第107話 家で食べるパンケーキも美味しいですわ!
本日1月9日、コミカライズ単行本発売です〜!!
ぜひ学校・会社の帰りに本屋さんに寄ってください〜!
モンスタースタンピードを終えて。ワタクシは、やっと家に戻ってきましたわ。
「お帰りなさいませッスお嬢様~!」
いつものようにマリーが飛びついてきましたわ。
「3日もお嬢様がいなくて寂しかったッス~!」
マリーが涙目でワタクシの胸に顔を埋めますわ。
「相変わらずマリーはさみしがり屋ですわね」
ワタクシはマリーのふわふわの頭を撫でますわ。
このさわり心地。落ち着きますわ~!
「マリーの頭を撫でていると、帰ってきた実感が湧きますわ」
もふもふですわ。
「そうですわ、今回もマリーにお土産をもらってきたのですわ」
ワタクシ、アイテムボックスから小さなガラスケースを取り出しますわ。中には、紅く揺らめく炎が宿った鳥の尾羽が入っていますわ。
「ありがとうッスお嬢様! これ、なにッスか? 鳥の尾羽……ッスかね?」
「その通りですわ。普通であればモンスターさんの素材は、カードにポイントを付けてもらうときに冒険者ギルドに提出するのですけれども。キレイな羽でしたから特別に持ち帰らせてもらいましたわ」
もちろん何度も冒険者ギルドでポイントをつけられないように、尾羽の軸の部分には『冒険者ギルドにてポイント加算済み』の刻印を入れてもらっておりますわ。
「へぇ~! 火がゆらゆら燃えてて綺麗ッス! 大事にするッス!」
マリーが両手でガラスケースを抱きしめますわ。
「ところでマリー、明日のお昼過ぎにワタクシの仲間が二人、次に受けるクエストの打ち合わせをしに来ますわ。その時に人数分のパンケーキを焼いて欲しいのですわ」
「了解ッス! 腕によりを掛けて焼くッスよ!」
そして翌日お昼過ぎ。
”チリンチリーン♪”
玄関の呼び鈴がなりますわ。
「お邪魔しますシャーロットお姉さん」
「邪魔するわ。相変わらず広い家ね。羨ましいわ」
ユクシーさんとアリシアさんがやって来ますわ。アリシアさんはなにか大きな包みを背負ってらっしゃいますわ。
「いらっしゃいまし。さぁ、中へどうぞ。すぐにメイドのマリーがパンケーキを焼いて持ってきてくださいますわ」
ワタクシはお二人を応接間へ案内しますわ。
「お客様、いらっしゃいませッス! パンケーキをお持ちしたッス!」
応接間に、焼きたてのパンケーキの上で溶けるバターの香りが広がりますわ。
「「「いただきます」」」
ワタクシ達、パンケーキを口に運びますわ。
今日もマリーのパンケーキは最高ですわ!
「マリーさんのパンケーキ美味しいね、シャーロットお姉さん!」
「ホント美味しいわね……! シャーロットが『ワタクシのメイドの作るパンケーキは世界一美味しいのですわ』って言ってたのを話半分に聞いてたけど、本当にそこらのプロ顔負けの味じゃないの」
お二人とも、予想を超えるパンケーキの味に驚いてらっしゃいますわ。ワタクシも鼻が高いですわ。
「ふっふっふ。私はパンケーキを作る以外の仕事がダメダメだったッスから、パンケーキだけは誰にも負けないように猛特訓したッス!」
と、マリーが胸を張っておりますわ。
「いつもありがとうですわ、マリー。美味しいパンケーキを食べたら、今度は紅茶が欲しくなってしまいましたわ」
「了解ッス! すぐお持ちするッス!」
マリーは元気にキッチンの方へ向かいましたわ。
「……ところでアリシアさん。さっきからずっと気になっていたのですけれども。その大きな包みはなんですの?」
「ああこれ? 来る途中に寄った店で気まぐれにしょうもない買い物しただけよ。気にしなくていいわ」
アリシアさんがソファにもたれかかっている包みをポンポンと叩きますわ。すると。
“ぐらっ”
バランスを崩した包みが倒れて紐がほどけますわ。
「あー!!」
アリシアさんが悲鳴を上げますわ。包みの中から顔を出したのは、大きな白いぬいぐるみですわ。あれは……アヒルでしょうか?
「大きなぬいぐるみですわね、アリシアさん」
「え、ええまぁそうね! くる途中のお店でね、買い物なんてするつもりなかったんだけどなんかたまたま目が合っちゃって。ホラこないだブレイズオパールの採掘で沢山お金が入ったじゃない? アタシとしたことがちょっと気が大きくなりすぎて気まぐれにこんなよく分からないぬいぐるみ買っちゃった訳よ。あー困ったわーアタシとしたことがこんなの置き場所がなくて困っちゃうわー帰りにまたお店に寄って返品してこようかしら」
「凄い早口だねアリシアさん」
ユクシーさんはあきれた顔をしていますわ。
「そのアヒルのぬいぐるみ、愛らしいですわね」
「はぁ? アヒルじゃないわよ! ヒヨコよヒヨコ! クチバシの形が全然違うでしょうが! ていうかアンタ有名ぬいぐるみシリーズの”ヒヨコンズ”知らないの? 絵本とぬいぐるみで10年以上続いてる人気シリーズよ!? 見たことくらいあるでしょ? 最近なんて長編小説も出たんだから……あっ」
アリシアさん、自分の失態に気づいて硬直なさいますわ。顔も真っ赤で、頭から湯気が出そうになっていますわ。
「アリシアさん、語るに落ちたね」
「どこが『気まぐれによく分からないぬいぐるみ買っちゃった』なんでしょう。さぁ、白状して下さいまし」
俯いて、両手で顔を覆ったままアリシアさんが話し始めますわ。
「はい。白状します。本当は、この街で宿を取った日に街のぬいぐるみ専門店をチェックして、毎日商品の入荷をチェックしてました……」
「ワタクシの家に来る前ではなく、帰りに買えばよかったのではありませんこと? ここまで運ぶのも大変だったでしょうに」
「来る途中に丁度等身大ヒヨコンズのぬいぐるみが入荷してたのを見つけて、『今すぐ迎えてあげないと誰かに先を越されるかもしれない!』って思っちゃって……」
アリシアさん、消え入りそうな声ですわ。
「アリシアさん、何年くらいヒヨコンズにハマってるの?」
「それは……半年くらい前にハマって、それからちょくちょくグッズを買ってます」
答える前に少し不自然な間があったのを、ワタクシは見逃しませんでしたわ。
「アリシアさん? 本当はいつからハマっていますの?」
“ギクッ”という音が聞こえそうなほどわかりやすくアリシアさんの肩が動きましたわ。
「……11年前、シリーズの最初のぬいぐるみが出たときからよ。お小遣いは大体ヒヨコンズグッズに使ってたわ」
「まぁ。古参の大ファンではありませんの」
「そうよ! 古参の大ファンよ! 何か文句ある!?」
アリシアさん、急に立ち上がりましたわ。どうやら開き直って元気になったご様子。
「文句なんてあるはずもないですわ。何かを好きでいるというのは、素敵なことですわ。胸を張ってくださいまし。帰りは、ワタクシがアイテムボックスに入れてアリシアさんの宿まで運んで差し上げますわ。背負って運ぶのは大変でしょうし、途中で落としたり雨に打たれて汚れてしまっては大変ですもの」
「……ありがと。助かるわ」
「お嬢様、お茶を持ってきたッス~!」
応接間のドアを開けて、マリーがやって来ましたわ。
「あー! それヒヨコンズじゃないッスか! 等身大ぬいぐるみ、現物見ると本当可愛いッスね!」
マリーが大声を上げてぬいぐるみを指さしますわ。
「あらマリー、知っていますの?」
「はい、私も集めてるッス! 等身大は流石に持ってないッスけど、小さいのは全種集めてるッス!」
紅茶をテーブルに置きながら、マリーが興奮した様子で話しますわ。
「へぇ。アンタ、話が分かるじゃない。ちなみに、推しはどれ?」
アリシアさん、同士を見つけて嬉しそうですわ。
「う~ん。ヒヨコンズはみんな好きッスけど、一番を選ぶならその”ヒヨコンズホワイト”ッスね!」
”ガシッ”
アリシアさんとマリー、無言で固く握手しますわ。
「そのぬいぐるみ、見てたら私もだんだん可愛く思えてきたよ。今度妹のエレナのお見舞いに持って行ってあげようかな。……でも、長く続いてるシリーズらしいし最初はどれを買ったらいいか難しそうだね」
「あら仕方ないわね! そういうことなら、帰りにお店に寄って選ぶのを手伝ってあげるわよ」
『仕方ないわね』と言いつつも凄く嬉しそうなアリシアさんですわ。
「シャーロット、アンタのとこのマリーにも手伝ってもらっていいかしら?」
「もちろんですわ。マリー、しっかり選ぶのを手伝ってあげてくださいまし」
「了解ッス! お任せ下さいお嬢様!」
マリーに新しい友達が出来そうで、ワタクシ嬉しいですわ。
「では、次に受けるクエストの打ち合わせを始めますわ! それが終わったら、ぬいぐるみ屋さんに出かけますわよ」
「「「はーい!」」」
こうしてワタクシ達は、次に受けるクエストについて話し始めますわ。
次は一体どんなモンスターさんに出会えるのか、楽しみですわ。
パクパクですわ!
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そしてWEB連載ですが、ストックがあるのは、ここまでです!
また書き溜めてまとまった量のストックが出来次第更新再開します!