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03 災難

二人に猶予があるのは、後一年。一年経ち条件が合っていれば、結婚。夫婦にならなければならない。だが、二人は犬猿の仲。

親が仲良くとも、子供である二人は友達と呼べる関係なのかすら分からない。


そしてアミールがロマーノ公爵家に来た時の夜。リバーはある部屋の中に入った。

その部屋にいるのは、寝たきりの“妹”が一人。リバーには妹が居た。そしてそんな妹にも婚約者がいた。それは隣国の皇子。帝王の息子だった。そんな人物と結婚するはずだった、リバーの妹のシャロットは、帝国の帝王の一族、結婚相手の皇子からのDVにより、池の底に身を投げてしまい、命は取り留めたものの、意識だけは戻らない状況だった。


易々とその婚約者にシャロットを渡してしまった、とリバーは悔やみ、男装をしてまで皇子に近づこうとしたが、そこまで上り詰めるには、まだ実力が乏しかった。


(………いくら妹の為とはいえ、あんな事しては行けなかったわね…。子供でも分かるわ。シャロットが起きた時、もし私が死刑にされていたら、きっと意味がなくなるわよね。なら、正々堂々とやるしか無さそうだわ。

もちろん、男装して力を磨くばかりだけど…)


寝たきりとなっている、シャロットの側まで行き、優しくシャロットの綺麗な髪の毛を優しく撫でる。意識を取り戻さない、シャロットに姉としての優しく微笑むその姿は、暗闇の中に消えるだけだった。そしてそんな部屋の窓からは、月が照らされている。


シャロットを撫でた後、その窓まで足を運んだ。窓ガラスに手を添え、優しく振れる。

寂しげな瞳で、リバーは月を見た。


「シャロットが目を覚ましますように……」


そう月に願いを込め、そして再びシャロットの近くへと行く。

寝ている彼女のおでこにキスを落とし、リバーは優しい声で昏睡状態のシャロットに言った。


———「また明日ね」と。






ーーーーーーー



翌日、平日である今日は学校は行かなければならない。リバーは男装のかつらと晒しをしっかりと付け、胸の膨らみなどを分からせないように、徹底的に対策したり、銀色の毛がはみ出て無いかと、頭身鏡でしっかりと確認する。


「よし、これで良いな」


口調や声を男性っぽくさせ、通っている王都の方へとある、名門校へと足を運ばせる。森の中を歩き、国の門を入り、そこから王都の中をまっすぐ行くといった感じだった。


リバーは学生。最高学年になったばかりである。







ーーーーーーー





学院でのリバーの評判は悪い。教師からも生徒からも。その為、リバーはいつも一人でいる。だが、リバーの顔立ちは断然良い。リバーが悪役令息と呼ばれてなければ、きっとモテていただろう。(女だけど)


学院に着くと、やはり注目される。そんなのお構いなしに、堂々としていた。


(ま、こんな光景はいつも通りだけど…。さて、これからどうしましょうか。

正直、悪役令息だって呼ばれているロマーノ公爵と、縁談したい人なんて現れてくれなければ良いんだけど。

特に皇子はやめて頂きたい)


色んな意味で曖昧だ。名門校の門をくぐり抜け、校舎の方へと足を運ばせる。





ーーーーーーー



授業が終わり、放課後の時間帯になる。空色から茜色に変わり、茜色の空に変わり、国中も茜色に染まった。


(さて、そろそろ帰らないと)


帰宅する最中、リバーは誰かに連れ去られてしまった。それは突然の出来事で、抵抗する暇もなく。

連れて行かれたのは、路地裏だった。何の用なのかとリバーは冷たい感じで言う。だが、目の前にいる男には通用しなかった。


「俺、知ってんだぞ?」

「………何が」

「お前が女だってことは」


どうやってバレたのか。ちゃんと晒しは巻いてあるし、バレるような事はないはず…。それをなんで目の前にいる男は知っていたのか。


「女の癖に、あんな人の成果を独り占めしていたら、縁談の話なんて来なくなるぞ?」

「結構。間に合ってますんで」


それでも余裕な態度で敵をあしらう。だが、男は逃がさないように、背中を見せているリバーの後ろから、口元を押さえた。

抵抗しようにも、徐々に力が無くなってしまい、

不味い…

と、リバーは思い始める。


(最悪。やっぱ、あんな事しなければ良かったわね)


男がリバーの胸元に手をやったりと、セクハラをやったとしても、平然だった。意識が朦朧としているのか、はたまた別の意味でか。

だが、そんなところ。一つの影が現れる。男の仲間が増えたのか?と、リバーは最初は思ったが、意識が朦朧としている中では、顔を見ることができなかった。だが、後ろではバシッ!ゴッ!と言う音が鳴り、誰かが助けてくれたと言うことが、何となくだが分かった。


だが、もう時間。その場に倒れそうになった、リバーを誰かが支える。


「はぁ…」


と言う最後のため息だけを吐き、リバーをおんぶをし、その場から立ち去った。

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