本心
「もう一度、初めから君──アデラインとの関係をやり直したいんだ。私は、君と家族になりたい」
旦那様は、私をアイスブルーの瞳で見つめた。
「……陛下」
初めから。陛下との関係をやり直す。それは──。
「バメオロスについては、バメオロスの意思を尊重するべきだと思います」
「違う、神獣のこともないとは言いきれないが。私はアデラインのことを知りたいんだ」
私は、スポンサーや恋や愛を見せてくれる観察対象者としての興味はあるけれど。旦那様と、家族になる。夫婦になって家庭を築くことについては、どうだろう。
「……私、は」
旦那様には、何も期待していない。ううん、旦那様だけじゃない。誰にも、何も。
でも。なぜ? 旦那様は、私に言った。私を愛することはないと。バメオロスのことで、私に気を使いだしたことならわかる。
口先だけのことかもしれないけれど。バメオロスだけじゃない、っていうのは、なに?
わからない。
考えて俯いた私に、旦那様は言った。
「困らせて、すまない。でも、これが私の本心だ。信じられないのなら、信じられるまで伝え続ける」
『アデライン』
名前を呼ばれて、はっ、と顔をあげる。
「えっ、ええ。どうしたの?」
イーディナ花を食べ終わったバメオロスは、私にすり寄った。
『……今朝のことを考えていたのか?』
「……ええ」
──「もう一度、初めから君──アデラインとの関係をやり直したいんだ。私は、君と家族になりたい」
旦那様に言われた言葉が、頭のなかをぐるぐると回る。
『……あなたは、ユーリシア王が、嫌いか?』
「嫌いじゃ、ないわ」
私のニート生活のスポンサーとしては重要な存在だけれど。最初から、それ以上でも、それ以下でもない。
旦那様だけじゃなく、誰にも何も期待しないし、友愛以上の特別な感情をむけたりしない。それは、私自身の心を守る方法だ。
俯いた私の手にバメオロスは顔を擦り付けた。まるで、慰めるように。
『……裏切られるのは、怖いな。一度信じてしまえば、その恐怖に耐えられなくなる。だから』
目映い光が、バメオロスを包んだ。そして、端正だけどどこか神秘的な光を目に宿した青年が、私の手を握る。
「私は信じてくれ、なんて言わない。ただ、私はあなたを裏切らない。あなたの望む限り側にいる。あなたが、私の手を握り返すことはなくても、この手を離さない」
「……バメオロス」
バメオロスは、黒の瞳で私を見つめた。
「だから、いつか。あなたが、この手を握り返してくれる日が来るかもしれないと、願うことを。赦してくれ」




