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破壊神バーメテウスオーロシア

なにか、あたたかいものが私にくっついている。

「ふわぁあ」

 そのぬくもりを感じながら目を覚ますと、つぶらな黒い瞳と目があった。

「ふふ、バメオロスったら、いつのまにベッドに潜り込んだの?」

『貴女を守るのが私の役目だ。私は、忠実なる貴女の僕』

 得意気にそういったバメオロスの頭を撫でると、ふと、一輪挿しに飾られている薔薇が目にはいった。


「ねぇ、バメオロス」

『どうした?』


「私に、教えてくれない? バメオロスのこと。バメオロス、私元々、ユーリシアの人間じゃないから神獣のこと知らないの」


 昨日は単なるニート仲間ですませてしまったけれど。あれほど冷たい目をしていた旦那様がわざわざ私にご機嫌とりにくるようなほど、バメオロスは重要な存在だ。


『私は──、初代のユーリシア女王ユーリシアと盟約を結んだ。そして、今の姿になった。その前の私はバーメテウスオーロシアという名をもつ神の一部だった』


 ユーリシア女王。そう、今でこそユーリシアには、女性に政治的権力がないけれど。初代の王は女王だったのだ。


 でも、バメオロスが神? しかもバーメテウスオーロシア神。それは──。

『そう、破壊神の名前だ。私は、かつて、ユーリシアに恋をしてその身を獣に墜とした。そして盟約を結んだ。私を見つめる【目】があるかぎり、その子と子孫を守ること。だが、もはや【目】は喪われ、私が盟約を守る理由もなくなった』


 そうだ。【目】。昨日のバメオロスもいっていた。そして、それが私にはあると。でも、【目】ってなに? そのままの意味なら、旦那様にも目はついてるけれど。


『貴女が破壊の獣たる私を見つけてくれた、瞳。破壊の神を直視することができる特別な瞳。誰かに見つけられて、初めて私は意味をなす』

「バメオロスは、ずっとこの城にいたけれど、私以外に気づかれなかったのは、私が目をもっていたから?」

『そうだ』

「でも、侍女もあなたを見たわ」

『契約が結ばれれば、誰でも私を見ることができる』

 ……なるほど。でも、破壊神がついていたなら確かにユーリシアは、戦争に負けなかったでしょうね。


 でも。そんなことより。私は、バメオロスの頭を撫でた。

「話してくれてありがとう。寂しかったでしょう」


 バメオロスはいった。誰かに見つけられて初めて意味をなすのだと。それでは、前の主人が死んでから、私がバメオロスに出会うまでずっと孤独だったんじゃないか。ルナの物語が終わるまでの私という存在も無視されてきたようなものだけれど、バメオロスは私以上の年月寂しかったはずだ。


 私がそう尋ねると、バメオロスは、手に頭を擦り付けた。

『二百年、待ち続けた。……だが、誰も現れなかった。私自身を壊そうかとも考えた』


 よかった、バメオロスが自分を壊さなくて。私も一人ニート生活よりも、仲間がいたほうが楽しいもの。


「これからは、一緒にぐうたら生活を楽しみましょうね」

 私がそういうと、バメオロスは、ミャアと鳴いた。

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