?」
その時、ワタクシの頭の中に1つ悪い考えが浮かびましたの。
「狼モンスターって、食べたら美味しいのかしら……?」
ワタクシは早速、試してみることにしましたわ。