第15話 害獣を退治しますわ(前編)
「一大事ですわ〜!!」
困りましたわ困りましたわ。
これは大変なことですわ!
ワタクシが毎朝食べている、レストランのサンドイッチ。
なんと今日、レタスが入っておりませんの!
注文するときに『材料の仕入れの関係で今日のサンドイッチには一部野菜が入っていません。代わりにハムを増量しています』とは聞いておりましたけれども。
「ショックですわ〜」
サンドイッチとは、具材のハーモニー。
代わりのハムが多めに入っているとはいえ、完璧なバランスが崩れてしまっていますわ。
ションボリですわ。
なぜ野菜が仕入れられないのか、ワタクシウェイトレスさんに聞いてみましたわ。
「実は、街のはずれにある農家の畑をモンスターが荒らし回っています。農家さんは駆除を依頼するお金もないそうで、被害が拡大しているそうです」
「それは大変ですわ!」
決めましたわ!
ワタクシ、その農家で害獣駆除をしますわ。
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「いやー、本当に困ってるんですよ!」
畑に様子を見に来ると、来て早速農家の娘さんに話を聞いていますわ。
「ウチは街に野菜をおろしている農家のひとつなんですが、“ラージラビット“というモンスターが大量発生して困っているんです!」
ふむふむですわ。
「普段なら駆除依頼を出すんですけど、先月の嵐でだいぶ野菜や建物に被害が出てしまって、とても今依頼できるだけのお金がないんです! このままでは、街の人たちも栄養不足になってしまいます」
「由々しき事態ですわ」
ワタクシもレタス不足ですわ。
「駆除してくれるところに相談したんですが。『力になりたいのは山々なのですが、規則上無償の依頼はできないことになっていまして』と申し訳なさそうに断られてしまいました。だから私達、自力でなんとかしようとしました! ですけど……」
そう言って農家の娘さんは、畑を囲う木製の柵を指差しますわ。手作りのようですわ。
“ザッザッザッザ“
どこからか、土を掘るような音がしますわ。
柵の下の土に穴が開いて、大きなウサギさんが出てきましたわ。
大きさが耳を抜いてワタクシの腰程度までありますわ。
「まぁ、可愛らしいですわ。ペットにしたいですわ〜!」
「あー!また柵の下を掘られてるー!」
農家の娘さんは地面を踏んで悔しがっていますわ。
ウサギさんが穴に潜りますわ。そしてまた顔を出すと。
「あー! ワタクシのサンドイッチに入るはずだったレタス!」
レタスの葉を咥えていらっしゃいますわ。
ワタクシはウサギさんに近づきますわ
「ウサギさん、そのレタスを返してくださいます? それがないと、サンドイッチが完成しませんの。だからお願い、返して――」
逃げ出しましたわ。
ウサギさん、とても速いですわ。
ジャッカロープさんほどではないですが,とてもすばしっこいですわ。とても追いつけそうにありませんわ。
ウサギさんはワタクシの足元を通り抜けて,畑の隣の丘に走っていきますわ。そして、地面に空いた穴に逃げ込みますわ。
よく見るとこの丘、あちこちに穴が開いていますわ。穴だらけですわ。
きっとあの丘、なかはトンネルだらけでウサギさんの巣窟になっているのですわ。
別の穴からレタスを咥えたウサギさんが出てきますわ。そして丘のてっぺんで、見せつけるようにレタスを食べ始めますわ。
「あ〜! ワタクシのレタスが」
畑の柵の下から、沢山のウサギが出てきますわ。野菜を手に持ったり咥えたり。そして、勝ち誇るように丘の上で野菜を食べてらっしゃいますわ。
レタス丸ごと一玉食べている方まで居ますわ。
「あ〜! せっかく作った野菜がー!」
農家の娘さんも頭を抱えていますわ。
……ワタクシ、先程あの生き物のことを『かわいい』と言いましたかしら?
嘘ですわ〜!
憎たらしくってしかたありませんわあの害獣!
「一匹残らずミートパイにして差し上げますわ!」
サンドイッチの恨み、思い知らせてやりますわ!