第102話 ごちそうがたくさんやって来ますわ!
いよいよ2023年最後の日になりました!
本年はプロデビューして2シリーズを世に送り出すことができました!
これも応援してくださっている読者の皆様のおかげです! ありがとうございます!
来年は現行シリーズを大事にしつつ、ちょっと新しいジャンルにも挑戦していこうと思っています!
2024年もよろしくお願いします!
いよいよモンスタースタンピードが始まりましたわ!
地響きを立てて、モンスターさん達がわんさかと押し寄せてきますわ!
まず初めにやってきたのは――
「いきなりグランドボアさんですわ!?」
グランドボア。昔街を襲って畑の作物を食い荒らそうとした、とっても美味しい大型イノシシ型モンスターさんですわ。
相変わらず大きくて、食べ応えありそうですわ!
……そして、それが2体。
繰り返しますわ。
グランドボアさんが2体! 同時にワタクシに向かって突進してくるのですわ。
「これは困りましたわね……」
“ドドドドド……“
地響きを上げながらグランドボアさんが突進してきますわ。
『『ブモオオオオオ』』
左右からワタクシを挟み込むようにキバをぶつけようとするのですが――
““パシッ””
ワタクシ、両手でキバをキャッチしましたわ♪
『『ブモオォ!?』』
グランドボアさん、勢いはあるのですけれどもまっすぐ突っ込んでくることしかできないのですもの。運動音痴なワタクシでも、キャッチするのは簡単でしたわ。
「しかし困りましたわね……」
2体同時にやって来られたら。
「どちらから食べるか悩んでしまいますわ〜!」
記念すべきモンスタースタンピードの最初の1皿。せっかくですので、美味しそうな方から食べたいと思いますわ。
「どちらのグランドボアさんにいたしましょうかしら……? 右の方は脂が乗っていそうですけれども、左の方はお肉が引き締まっていそうですし……」
どちらも美味しそうで決められませんわ〜!
しかしその時ワタクシ気づきましたの。
「よく考えると。今両手が塞がっていますし、ワタクシ右手からしか魔法を使えませんから、右から食べていくしかありませんわね」
魔法がお上手な方は左手から魔法を出したり、魔法を2つ同時に使ったりできるそうなのですけれども。ワタクシのような魔法の素人にはそんな芸当はできませんわ〜。
「というわけで行きますわよ。“プチファイア”ですわ!」
まずはワタクシ右のグランドボアさんを倒してステーキにしますわ!
「そして次はあなたの番ですわ! “プチファイア”ですわ!」
すかさずあいた右手を使って、左手で止めているグランドボアさんもステーキにしますわ。
今回もちゃんとワタクシの分だけではなくユクシーさんアリシアさん、そして殿下の分も用意されていますわ!
「この香り、たまりませんわ〜! 早速召し上がりましょう!」
ワタクシはテーブルをアイテムボックスからとりだして、お皿を並べますわ。
「モンスターが一瞬で料理になっただと!? これがシャーロットさんのギフトの力か……!?」
「そういえば、アウロフさんにお見せするのは初めてでしたわね。これがワタクシのギフト、モンスターイーター。倒したモンスターさんをとっても美味しいお料理にできるギフトですわ! ……アウロフさんは、モンスターさんのお肉を食べるのに抵抗はおありかしら?」
「無い無い無い無い! 全然抵抗無いとも! 前にサハギンを倒した時も、『あいつらの肉美味しそうだな』と思っていたくらいだ!」
それは食い意地が張りすぎではありませんこと?
ワタクシは、人型や喋るモンスターさんは食べようと思いませんわ。
「では早速。いただきますわ〜!」
口の中でジュワッと広がる旨み!
相変わらず、声も出ないほど美味しいですわ!
最高ですわ!
そして今回はその最高に美味しいグランドボアさんのステーキが2皿! 幸せも2倍ですわ!
「ギフトで生成したということは、これはシャーロットさんの手料理ということ……! なんて僕は幸せなんだ!」
殿下も、涙を流しながら夢中でステーキを召し上がっていますわ。喜んでいただけたようでなによりですわ。
『ボスクラスモンスターを食べたことによりレベルが5上がりました』
『グランドボア捕食ボーナス。レアスキル”無限アイテムボックス”はこれ以上進化しません』
『ボスクラスモンスターを食べたことによりレベルが5上がりました』
『グランドボア捕食ボーナス。レアスキル”無限アイテムボックス”はこれ以上進化しません』
そしていつもの耳鳴りですわ。
「何!? 食べただけで僕のレベルが上がったぞ!? こんなレベルの上がり方をしていいのか……!?」
「びっくりしますよね、アウロフさん。私も最初びっくりしました!」
自分と同じ感想だったのが嬉しいらしくて、ユクシーさんもはしゃいでらっしゃいますわ。
「さぁ、そろそろ次のモンスターさんがやってきますわよ」
次に街にやってきましたのは、小さな人型モンスターさん。緑色の肌をしてらっしゃって、棍棒のようなものを持ってらっしゃいますわ。
「うーん、あのモンスターさんは食べようと思いませんわね……」
ワタクシ、人型モンスターさんは食べないと決めていますもの。
「では、あのゴブリン達は僕に任せてもらおう。シャーロットさんにばかり手を煩わせるわけにはいかないからね」
「私も頑張ります!」
殿下とユクシーさんが、すごい勢いで小型モンスターさん達を倒していきますわ。
殿下は無駄のない動きと的確な判断で迅速に。ユクシーさんは風の様な素早さを生かして機敏に。
わんさか押し寄せてくるゴブリンというモンスターさん達をどんどん倒していきますわ。
「あの2人も、大概に化け物よねぇ」
「ええ。とても頼りにしておりますわ」
そして次に現れたのはラージラビットさんの群れ。以前ワタクシの住む街の畑を荒らしまわって、サンドイッチに野菜が入らない原因を作ったモンスターさんですわ! 憎き害獣、許せませんわ!
「しかし数が尋常ではありませんわね……」
数十体のラージラビットさんが、一斉に押し寄せてきますわ!
「“パラライズ”ですわ!」
ワタクシは麻痺の粉を撒いて、半分以上のラージラビットさんを麻痺させることに成功しましたわ。
「何体か突破されてしまいましたわ!」
「シャーロットお姉さん、私に任せて!」
ユクシーさんがすごい速さでラージラビットさんの群れに追いついて、仕留めていきますわ。ラージラビットさん達が慌ててユクシーさんから逃げるように進路を変えると。
「こっちに来ると思っていたよ」
行動を読んで先回りしていた殿下が、剣で素早く仕留めていきますわ。
そして、二人から逃げ切った数羽のラージラビットさんを
「アタシもいるっての。”ブラックアロー”」
アリシアさんが弓矢の魔法で撃ちぬいていきますわ。
ワタクシの魔法でお料理にできなかったのは残念ですけれども、ラージラビットさんを取り逃がさずに済んでよかったですわ。
ラージラビットさんがこの街を突破して別の街に住みついて、繁殖しながら街の畑を荒らしてしまったら大変ですもの。
ワタクシ、以前ラージラビットさんが畑を荒らしたせいでレストラン”冒険者ギルド”のサンドイッチのレタスがなくなったことを思い出していますわ。
あんな悲劇は繰り返してはいけないのですわ。
ラージラビットさんだけではありませんわ。他のモンスターさんも、この街を突破すると別の街で畑を荒らしたり川を汚したりして、被害を出す可能性がありますわ。
モンスターさんはか弱い生き物ですけれども、無害な生き物ではないのですわ。
なんとしてもこの街を突破させてはいけないのですわ。
ワタクシ以外が倒したラージラビットさんは取り急ぎアイテムボックスに入れておいて、後で血抜きなどして持ち帰ると致しましょう。
そんなことを思いながら、ワタクシは麻痺しているラージラビットさん達を片端から”プチファイア”で丸焼きにしていきますわ!
「後続のモンスターさんたちが来ませんわね……今のうちに食べてしまいましょう!」
「「「さんせーい!」」」
テーブルに乗り切らないほどの量のラージラビットさんの丸焼きを、ワタクシ達は頂きますわ!
ラージラビットさんのお肉、相変わらず柔らかくてこれまで食べた野菜の旨味がぎゅっと詰まっていて美味しいですわ~!
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『“ラージラビット”捕食ボーナス。スキル“オートヒールLV10”が“オートヒールLV11”に進化しました』
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『“ラージラビット”捕食ボーナス。スキル“オートヒールLV11”が“オートヒールLV12”に進化しました』
………………
…………
……
『モンスターを食べたことによりレベルが上がりました』
『“ラージラビット”捕食ボーナス。スキル“オートヒールLV24”が“オートヒールLV25”に進化しました』
こんなにたくさんのラージラビットさんを食べれるなんて、モンスタースタンピード最高ですわ!
「シャーロットお姉さんのお料理は、いくら食べてもお腹の限界が来ないんだ! 本当にありがとうシャーロットお姉さん! おかげで、美味しく無限にレベルアップできるよ!」
「こんなに簡単にレベルアップしちゃったら、そのうちアタシまで化け物側に足を踏み入れちゃうわね」
「まさかこんなにお手軽にレベルが上がるだなんて。しかも、とびきり美味と来ている。シャーロットさん、君には感謝してもしきれないよ」
と、言いながら皆様美味しそうにラージラビットさんのお肉を口に運んでらっしゃいますわ。
「大変美味でしたわ……!」
まだモンスタースタンピード途中だというのに、ワタクシすでに大満足ですわ!
「君。他の門の戦況はどうだ?」
殿下が、冒険者ギルドのスタッフさんに尋ねておりますわ。
「状況は最悪です。他はどこもモンスターのキャパシティを超えていて、足止めするだけで精一杯です。突破されるのはもう時間の問題でしょう」
それは大変ですわね……。
ワタクシも何かできることがあれば良いのですけれども。
そこで、殿下は何かひらめいたようですわ。
「他の門のモンスターをここに引き寄せる手段があるとしたら、戦況は変わるかな?」
「それは大変助かります! もしそれが可能ならば、逆転の可能性は大いにあります! ……しかし、そんなことが可能なのですか?」
「それについて検討する。少し待っていてくれ」
殿下は、冒険者ギルドの職員さんに聞こえないようにアリシアさんに近づいて小声で話しかけますわ。
「アリシアさん。君はまだ、【黒の聖女】の『モンスターを引き寄せる』という力を自分から使ったことはないそうだね」
「ええ。普段からモンスターの方がアタシに寄って来るけど、それはアタシがまだモンスターを引き寄せる力を上手くコントロールできていなくて溢れ出してるだけよ」
「なるほど。……今、この街ははっきり言ってモンスターに突破される寸前だ。他の門ではモンスターを処理する速度が追いついていないらしい。だがもし君がモンスターを引き寄せる力を使って、他の門のあふれているモンスターをこの門に引き寄せれば、事態が大きく好転する可能性がある。だが、その場合君のギフトについて多くの人が知ることになると思う。それは――」
「やるわ。【黒の聖女】の力を限界まで使って、引き寄せられるだけ引き寄せてやるわ」
アリシアさん、きっぱりと言い切りましたわ。
「本当にいいのか?」
「ええ、かまわないわ。……少し前までのアタシだったら、この忌まわしい力が周りに知られることを怖がって何もできなかったかもしれないけど。今なら、アタシの居場所はなくならないってしんじられるから。だから怖くない」
そう言うアリシアさんの顔に、迷いはありませんわ。
「シャーロット、まさかもうこれ以上モンスターが食べられないなんて言わないわよね!?」
「もちろんですわ! ありったけ引き寄せてくださいまし! ワタクシ、まだまだ見たことないモンスターさんとお会いできると考えたらまたお腹がすいてきてしまいましたの!」
ワタクシが応えるとアリシアさんはうれしそうに笑って両手を胸の前で合わせて。
「それじゃ行くわ、これがアタシの全力よ!」
”キイイイィ……ン”
モンスターを引き寄せる力を全力で開放なさいましたわ。
1月9日にパクパクコミカライズ2巻が発売されます!
是非書店様でお買い求めください!
皆様、良いお年を!