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自嘲

 その日の夜。温かい湯船に浸かりながら、私は、今後のことを考えていた。


 私は、できればずっと、ニートでいたい。


 お飾りの王妃としてぬくぬくとただ飯を喰らい、遊び、こうして温かいお湯に浸かって、日々を過ごしたい。


 ……でも。


 本当にこのままでいいのかしら。


 バメオロスは言った。


 私を神の国に連れて行くこともできると。

 そしたら、ぐうたら生活がずっとできるけれど……。


 その代わりに、必ず血が流れることになるだろう。


 それは流石に寝覚めが悪い気もする。

 それに、なにより、バメオロスの恋情を私は信じきれていない。


 ユーリシア女王にかつて恋したバメオロス。


 そんなバメオロスは、私のことが好きだという。


 流石に二百年今はいない誰かを思い続けろ! とは思わない。

 でも、私と出会ってバメオロスはまだ日が浅い。その期間で得た気持ちが変わることは十分あり得るのだ。


 もちろん、期間なんて関係ない運命の恋、が存在するのも知っているけれど。


 ……でも。


 さきほどのバメオロスの言葉を思い出す。

 ーーあなたを独りにせずにすんだ。

 そう言って、寄り添ってくれた。


 あのとき、確かに心の澱が軽くなったのだ。


 それでも臆病な私は、今の関係を崩したくない。



 それに……バメオロスは優しい。


 だからこそその優しさに甘えきる前に、私は覚悟を決めなければならない、とも思う。


 何があっても信じる覚悟もしくは、絶対に信じない覚悟だ。


 覚悟があれば、きっと傷つかずに済む。


「……ふ」

 そこまで考えて自嘲する。

 結局、ずるい私は、自分が傷つかない最善策を探しているだけ。


 誰かのことを考えるのは、建前で、自分のことしか考えてない。


 ……だから。

「……やめましょう」


 私が、私を好きでいること。


 こんな私でも、私は、私のことが好きだ。


 だから、その事実だけあればいい。


 ーーそう、思っていたのだけれど。

「失礼する」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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